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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
竜国編Ⅱ
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影―095 泡沫の日常

前回までの簡単なあらすじ。

①白夜が脱退したー!

②ギンが引きこもったー!

③丸く収まったー!

 夜眠れば、その場所に立っている。

 目の前に立ちはだかるは、見上げるほど大きな壁。

 父が壊し、姉が越え、今度は僕が壁の前に立っている。


「――この向こうは、どんな景色が広がっているんだろうか」


 この先に待つのはただ一つ。

 ――最強の座。

 だからこそ気になって仕方が無い。

 最強とは、どんな気分なのか。

 最強とは、どんな世界を見ているのか。

 最強の座からは、どんな景色が見えるのか。


「最強って、何なんだろうな」


 かつて、父さんが最強だった。

 しかし僕の命を繋ぐため、僕へと力を――未来を託して才能の過半を失った。

 次に、姉さんが最強へ至った。

 最初は、つまらないイザコザだったそうだ。

 小さな諍いが起こり続け、重なりに重なって――結果、取り返しのつかないことになったと聞いた。

 父を陥れ、妻を殺し、娘に殺されかけた。

 ――結果、自殺した。

 自殺して、生まれ変わった。

 全てを飲み込む闇として、悲しみも喜びも全てを飲み込み、たった一人全ての憎しみを喰らって生き続ける――混沌として。


「王の素質」


 殺されることなく、歴史に必ず名を刻む者の持つ才能だ。

 混沌はこの才を持つが故にゼウスに殺されなかったし、壁を越えて、世界へと悪名を轟かせた。

 対して僕は、この才を持つが故にこうして壁に触れられている。現に今まで死んでこなかった。

 けれど、僕はまだ――歴史に名を刻んではいない。

 確かに悪目立ちして、執行者がどうのこうのと、悪い意味で後の世代へと語り継がれていきそうだが――それでもまだ、弱すぎる。

 何せ三年間いなかっただけで注目は久瀬やフカシへと移り変わっていたのだ。その程度で『歴史に名を刻んだ』と言っていいはずがない。


 神王ウラノスがその力で神々の心へと不変の存在感を刻みつけたように。

 時空神クロノスが神々最大の大罪人として名を轟かせ、悪魔の頂点として君臨しているように。


 歴史に名を刻む明確な大挙を――僕はまだしていないのだ。




 ☆☆☆




 あれから一日が経った。

 白夜となんやかんやあってすぐに、オリビア、マックス、アイギス、エロース、伽月の治療に向かった僕だったが、疲れでも溜まっていたのか、治した直後に眩暈がして、そのまま眠りについてしまっていたらしい。

 という訳で、新しい仲間の紹介をしようかと思う。


「はい注目。馬鹿が一人脱退したり、馬鹿が一人引きこもってたりしましたが、とりあえず色々解決して、新しい仲間ができました」


 言いながら背後へと視線を向ける。そこには僕の服をぎゅっと掴んで固まっている白夜の姿が。


「おい、早く行けって……」

「じゃ、じゃが……改まって報告するとなると緊張するじゃろうが……」


 ……報告?

 まあ、抜けておいてまた戻ってきましたーとか、お前何様だよって思われる可能性しか見えないけれど、それを報告と言うのだろうか?

