第6話「サラの決断」
カイの放った光で、深淵魔の大半が消え去った。
だが、カイは意識を失っていた。
「カイ! しっかりしろ!」
「......」
「息は、ある」
「だが、意識が戻らない......」
「ルーク様、今のうちに撤退を」
「深淵魔は減ったが、深淵王はまだいる」
「分かっている」
「全軍、撤退!」
連合軍は、後退した。
「カイを、安全な場所へ」
「医療班を、呼べ」
一方、ザルドア軍との戦場。
「報告! 深淵魔が、大幅に減少しました!」
「何があったんだ......」
「カイさんの力よ」
サラが、察した。
「彼が、何かをした」
「だが、それは向こうの戦場」
「こっちの状況は、変わっていない」
「サラさん、敵が押してきます」
「戦線が、持ちません」
「......」
サラは、考えた。
(ルークは、深淵魔と戦っている)
(カイは、倒れた)
(ここは、私がやるしかない)
「私に、考えがあるわ」
「サラさん?」
「リオン、あなたに兵を預ける」
「私は、一人で行く」
「一人で? どこへ」
「ザルドア軍の本陣へ」
「正気ですか!」
「敵の本陣に、一人で......」
「交渉するの」
「もう一度」
「さっき、失敗したじゃないですか」
「今度は、違う方法で」
「どういう......」
「私の身を、差し出す」
「何ですって!」
「私が人質になれば、彼らは攻撃を止める」
「その間に、深淵王を倒す」
「そんな......」
「それしか、方法がないの」
「ルーク様が、許さないでしょう」
「だから、ルークには黙っていて」
「サラさん......」
「お願い、リオン」
「みんなを、守るために」
「......」
リオンは、サラの目を見た。
覚悟の目だった。
「......分かりました」
「でも、絶対に無事で戻ってください」
「約束するわ」
サラは、白旗を持って敵陣へ向かった。
「待て、何者だ」
「サラ・ヴァレンシュタイン」
「交渉を、求めます」
「また、交渉か」
「今度は、何だ」
「私を、人質に取りなさい」
「その代わり、攻撃を止めて」
「......何?」
「人質だと?」
「私は、連合軍の外交顧問」
「ルーク・ギルバートの、側近よ」
「私を捕らえれば、彼らは動けなくなる」
「......」
「なぜ、そんなことを」
「深淵王を倒すためよ」
「あなたたちも、深淵王には勝てない」
「私たちが倒さなければ、世界は滅ぶ」
「だから、時間が必要なの」
「私の命を差し出すから、待って」
「......」
ザルドアの将は、考え込んだ。
「信用できるか分からんが」
「お前の覚悟は、本物のようだな」
「本物よ」
「私は、世界を救いたい」
「......いいだろう」
「お前を、人質として預かる」
「攻撃は、一時停止だ」
「深淵王が倒されるまで、待ってやる」
「ありがとう」
「必ず、約束は守るわ」
サラは、敵陣に留まることになった。
連合軍の本陣。
ルークが、戻ってきた。
「カイの容態は」
「安定しました」
「だが、意識は戻っていません」
「......そうか」
「サラは、どうした」
「それが......」
リオンが、俯いた。
「どうした。サラは、どこだ」
「サラさんは......敵陣に行きました」
「何だと......」
「人質として......」
「馬鹿な......」
「なぜ、そんなことを」
「攻撃を、止めるためです」
「サラさんが人質になる代わりに」
「ザルドア軍は、攻撃を停止しました」
「......」
「あの馬鹿......」
「ルーク様......」
「分かっている」
「今は、怒っている場合じゃない」
「サラが、時間を稼いでくれた」
「その間に、深淵王を倒す」
「それが、サラの望みだ」
「カイが目覚めたら、すぐに行動する」
「それまで、準備を整えろ」
「はい」
数日後。
カイが、目を覚ました。
「ここは......」
「カイ、起きたか」
「ルーク......」
「僕は......」
「お前は、大きな力を使った」
「そのせいで、倒れていた」
「深淵魔は......」
「お前のおかげで、大半が消えた」
「よくやった」
「サラさんは......」
「......」
「ルーク?」
「サラは、人質になった」
「俺たちのために」
「人質......」
「そんな......」
「だから、早く深淵王を倒す」
「サラを、救い出す」
「カイ、動けるか」
「はい......」
「少し、休めば大丈夫です」
「よし」
「明日、出発する」
「深淵王との、決戦だ」
「分かりました」
「今度こそ、倒します」
サラの決断が、時間を稼いだ。
その時間を──無駄にはしない。
「サラ、待っていろ」
「必ず、助けに行く」
深淵王との決戦が、近づいていた。
次回予告
カイが回復し、決戦の準備が整う。
カイは、覚悟を新たにする。
そして、最後の戦いへ──
第7話「カイの覚悟」
「僕は、深淵王を倒す」
「サラさんのために」
「みんなのために」
覚悟の光──




