フードの中(1)
小高い丘の上に小屋が一軒建っている。
見下ろすと、見渡す限りの草原にが広がっていて、ところどころに小さな森もある。
小屋の裏手には畑がある。育てられているのは森で採集した薬草だろうか。
上を見ると、青い空、白い雲。
草原で草を食む羊のような動物たち。
森の中にも多くの生き物の気配があり、この世界が「生きている」という実感がある。
おかしい。
なんて突っ込めばいいんだろう。
広すぎじゃね? いや、問題はそこじゃない。
なんで空があるの? そこも問題だけど、もっと大事なことがある気が・・・。
あの動物たちはどこから来たの? うん。これかな? いや、違う違う。
「俺は、ずっとこんな世界を背負って旅してきてたのか・・・」
「ククッ。 チシロよ、うまいことを言うたの。
確かに、フードの位置はちょうどチシロの背中のあたりだし・・・クククッ」
「チシロさま、何も言わずに勝手に世界を広げてすいません。
ですが、この世界をここまで広げたのは私ではなくライアです!
私は小屋だけあれば十分だと言ったんです!」
何気なく言った一言がライアのツボにはまってしまったらしい。
ちなみに、草原をここまで広げたのも空を再現したのも羊を連れてきたのも全部ライアが一人でやったらしい。
すげー。 けど「何のためにここまで広げたの?」という質問に「いや?なんとなく・・・かの」と答えたので全部台無しだよ!
だって、無駄じゃん。
ただ、生態系を作って魔力を循環させているおかげで世界を維持する消費魔力は節約できているらしい。
まあ、そもそもここまで世界を広げるのにも大量の魔力を使ったのだが、数十年も経てば元を取ることはできるそうだ。
それまでずっとこのローブを使い続けなくてはならないのだろうか。
「チシロさま、せっかくなので、小屋の中に行きましょう。
いろいろあるので、まずは私が案内しますね!」




