精霊車・運転席にて(2)
「ガストフさんはご存知かもしれませんが、『黄金』というギルド名は、『5大ギルド』に与えられる特別な名前で、一定の条件を満たした状態でギルド戦を挑めば、名前を奪い取ることができます。
黄金も10年ほど前に、『当時の黄金』とギルド戦をして勝ち取った名前なのですが・・・。
さて、ではここで問題です!
『黄金』と呼ばれる以前、このギルドは一体、なんという名前のギルドだったのでしょう?
制限時間は10秒です」
「い、いや、知らんがな。 そりゃ、5大ギルドのシステムは知っとるし、『黄金』もそうじゃないかとは思っとったけど・・・」
「はい! 時間切れ。 答えは『アウラ』です」
「『アウラ』って? そりゃ確か、あんたの名前やろ。 それがなんでギルド名・・・?」
「それがですね・・・。 私が自慢できる話ではないのですが・・・・・、
実は、このギルド、もともとは私一人のために作られたもの、らしいんです・・・・・」
私の両親は、私が生まれて間もない頃には事故で亡くなったらしく、私は顔も覚えていません。
そんな私を両親の代わりに育ててくれたのが、私の母方の祖父でした。
おじいちゃんは昔、一流の冒険者だったようで、私が生まれた時にはすでに引退していたのですが、それでもそこらの戦士程度では歯が立たないぐらいには強かったみたいです。
そんなおじいちゃんが私を引き取って、一番最初にしてくれたのは、『私の居場所を作る』ことでした。
とはいえ、その当時はギルド間での戦争が頻発しており、どこのギルドも生き残ることで精一杯だったようです。
ましてや「すでに引退した、しかも子連れの老人」を新たにメンバーに入れたがる酔狂なギルドなどあるはずもなく、結局おじいちゃんはギルドを新たに立ち上げたることにしました。
当時すでに引退していた昔の冒険者仲間に声をかけ、なんとか資金とメンバーを集めたのですが、なんと私を除くギルドメンバーの平均年齢は150歳を超えていたそうです。
ギルド名についても、「孫と老人会」とか「孫を愛でる会」とか、冗談のような名前についても本気で検討されたのですが、結局おじいちゃん自身が「このギルドの主役はあくまで『アウラ』だから」と、押し切ったらしいです。
そんな老人たちがノリと勢いで作ったような集団でしたが、年を取っても一流だということで、見る見る間にギルドは大きくなっていきました。