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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第八話

 窓から差し込む光がまぶしいと思うのです。意識が覚醒してくると、頭を優しくなでられている感覚が、頬に吸いつくような心地よい柔らかさと、鼻孔を擽る薔薇の香りと共に感じられました。


「おはよう。ヴァイデ……案外に甘えん坊なのね」


 頭の上から、笑みを含んだ綺麗だと思う声に誘われて視線を上げます。


 半覚醒の頭で、あっれぇ?女神さま?なんて冗談を考えていると、寝ている間に無意識に抱きついていたエルヴィーラが体を起こそうとしたで名残惜しかったけど、僕も起きる事にしました。


 昨日の残り湯で濡らしたタオルで軽く体をお互いに拭いてから、今日は買い物があるのでお金の確認です。銅貨、銀貨が数十枚に、金貨が一枚。それに売るべき、オオカミの毛皮とゴブリンの牙や爪が複数。


きっと大丈夫だと思うけど、これからの事も考えて無駄使いは避けたいよね。


 二人で衣服の準備を終えると、この宿は今日でおしまい。今晩は別の宿に宿泊する予定なのです。エルヴィーラとも相談して決めました。


 宿を出るときに、まずは服を売っている場所を、店員のおじさんに聞いたので、その通りに向かって並んで歩いています。何か話そうと思ったけど、僕が照れくさくってね、何話していいのか分からなかったのですよ。


 途中、朝の早い時間からしていた屋台で、鶏肉の焼き物と飲み物、それに焼いた堅いパンにジャムを乗せたのなんかを買って朝食代わりに食べて時間を潰してから、目的の通りに到着です。


 衣服なのでエルヴィーラ主体で買い物をしたのですが、この世界の女性の下着ってセクシーなのですよ。


 布地が少なかったりして、その癖、作りもしっかりしている気がするのです。下着業界に何か革新的な事が昔あったらしいのですが、もしかして僕みたいな人がいたのか?なんて考えながら、女性が下着を選ぶのに付き合う恥ずかしさを誤魔化していました。余談になるのですが、男物の下着も密着型で布地が少ないのですよ。


 僕が買ったのは、丈夫さ優先の長袖のシャツに皮ズボンを三セット、下着が数枚と旅を想定して丈夫さ優先です。エルヴィーラはじっくり時間を掛けて吟味していました。


 結局選んだのは、スリットの入ったタイトな短いスカートと胸元を紐で調整できるシャツを僕と同じく三セットに下着数枚。色は黒で統一されていました。聞いてみると、黒には親和性があるとか、なんとか。生まれ育った氏族の関係みたいで、だから僕の黒髪や黒に近い瞳は気にいっているそうです。


 一着はすぐに着替えて、今まで着ていた服は銅貨一枚で売りました。


 この世界の一般人の衣服は基本的に古着……新品の古着という妙な服になるのでえすが、それに着替えると、服屋の恰幅のいいおばさんに聞いた武具を売っている店がある通りに移動です。ちなみに下着はさすがに新品なのです。


 さすがに日も高くなり人通りの多くなった道を進み、何軒かの武具の店を覗きました。衣服をちゃんと整えたエルヴィーラに注目が集まるのは仕方ない事でしょう。僕だって隣を歩く彼女を盗み見しているのですよ。


 そしてエルヴィーラとも話して決めた品揃えが多そうな一軒の武具の店に入店なのです。


 武具の目利きなんて碌にできないけど他の店と比較して、値段もお手ごろだったのですよ。


 スケベな目をしたおじさんが店主の店に来ると、最初にモンスターの素材を査定して貰いました。交渉は美人のエルヴィーラだけどね。


 この店で武具を買うからサービス査定して貰うことに成功。さっそく装備を選びます。あっ!その時、騎士から奪った剣も売りに出してみました。なんだかバランスの問題なのか軽すぎたのか僕との相性は悪いみたいだったからね。


 僕が買ったのはブラックウルフの皮を特殊な薬品で煮詰めて作った硬革鎧(ハードレザーアーマー)に、同じ素材で作った軽兜(オープンヘルム)、肘近くまであるに革手袋(グラブ)と足首まで完全に隠す革靴(ブーツ)。この世界じゃゴブリンの皮製に次いで一般的な装備らしいです。ランク的には一つ上になるそうですけどね。


