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影―074 神剣オル・ブラムス

今回短めです、すいません。

 俺はその剣を構えて、目の前の怪物二人へと視線を向けた。

 フェンリル・ロード――暁穂。

 そしてペガサス・ロード――藍月。

 聞いた話によると、ペガサスは元々戦闘タイプではなく、どちらかと言えば走ることだけに特化した魔物らしいが、それもここまで進化してしまえば関係ないだろう。

 俺は「フッ」と息を吐くと、その魔剣へと視線を下ろす。


 ――魔剣グラム。


 俺の召喚できる『魔剣』のうち最も強力な魔剣だが……けれども、この二人を相手にするならば、魔剣では少々役不足感も否めないだろう。

 俺は肩の力を緩めて、その魔剣を返還した。


「……マックス?」


 隣でその聖盾を構えていたアイギスが困惑したように声を漏らし――その直後、俺の体から発せられる魔力に、なにか納得したように笑みを漏らした。


「本気で行くんですね?」

「あぁ、コイツら相手に手ぇ抜けるほど、俺も強かないんでな」


 最近、何だか敬語が本格的に板についてきたアイギスに、俺は笑ってそう返した。


 そうして召喚するは――我が最強の神剣(・・)


 魔剣使いである俺にとって、それは本来は召喚できるはずもない上位の存在。

 けれども、かつてギンからもらったこのネックレス。

 このネックレスには魔力を溜め込むことの出来る故に、その上位の存在すらも、召喚できる。

 俺は前方へと手を突き出すと――それと同時に、俺の手の中へと一振りの神剣が召喚された。



「『召喚・神剣オル・ブラムス』ッ!」



 現れたのは――黒色の剣。

 全てを飲み込む闇のように黒く、荒れ狂う地獄の炎のように黒い、そんな神の創りし一振りの剣。

 オリビアには馬鹿みたいな力があり、アイギスは聖盾イージスという強みがある。

 そして俺には――神剣という、武器がある。

 俺はニヤリと笑ってその剣を構えると。


「タダでさえ見知らぬ悪魔にやられて気が立ってんだ。お前ら、手加減してもらえるとは思うなよ?」


 返ってきたのは――二人の獰猛な笑みだけだった。




 ☆☆☆




 俺はその剣を構えると――


「『黒纏』」


 その能力を、発動させた。

 生憎と俺たち『騎士組』には『○神化』と言ったような能力は開花しなかった。あれは限られた――それこそ、天才のなかの選ばれた数人しか持てない技能なのだろう。

 けれどその代わり、この能力を手に入れた。


 ――黒纏。


 神剣オル・ブラムスの能力の一つで、身体中に『黒』を纏うことによって闇系統の能力や身体能力を爆発的に強化するというもの。

 昔のギンが使っていた『影纏』と似ているような気もするが、今のアイツの影纏は赤色だ。区別しやすくて助かった。

 と、すると俺の本気具合を察したのか、俺のすぐ隣でも魔力が解放されていた。


「なら、短期決戦で行きましょうか」


 そう呟いたのはアイギス。

 その魔力量から察するに――彼女の使うであろう能力は、おおよそ検討がついた。



「『女神装甲プロテクション・ゴッデス』」



 瞬間、彼女の体が光り輝き――そうして姿を現したのは純白のドレスアーマーを身にまとった、彼女の姿だった。


 ――女神装甲プロテクション・ゴッデス


 一日に一度しか使えず、体にかなりの負担もかかるという制約があるが、その代わり、身体能力が爆発的に上昇し、さらには時間を置いてしか使えなかった防御スキルを、連続して使うことができるようになるのだ。

 正しくチート。ギンならばそう言うことだろう。

 けれど、コレもソレも、馬鹿みたいに消費が大きい事には代わりがない。ソッコーでケリをつけなければ……まず間違いなく、こちらが負ける。

 故に――


「行くぞアイギス、数分でケリ付ける――ッ」


 そう言って俺は、駆け出した。

 流石は神剣。

 あの悪魔――たしか『ガイズ』と名乗っていたか――と戦った時は、まともに効果を発揮する前に白夜達をけしかけられ、そのまま無力化されてしまったが……、けれども、こうしてまともな戦闘を始めてみれば、その馬鹿げた身体能力の強化度が簡単にわかる。

 踏み込みによって大地が砕け、その速度に暁穂と藍月が目を見張った。


 ――が、この二人は速度に関していえば他の追随を許さない。


 彼女ら二人も俺と同じ――いや、それ以上の速度で駆け出し、こちらへとその攻撃の矛先を向けてきた。

 だがしかし――


「厄介な女を、忘れちゃいないか?」


 バリィィィィンッ!

 瞬間、暁穂の爪を、藍月の蹄を、俺の目の前に突如として現れたその防壁が弾き返した。

 それも――その威力を、そのままだ。


「『フルカウンター』」


 彼女の声が上空から響き、それと同時に前足が変な方向へと曲がった藍月へと、ヒュンッとその白銀色の塊が突っ込んでいった。

 本来の、周囲を警戒している藍月だったならば対処もできたろうが、今の彼女を襲っているのはその脚に走っている激痛のみ。そんな彼女では、アイギスのその一撃は止められない。


「ハァァァッ!!」


 ドン――ッッ!

 鈍い音とともに衝撃波が俺の場所まで響き渡り――そして次の瞬間、藍月の体から力が抜け、その場に倒れ伏した。

 ……あれっ、死んでないか藍月。

 一瞬そう思ったが――


「峰打ちですよ」


 スタッ、と。

 アイギスが俺の隣に舞い降りた。

 ――舞い降りた、なんて表現は少しアレだが、よく見ればその背中からは天使のような純白の翼が生えていた。完全に初見だが、……まぁ、女神装甲なんだから可能性としては有りなのか。

 そんなことを思いながらも、俺は――


「フッ!」


 瞬間、振り払った俺の神剣がガキィィンッと音を立ててなにかに受け止められる。

 見ればそこには、いつの間にか姿を人間の状態に戻した暁穂の姿があり、けれどもその四肢だけ狼のそれであった。


「……まさか、藍月さんが瞬殺されるとは、思っても見ませんでしたね」

「私の魔力の過半を消費してしまいましたが――ねっ!」


 そう言ってアイギスはその聖槍ロンギヌスを振り下ろすが、残念ながらその一撃は暁穂には掠りもしない。

 精彩をかいている――間違いなく、先ほどのフルカウンターとあの一撃が体に負荷をかけているのだろう。

 先ほどの一撃――戦闘タイプではないとはいえ、藍月を一撃で沈めるとなると膨大な魔力を消費したに違いない。そのうえフルカウンターを事前に放っているとなると――


「……アイギス、ここは俺に任せろ」

「……はい?」


 俺の言葉に彼女は呆れたようにそう聞き返してきたが、悪いが今回に限って言えば俺の方が正しい――気がする。


「お前、藍月倒してかなり消耗してんだろ? 対して俺はまだ余裕が有り余ってる。……なら、ここは俺が相手するのが道理ってもんだろうが」

「なんにも道理じゃないですけど……」


 アイギスはそう言ってため息を吐いたが、仮にも俺らは三年間――いや、それより昔からの付き合いだ。

 正直、お互い全く相手に対して恋愛感情的なものは抱いていないが、それでもその代わりに――信頼っていうのは、あると思う。

 アイギスは『女神装甲』を解除して息を吐くと――


「後は、任せた」

「後は、任された」



 久しぶりのタメ口に、俺はそう、返してやった。


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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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