幕間 勇者コメディの大冒険 ⑪
まだ終わりませんでした!
多分次回になります。
魔王シリアス。
彼を一言で表すならば――強い相手、だろうか。
正直油断させていた先程だから金的狙えたものの、こうして向かい合ってる現状、一人で倒せるかと聞かれれば本気を出してやっと、と言った感じだろうと思う。まず間違いなく白夜よりも格上、かつて戦った時のサタンと同格と言ったところだろうか。
しかしまぁ、強さなんてこの際大した問題じゃない。
何せこっちは、夢のドリームチームだ。
「詐欺師と大悪魔と中二病と露出狂とラスボス、この馬鹿げたドリームチームに勝てると思うならかかってこい、魔王シリアス」
切っ先を下げて左手を前に出すと、挑発気味にくいくいっとハンドサインを出す。
案の定、額に青筋を浮かべて真っ赤になった魔王シリアス。チラリと混沌を横目で見れば、全く気負う様子は感じられず。
「……? まさかとは思うが、あの程度にビビってる程度の実力で私に楯突いてたのか?」
「かっちーん……」
あー、カチンときました。
もうこうなったらアレだ。コイツより活躍してやる。
剣を肩に担ぐように構えると、体の中で練り上げた膨大な魔力を剣へと流し込む。
「……ほう」
隣から感心したような声が聞こえるが……この野郎、表情から『これくらいならまだ余裕だな』みたいな感情が見え透いてるぞ。
内心でため息を吐くと、スッと魔王を睨み据える。
「悪いな、待てって言ったけど時間制限あったんだよな」
たしか三分だったか。管理者のオッサン、こんな仕様聞いてないし、使用時間とか使用する分にはどこまでもアリなのかとか、色々と聞いてみたいことは尽きないが。
しかしまぁ、関係ないか。
逆に三分だと魔王シリアスが可哀想じゃないか
言って口元に笑みを浮かべると。
「その半分で、カタつけてやる」
☆☆☆
ボゥッ!
両足に銀色の炎が召喚され――直後、僕の姿は魔王シリアスの足元にまで移動していた。
――絶歩。
その超高速バージョンである。
『ハッ! やーっとここに来て表に出て喋れるようになったかんな! 思いっきり暴れてやるぜ!』
久々の登場、クロエの声が頭の中に響くと同時。
白銀色の剣に銀色の炎が付与される。
しかし、銀炎だけで見るからに分かる、巨人の体重を支え続けてきた筋肉を破るのは難しい。
だからこそ――
「来てるなサタン!」
「愚問だな!」
背後から戦闘狂の返事が聞こえ、思わず口元に凄惨な笑みを貼り付けた。
さぁ、一夜限り。執行者と憤怒の化身の、正真正銘本気のタッグバトルだ。
「ウルッ!」
『この男と共闘するのは不本意ですが――ッ!』
刀身から血色の魔力が迸ると同時、振りかぶった剣を奴のふくらはぎめがけて振り下ろす。
ザシュ――剣を握る手に肉を断った嫌な感触が伝わってきたが……おいおい嘘だろ。この剣、多分だけどシルズオーバーとタメを張るレベルの切れ味と硬度誇ってるんだぞ?
なのに――途中で刀身が止まりやがった。
「絶対破壊でも破壊しきれないか……」
呟くと同時。握っていた剣を――手放した。
武器を捨てる愚行。
自分だけで戦っているのなら確かに愚行だが。
「おいサタン! 脳筋の出番だ!」
「ぬおああああああああッッ!!」
――スイッチ。
ふくらはぎに突き刺さったままの剣の柄を握りしめたサタン。
しかし次の瞬間、僕がいくら力を込めてもそれ以上動かなかった剣が――一瞬にして肉を切り裂いた。
「ぐがあああああああああッッ!?」
鮮血が吹き出し、咄嗟に僕らはその場から退避する。
超直感が危険を告げてくれたが故の行動だったが、見れば血の撒き散らされた地面からはジュワジュワと溶けるような音と煙が上がっている。
「おうっふ……、サタンの脳筋加減にもびっくりしたけど、あれだけの装甲誇っててその上体液は強酸性かよ……」
「ふむ……この剣は問題なさそうだがな」
サタンの握る白銀色の刀身へと視線を向ける。
刀身から溢れ出る銀色のオーラが剣を守っているのだろうか、とりあえずその剣ならば溶けることなくダメージを与え続けられるだろう。
魔王シリアスへと視線を戻せば、徐々に傷跡が回復してきているのが視界に入った。僕のような超絶回復力とは違うが、それでも高防御力に高回復力、さらに体液が強酸性と来ると厄介極まりない限りだが――
「ふぅ……」
息を吐いて、瞼を閉ざす。
今の僕じゃ、あの硬質な筋肉を斬るには筋力不足に、長剣の使い方にも熟練しているとは言い難い。正直刀使いの久瀬の方がよっぽど上手いだろう。
――おい、もちろん起きてるんだろう?