 顔を赤く染め、おずおずと僕の前に歩いてゆく白夜を見送りながらそんなことを思――


「わ、妾っ、改めて肉○器に就任したのじゃっ!」

「ハッハッハ、君ちょっと表出なさい」


 ――直後、満面の笑みで彼女の肩を掴んでいた。

 顔を真っ赤にして虚偽ここに極まれりな報告をぶちかました白夜。そして完全に時間が停止してる皆。

 ・・・・・

 くらいの間隔が空いて。


「「「は、はいいいいいいいいいっっ!?」」」


 驚愕色に塗りたくられた声が響いた。

 ――否、なんとなく悲鳴に近かったような気もする。


「ちょ、え、どういうこと!? せっかく気を使って二人っきりにさせてたのに……っ!」

「ま、まさか主殿――ヤったのか!?」

「なんと! 遂にマスターが童貞卒業――」

「ふっ、やっとここまで登ってきたであるか」

「……おいレオン、お前今なんつった?」

「いや、待て待て待て……、こんなチキンなヘタレがよりにも寄って白夜のような子供に手を出すとでも思うのか……? 有りえるはずがないだろう……」

「そ、そそそ、そうだよっ! おお、落ち着いてみんな! 親友くんはきっとまだ清いはずだよ! 顔がどーていっぽいしさ!」

「そうよ、見なさいこの体中から迸る童貞臭。こんな童貞臭い男が既に卒業しただなんて有り得るはずが――」

「――よしお前ら表出ろ」


 腕まくりして一歩踏み出すと、同時に冷静にお茶を飲んでいたソフィアとネイルが、ほっと一息をつく。


「いやー、物騒ですねぇ……。あまりにも早計過ぎますよ」

「まぁ、余からしたらどうでもいいんだがな。抱かれるなら何番目でもいいし」


 ――その予定はありません。

 って即答したくなったが、言ったら言ったで面倒なので心の中でだけにした。

 それになにより、ネイルの言うことが今回は正しい。


「安心しろ、僕はまだ童貞だ」


 キランッ! そんな効果音が聞こえるくらいのドヤ顔を決めてやると、何故か皆、無表情を顔に張り付けて食卓へと戻ってゆく。


「……え、なに」

「あれじゃよ多分。『この人、とうとう童貞であることを誇り始めたんだけどどうしよう……』と言った感じで頭を悩ませているのじゃ」


 ……ここまで一緒に来たんだ。もうせっかくなら死ぬ時まで一緒に居てやるのもいいかな。

 って、間違ってもそんなことを最近思い始めてるだなんて、言える雰囲気ではないな。

 恭香と浦町のため息が重なり、僕も小さくため息を吐いた。


「正直僕がそうかそうじゃないかなんてどうでもいいんだよ。今回はほれ、コイツを無事奪い返すことに成功したからそれを祝うのと――」


 カツ、カツ……。

 小さく足音を響かせて標的めがけて歩いてゆく。

 標的は最初、疲れたように椅子に座っているだけだったが、すぐに僕の気配を察して体を硬直させた。

 ――だが、気づくならもうちょっと早く、だな。

 ガシッと、満面の笑みでレオンの頭蓋を鷲掴みにした。


「お久しぶりー、レオンくん。何だか従魔の癖してものすごーくイケメンになってるし、なんか僕との約束無視して新婚旅行行っておいて帰ってきたらさりげなく混じってるし……、その他諸々、ちょっと表出ようかー」

「ちょ待っ! あ、主殿! ぼ、暴力反た――」

「フンッ!」


 椅子から立ち上がったレオンの鳩尾に無言でコークスクリューブローを決めてやると、ガクリとレオンの体から力が抜けた。あまりにも綺麗に入りすぎて気を失ってしまったようだな、ハッハッハッハッハ……はぁ。

 口笛を吹いて視線を必死に逸らしている新婚ペアの片割れを睨み据える。


「かーづーきー、ちゃん?」

「ひぃっ!?」


 体を震わせ、引き攣った悲鳴を漏らす伽月。

 ギギギッと、錆び付いたブリキ人形のような首の動きで、ぎこちなく僕の方へと視線を向けた伽月に向かって。


「……」


 ――ツラ貸せこの野郎。

 親指を立てたハンドサインで見事に内心を伝えきった僕。伽月は顔に影を落とし、ダラダラと冷や汗をかきながら立ち上がる。


「い、いいい、行ってくるで、あ、あります……っ」

「「「……逝ってらっしゃい」」」


 まるでこれから死刑台に上がるような面持ちで、伽月は僕の指さした方向へと向かってゆく。



 ――後日。僕の馬車から子供二人の絶叫が轟いていたという噂が経ったが……、正直、全く身に覚えのない話であった。




 ☆☆☆




 足元に転がる真っ白に燃え尽きたレオンと伽月。

 二人の口からは魂らしい何かが飛び出しており、それを見た白夜がなにか思いついたかのように声を上げた。


「のうのう主様! ……じゃなかったギン様よ!」

「……慣れないし、最初のでいいよ?」

「ギン様よ!」


 おっと白夜さん、話聞く気ゼロのようです。

 白夜はキョロキョロと周囲を見渡して誰もいないのを確認すると、ちょいちょいっと耳を貸せとばかりに手招いている。

 ……まぁ、考えるまでもなくあの事だろうな。

 当たりをつけながらもしゃがみ込み、耳を近づけると。


 チュッ、と。

 頬に、柔らかいものが触れた感覚があった。


「……あれっ?」


 予想だにしなかった白夜の行動に驚いていると、彼女はちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめていた。


「そ、その……なんじゃ。色々あったわけじゃが、とりあえずもう、そ、その……ちゅー、くらいは。我慢しなくてもいい、ってことなのじゃろ?」

「お、おおお、お、おぅ……」


 どうしよう、多分今顔赤くなってる。

 って言うか何この子、可愛すぎて、今すぐにでも撫で回したい衝動にかられてるんですけど。

 口元を抑えてなんとも言えない空気を醸し出していると、流石にこの空気は辛かったのか、白夜が「あっ」と声を上げ。


「そう言えばギン様よ! 昨日、ドレスから着替えた時に気が付きたのじゃが……。これ、なんじゃか分かるかの?」


 白夜は右手の甲を上にして突き出してくる。

 つい先日までただの肌だったそこには――今は、見たこともないタトゥーが浮かび上がっていた。

 ――影を纏った、翼を広げる蝙蝠。

 白夜の手を取りながら、ふむと呻いた。


「知ってるっていうか……これやったの僕なんだけど、まさかこのマークになるとは思いもしてなかったな」

「なぬ!? 新手の呪いかと思ってたのじゃ!」


 そりゃ、こんな見るからに不吉そうなタトゥーが浮かび上がってたら心配もするわな。


「すまん白夜、嫌なら消せる……と思うけど」

「……しかし、ギン様とてなんの考えもなしにこんなことをした訳ではあるまい。……この印は、一体何なのじゃ?」


 これが一体何なのか。

 そう聞かれたら多分一言で終わっちゃうんだろうけれど、流石に隠しっぱなしってのも罪悪感があるし。

 それに何より、これから万が一僕が『末路』に辿り着いた時。きっと僕が彼女に送ったこれこそが、未来を切り拓く。


「これか? これはな――」


 白夜の頭へとポンと手を乗せて口元を緩める。

 そして――



『GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』



 外から狂ったような叫び声が聞こえてきたのは、丁度その時だった。

やっぱり本編は書きやすい。

次回『異形の怪物』

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