番外06 襲撃
このに来てはじめてエンジンがかかってきましたその作品。
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……一体どうしたのでしょう。
時を遡ること数分。
「でだ、なんかリクエストはあるか?」
ドナルドは突如として彼らへとそう問いた。
突然のことに硬直を見せた彼らではあったが、いち早くそれより戻ったのは、意外なことにも凛だった。
「私の能力は、さっき言ってた人の能力、スキル、武器をコピーするもの。それは最後に見た能力──つまりあの時スクリーンで見た時の状態。武器も防具も、さっき言ってたのと同じ性能のものを召喚できる。どうすればいい」
彼女はそう、前屈みになって口にした。
するとドナルドはふむと頷くと、そのあまりにもチートすぎる能力に怯みもせずに言葉を紡ぐ。
「能力をコピーできるっても純血神祖吸血鬼とやらの馬鹿げた回復力まではコピーできないだろ? 物理的によ」
「……ん。多分……だけど、心臓潰されたりしたら死ぬと思う。あそこまで回復も早くない」
凛は、数ヶ月前に見たあの映像を思い出してそう言った。
あの映像は途中からしか彼らの戦闘を映してはいなかったが、微かに見えたあの時の傷の回復速度。アレは執行者モードの凛をも上回るソレであった。
だからこそ、凛はそう言って──
「ならとりあえず武器は要らねぇな。神器にウロボロスの力、それに神剣に……後なんかあったか?」
「アダマスの大鎌とグレイプニル。あと天羽々斬」
「……なんかまたヤバそうな名前が出てきたな。まぁ、とりあえずそれはいいとして」
ドナルドはそう言うと、ピンッと人差し指を立ててこう言った。
「とりあえず言えんのは、それ以上武器を増やせば扱いきれなくなる。それがどんな天才であれ、基本的に一度に使えるのは……そうだな、短剣六振りくらいなもんだ。大鎌だの縄? 鎖だったか? そんなのだの、杖だの、短剣だの刀だの。即座に換装出来るからこそ使えてるが、それ以上は逆に戦力が落ちちまう。だからこそ、今回作るのは専用の防具だな」
その言葉には、そばで聞いていたグレイスもうんうんと頷いた。
かつて修行時代、彼が色々な力に目覚めてから。ギンはグレイスへとこう聞いた。
『僕って色々と武器持ってるじゃん。短剣……は今は無いけど、杖に刀、大鎌に……縄か。それ以上増やすのってやっぱり不味いよな……?』
ギンはどこかで分かっていたのだろう。
だからこそそう質問をして、グレイスは今ドナルドが言った言葉と同じ意味合いの言葉を告げたのだ。
『お前は馬鹿ぞよ? んなの当たり前ぞよ』
とな。
文字数も違えばイラッとくる感じも全然違うが、それでも言っていることは全くもって同じである。さすがはグレイスと言ったところか。
閑話休題。
「話によるとその男は武具を壊されてたんだろ? ならいっその事防具を作った方が余程いいと思うんだが……」
その言葉にしばし考えた様子を見せた凛は、俯いて数秒後。顔を上げてドナルドへと視線を向ける。
「ん。何だかそのほうが良さそう。どうせ兄さんのことだし、武器だって新しいの増えてる。スキルだって反則級のが増えてる。なら防具に向かうのは賛成」
「よしっ、ならとりあえずアンタのは決定だな」
そう言ってドナルドは頷く。
そして、告げる。
「よし、お前ら面倒だから同じ武器、防具が欲しいヤツら同士でまとまってこっち来やがれ」
伝説の鍛治師は腕は一流なれど面倒くさがり屋だった。
☆☆☆
「えっと、それでは僕たち三人は『杖』でお願いしたいのですが……やはり専門外ですかね?」
そう言ったのは御厨だった。
彼の後ろにはそれぞれ愛紗と京子の姿があり、それぞれ後衛を務める三人が求めたのは、やはり防御力ではなく攻撃力、あるいは回復力であった。
だがしかし、ドナルドはあくまでも鍛治師。そんな相手に杖の依頼をするなど常識的には有り得ないことだ。
けれども──
「杖か? あんまり依頼は来ないが余裕で作れるぞ?」
「「「……へっ?」」」
その言葉に目を点にする三人。
そう、ドナルドは『伝説の鍛治師』という名前で知られてはいるがその実は『武具製作師』という方が正しく、彫刻や杖などの鍛治師とはあまり関係ないところから武器防具まで、ありとあらゆる『武具』をとてつもない高水準で行えるのだ。
その代わり『戦闘向き』とは言えない戦闘力なのだが、それも弱者からすれは圧倒的である。ドナルド然り、エロース然り。
「んで、早く言わねぇと作ってやらんぞ」
「はっ、す、すいません! 僕は幻惑魔法を中心とした全属性魔法、小里さんは回復魔法、町田さんはとにかく魔法順応度を高くお願いできますか?」