 そうそう、この世界の武具ってモンスターの素材で作るのが一般的みたいなのですよね。剣なんかも鉄だけだと勘違いしていたら、鉱石とモンスター素材の合金で作るって話なのです。前世の僕の感覚では鍛冶ってより錬金術に近い気がします。さすが魔法のある世界。


 武器は、少し長めで肉厚なブラックウルフの骨と鉄を合成して作られた長剣(ロングソード)短剣(ダガー)を選択しました。両手でも片手でも使える柄の長さと、軽く素振りさせて貰った時のバランスが良かったからね。少し重量があったですが、力には自信があるので問題なしです。専用の剣帯もついでに買いました。


 エルヴィーラは、僕と同じブラックウルフ製だけど、煮詰めていない胸部だけを防御する軽革鎧(ソフトレザーアーマー)に、太腿の半ばまで隠す長革靴(ロングブーツ)と、二の腕まで隠す長革手袋(ロンググラブ)を買っていました。動きやすさを重視しているみたい。武器は、僕と同じ短剣(ダガー)に、ゴブリン骨と木材を合成した素材で作った長弓(ロングボウ)、ゴブリン牙で作られた(アロー)を12本。セットで買ったので矢筒を、しっかりとおまけして貰っているのはさすがだと思います。


 ついでに耐水性に優れているって理由から、蛙タイプのモンスター、ジャイアントトードの皮で作られたフード付きマントもお互いに購入して、装備は揃ったのです。


 僕の装備は焦げ茶色しかなかったけど、エルヴィーラは黒色で揃えていました。本当に黒が好きみたい。お互いに店内で購入したばかりの武具を装備させてもらい、簡単なサイズ調整をおじさんに依頼。おじさん、サービスするって言いながらも、僕よりもエルヴィーラに時間を掛けて丁重に調整。趣旨は理解できるけど、後で泣かされないでね。


 結局、買い物はエルヴィーラがその時の事を持ちだして合計金貨一枚で済みました。結構品質が良いのを選んだと思うから、僕たち損はしてないと思うよ。三割ぐらい割り引いてくれているかもね。おじさん、最後泣きそうな顔だったしさ。


 その後は、先に宿を取りました。夜で部屋がいっぱいになる可能性を考えて、武具屋のある通りの近くで見つけた宿をね。


 最初に泊まったのが南門の近くなら、ここは西門の近くになります。半日かけて買い物なんかしながら、外周区画を四分の一歩いた感じかな?


 やっぱり、最南部で最大の都市という二つ名に負けない広さがあるのです。これも、買い物中に聞いた話だけどさ。


 今回の宿屋は、一階が食堂になっている二階建ての木道建築で、横に広いタイプでした。部屋は一部屋しかなかったけど、二人部屋でベッドも離れて、小さい丸テーブルに椅子が二つの部屋を借りることにしました。この宿、恰幅の良いおばさんと、巨漢のおじさんが二人で切り盛りしているみたいです。


 外周壁近くなので時間帯によっては、日当たりは少し悪くなるけど、食堂も兼ねているので料理の味には期待できそうなのです。美味しい食事って大事だよね。


 他に贔屓にしている宿もないし、話し合った結果、悪くないと二人とも思っていたので、五日分の宿泊費を前払いし宿泊を先に予定しました。夕方にまた来て、部屋がなくなっていたら嫌だったからね。


 その後、一応、旅に必要そうな、背負い袋やポーチ、水筒と火打石、その他として日持ちがする薬草とか応急処置ができる小物を二人分最後に買いに行ったんだけど、ここで財布の中身が、かなり厳しくなっちゃったよ。


 冒険者登録できなかったら、どうしようか、今から心配なのですが、取りあえず、この買い物が終わると、すっかり日も暮れていたので、今日は休むことに……この夜は、ゆっくり更けていきました。

ミスに気がついたので、修正してたら投稿時間が遅れました。このまま0時投稿に戻します。

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