第8話「引退」
深淵との戦いから、二十年が経った。
ルークは、五十代になっていた。
「学院長、お疲れ様です」
「ああ」
ルークは、書類を片付けていた。
「今日も、忙しかったな」
「サラ、少し話がある」
「何かしら」
「俺は、引退しようと思う」
「引退?」
「ああ。学院長を、退く」
「......」
「俺は、もう十分やった」
「後は、若い世代に任せる」
「急ね」
「何かあったの」
「いや、前から考えていた」
「体力も、衰えてきた」
「若い頃のようには、動けない」
「そろそろ、引き際だ」
「......」
「あなたが決めたなら」
「私は、支持するわ」
「ありがとう」
翌日。
ルークは、教官たちを集めた。
「みんな、聞いてくれ」
「俺は、学院長を引退する」
「え......」
「何ですって」
「俺は、もう年だ」
「若い世代に、道を譲る」
「でも、ルーク様」
「まだ、元気じゃないですか」
「元気なうちに、引退するのがいい」
「俺が倒れてからでは、遅い」
「後任は、誰に」
「カイだ」
「僕ですか」
「ああ。お前なら、できる」
「俺が育てた中で」
「一番の出来だ」
「ルーク......」
「引き受けてくれるか」
「......分かりました」
「引き受けます」
「ルークの期待に、応えます」
「ありがとう」
一ヶ月後。
学院長の引継ぎ式が、行われた。
「本日、ルーク・ギルバートが学院長を退任し」
「カイ・レイナーが新学院長に就任します」
ルークが、カイにバッジを渡した。
「頼んだぞ、カイ」
「はい、ルーク」
「この学院を、よろしく頼む」
「精一杯、やります」
「「「おめでとうございます!」」」
式が、終わった。
「お疲れ様、ルーク」
「ああ」
「やっと、肩の荷が下りた」
「これからは、ゆっくりできるわね」
「ああ。お前と一緒に」
「嬉しいわ」
数日後。
ルークとサラは、学院の敷地内の家で過ごしていた。
「静かだな」
「ええ」
「学院長の時は、忙しかったから」
「こんなにゆっくりするのは、久しぶり」
「何をしようか」
「そうね」
「庭いじりでも、しましょうか」
「いいな」
二人で、庭を整備した。
「花を、植えよう」
「綺麗になるわね」
「ルーク様、サラ様」
「カイか」
新学院長のカイが、やってきた。
「何だ、もう問題か」
「いえ、挨拶に来ました」
「順調ですよ」
「ルークが作った基盤が、しっかりしていますから」
「そうか。よかった」
「何かあったら、相談に来い」
「ありがとうございます」
「でも、なるべく自分で解決します」
「そうか。頼もしいな」
カイが去った後。
「カイも、立派になったな」
「ええ」
「俺が初めて会った時は」
「弱くて、自信のない少年だった」
「今は、学院長だ」
「感慨深いな」
「あなたが、育てたのよ」
「みんなの力だ」
「俺一人では、何もできなかった」
夕方。
二人は、縁側で夕日を見ていた。
「綺麗ね」
「ああ」
「これからは、毎日見られるな」
「そうね」
「俺たちの第二の人生だ」
「ゆっくり、楽しもう」
「ええ」
「一緒に」
引退──
それは終わりではなく、新しい始まりだった。
次回予告
引退後の生活。
ルークとサラは、穏やかな日々を過ごす。
そして、過去を振り返る──
第9話「穏やかな日々」
「こういう生活も、悪くないな」
「毎日が、幸せよ」
第二の人生──