「名前はわからんが……まぁ、了承したぞ」
ドナルドはそう言いつつも、それらのリクエストをメモに殴り書きしてゆく。
本来ならばもっと正確なことを話さねばならないのだろうが、伝説の鍛治師は相手を見ただけで大体のことを察することが出来る。まぁ、実際には作り終わってからの微調整は必要不可欠なのだが。
ドナルドはそれらを書き終わると、次の二人へと視線を向けた。
そこにはノッポタンクの花田京介と、パーティのシーフ、猫又妙の姿が。
「えぁーっと、俺のは迷ったんすけど盾でお願いできるっすか? なるべくこの盾と同じか少し大きいくらいのサイズで、重さは軽すぎなければいいっす」
「私は短剣でお願いしたいにゃー! 防具も考えたけど、限りなく身を軽くするためにも露出度は変わらないのにゃ。なら短剣の方がいいのにゃっ! 長さとか重さは今使ってるこれと同じ感じでお願いしたいにゃー」
そう言ってそれぞれ、大盾、そして短剣をドナルドへと見せる二人。
ドナルドはそれらをヒョイっと手に取ると、「あぁ、それ、俺でも片手じゃ重いのに……」と悲しげな表情を浮かべる花田を他所に全角度からじっくりと眺め、軽く振って重さを確かめる。
「んー、大盾に関しちゃ兄ちゃんもこれから筋肉付くだろうし問題ねぇな。嬢ちゃんの短剣は……ちっとばかし短いな。長さをこれ位にするとなると……、魔法剣みたいな感じで魔力で刀身を伸ばせるようにしてみっか」
「そっ、そんなの出来るのかにゃっ!?」
妙は驚いた。
けれどもドナルドはさも当然とばかりに頷くと、それらを二人へと返却する。
「まぁ、物理的によ刀身を伸ばすのは難しい……というか特別な素材でもない限り無理だろうが、魔力を使って刀身を作り、普段は短剣、相手が大きい時は長剣。そんな使い方ができる魔法剣なら作れると思うぞ」
それには妙も目をキラキラと輝かせて──
「ちなみにお代は……これだけになる」
「よっ、世の中世知辛いにゃぁっ!!」
にゃおん、と。
猫の鳴き声が、どこかから聞こえてきた。
☆☆☆
「残るはそこの二人か……」
そう言ってドナルドが視線を向けた先には、腰に刀を差した二人の姿があった。
片や黒髪黒目の青年──久瀬竜馬。
片や黒髪ポニーテールの少女──小鳥遊優香。
まず最初、優香は視線を向けられていることに気がつくと、ドナルドへと向けてこう告げた。
「アナタが考える最も強い刀を作って貰いたい!」
それには、長年依頼を受けてきたドナルドも目を剥いた。
普通はその相手の身体や戦い方に合わせて刀を作るが、この少女はそれを無視して『強い武器』を望んだのだ。
ドナルドはそれについて問い返そうとして、
「自分に相応しい武器を作り、自分の限界という名の枷を刀に強いてしまうのは二流のすること。一流なれば、最強の刀を使いこなせるよう自らが進化していくべきよ!」
その言葉には、それを聞いていた他の面々も驚いたような表情を浮かべる。
彼女は馬鹿でポンコツだが、それでもその腕は一流の剣士だ。それは和の国の姫、スメラギ・オウカに追随する程である。
だからこそ彼女は言外にそう、自分はいずれ最強の刀を使いこなせるようになると宣言し、堂々と胸を張って見せた。
(ったく……カッコイイじゃねぇか。優香)
久瀬は優香のその言葉には笑みを浮かべてドナルドへと視線を向ける。
その瞳にはありありとした覚悟が浮かんでおり──
「なぁ、ドナルドさん。俺の刀は……」
ドガァァァァァンッ!!
瞬間、その小屋の中にまで響き渡る爆発音が轟き、それと同時に感じられ始めたその魔力に、グレイスとドナルドは目を見開いた。
「んなっ!? こ、これはerror級の魔力ぞよ!?」
「おいおい……、こりゃあワシでも勝てねぇレベルの魔力なんじゃねぇか?」
その言葉には久瀬も思わず首を傾げるが、直後に感じられ始めたその魔力に、彼らもまた身を固くした。
感じられ始めたのは膨大で、そして禍々しくどす黒い魔力の奔流。けれども久瀬たちはグレイスとドナルドよりも数秒遅れてしかその魔力に気がつけなかった。
この一瞬の差。
それこそが彼女らと彼らの実力の差でもあり、久瀬は冷や汗を垂らしながらもその事実を嫌というほど知ってしまった。
その魔力に当てられたか、身体はガクガクと震え、久瀬はそれを止めるためにも自らの膝へと拳を叩きつける。
そうして彼は、震える身体にムチを打って、二人へととある質問を投げかける。
「な、なぁ……error級って、一体なんなんだ?」
その言葉には、自分の予想から外れていてくれと、そう望む儚い希望が込められていたが、
「「ん? EXのさらに上」」
その言葉からは、希望という存在は欠片も感じられなかった。
次回! 怒れる氷魔!




