「炎」の場合 ②
怒涛の5/n連投
ダイニングでは食器の音が響いていた。
食卓には普段の食事が並び、小さな正方形のテーブルにはエリゼと無理やり着替えさせられたリナが座っていた。
鶏肉のローストに齧り付いたエリゼが、口を動かしながら対面のリナに問う。
「で、どうすんだ、南部の件。」
「こんな時までお仕事の話ぃー?」
リナは黒パンを細々と食べながら片眉を上げて不満げな声を漏らした。
小さく口を動かしながら食べるが故に黒パンの屑が服の上に落ちていた。
それに小さくため息をしつつ、エリゼはフォークをサラダに突き立てて言った。
「必要だろ、拒否期限は3日後だし、アンタはともかくアタシは予定組みしてかなきゃ不味い。」
「もうちょっとなんとかならないんですかね。私たちは命かけてるのに。」
リナの言葉にエリゼは豪快に笑った。
「ハッ!アンタが言うと説得力が違うね。」
「エリゼのばか」
エリゼの様子に、リナは不貞腐れてスープを啜った。
…。
「んで、こっからはちょっと真面目な話になるが。」
あらかた食事終えたエリゼが未だ鶏肉のローストをフォークでほぐしているリナに言う。
「なんですかー?」
カリャカチャ食器を鳴らすリナに、エリゼは深くため息を吐いて言った。
「南部の件、アタシは受けなくてもいいと思ってる。」
「…それは、どうして?」
崩れていくチキンをフォークでまとめるリナ。
視線はエリゼの方を向かない。
「適当に情報を聞いた感じ、アレは勇者関連の宗教戦争だ。ミルザーンのオチは知ってるだろ?間違いなく教会が出張ってくる。」
「うへぇ」
リナは小さく呻き、バラバラになったチキンを掬って口に入れた。
「私あの人達苦手かもです。」
「アタシもだ。」
赤ワインの瓶を呷りつつ、エリゼは続けた。
「仮依頼書、アンタは見てないだろうが、見た感じ、冒険者単位の行動がほぼ出来ない。遊撃から戦団単位の作戦ばかりなとこを見るに、帝国正規軍か、教会の連中を入れる気満々だ。帝国や教会がアンタを充分に動かせるとは思えない。」
「それは別にいいですけどねぇ。そんなに働かなくて良いなら、それに越したことは無いし。」
チキンをスープで流し込みながら言うリナに、エリゼは顔を顰めて返した。
「魔王城での合同攻略作戦での扱いを覚えてないのか?流石にアタシは看過できないよ。」
「むぅ…。」
皿に残っていたドレッシングをフォークの先で突くリナ。
フォークが擦れて高音が鳴る。
「…ところで、私がコレを受けないのは良いんですがー。」
「ん?」
「貴女はこの依頼を断れるんですか?エリゼ。」
「…。」
エリゼの目がリナから離れる。
フォークが皿の上に置かれた。
金属音。
「…エリゼ?」
「…アタシのことは良いんだよ。」
エリゼの返しにリナは深くため息を吐き、呆れたような声色で言った。
「ランクアップしとかないとこうなるって言うのは分かってましたよねぇー。」
「はいはい悪かったよ。これに関しちゃ私が全面的に悪い。」
口を尖らせるリナに両手をあげて降参のポーズを取るエリゼ。
「エリゼが行くなら私も行きますからね!絶対なんだから!」
「リナ…これは単純な相性の問題だ。アタシは戦団でも動かしやすい、でもアンタは…」
「行、き、ま、す!」
頬を膨らませて言うリナに、エリゼは頷くしか無かった。