問うと同時に心臓が、ドクリと大きく鼓動する。
――ククッ、ようやく俺の出番か? 元知性よ。
『野性』の声が脳内に響き渡る。
出番か否か。そう聞かれれば出番と答える他ないだろう。
――なぁお前、ここで混沌を殺すつもりあるか?
――ないな、ここでアレを殺せばアポロンを救えなくなる。
想定していた通りの答えに思わず口元を緩めると、サタンへと黙って右手を突き出した。
サタンはすぐに握っていた白銀の剣を渡そうとして――
「――ッッ!?」
瞼を開く。
隣を見れば驚愕に目を見開いているサタンが身を固めており、思わずククッと肩を震わせた。
奴も気がついたのだろう――アイツの存在を。
直接戦ったコイツだからこそ、きっと分かる。
「野性解放――50%」
体に力が漲ってくる。
確かに僕の体を奪わんとばかりに右腕に居座っている野性ではあるが――それでも、奴も僕だ。仲間を守りたいって気持ちには変わりないし、アポロンが仲間だって認識にも、変わりはないのだ。
「サタン、剣」
「! あ、あぁ……」
サタンから剣を受け取ると同時。
「『血濡れの罪業』」
白夜がいなくなってからは使えなかったけれど、今の精神状態なら――余裕で使いこなせる。
僕の体が一瞬にして変化し、それと同時に僕の隣へと混沌が進み出てきた。
「何を遊んでいる。殺らぬのならば私が殺るぞ」
「へー、怖くて後ろでビビってるのかと思ってた」
ブチッ。そんな音が聞こえた気がした。
見れば額に青筋を浮かべた混沌が引き攣った笑みを浮かべており、その体からはドス黒い魔力が溢れている。
相も変わらず、気持ちの悪い魔力だと。
内心で思いながらも彼女から視線を切った。
「貴様らアアアアアッッ!! 人間の分際で魔王に楯突くなど……ッ! 余を怒らせたこと、地獄にて後悔するのだな!」
地獄にて後悔する、か、
的はずれなセリフに思わず肩を震わせる。
彼の背後に現れた巨体を見やって笑ってみせると。
「お前こそ、後悔してももう遅いからな」
チィィィィンッ!!
少しお下品な音が鳴り響き、魔王シリアスは股間を両手で抑えてその場に崩れ落ちた。
その背後には――魔王シリアスと互角の体格を誇る、巨大な黒鬼が立っていた。
『フハハッ! サタンのガキが片タマ殺ったって聞いたし、これで貴様、全タマおッチンだな! ハッハァッ!』
言って中指を立てているのは、お馴染み悪鬼羅刹先生だ。
その姿の悪鬼羅刹とは、僕にとっては未だ遠くで暴れているのを見る程度の仲だが、彼からすれば自身の力を最もよく利用する顔なじみ、と言ったところなのだろう。
先生の肩に立っていた輝夜もまた「クハハハハッ」と笑うと。
「さぁ行け主殿よ! 動きは我らが制限した!」
制限したって言うか……悲鳴もあげずにのたうちまわってるんですが。もういろんな意味で止めさしちゃってるんですが。
しかしすぐに僕の隣まで訪れた暁穂を見てそんな考えは吹き飛んだ。
『マスター!』
「おう!」
すぐさま彼女の背中に跨ると、同時に暁穂は魔王シリアス目掛けて駆け出した。
要するにかかった時間――一秒足らず。
マントが後ろへとなびき、魔王シリアスが真っ赤に充血した瞳を僕らへと向けてくる。
「暁穂!」
『わかっておりますとも!』
彼女の上で膝立ちになったと同時。彼女の背中を踏み台にして魔王シリアスへと飛び出した。
普通ならばこのまま突っ込み、待ち構えている魔王シリアスにボコられる未来が待っているだろうが――
「ナイス、輝夜」
左眼が銀色の光を放つ。
――次の瞬間、僕の体が魔王シリアスの上空へと放られた大鎌デスサイズと入れ替わる。
「何いっ!?」
初見でこれは見破れまい。
眼下の焦りに焦っている魔王シリアスに口元を緩めると。
「さて、本番行くぞ――聖獣化・獣型ッッ!」




