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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第六十二話

 頭に鈍痛を抱えたまま、それでも周囲を確認します。運良く、他のモンスターの気配はないのですが、今襲われたら負ける自信がありますね。


 剣を背中に戻すのも億劫なくらい、疲労が蓄積されているのが理解できます。


 この連戦は厳しかったですね。暫く戦いから離れたいのが今の本音です。


 現状では無事に街を出られるか問題なのですが、少しは休みたいです。まだ整わない呼吸のまま、他のモンスターが来る前に移動しました。素材を剥ぎ取る余力なんて残っていません。


 そんな状況でも、ワイヴァーンの素材は捨てがたいと欲を出してしまうは、基本的なところで強欲だからなのでしょう。


 近くの無事な民家にエルヴィーラと不法侵入すると、腰を落ち着け、少しだけ休息と様子見をする事にしました。寝る訳にはいかないですが、体力を回復させる落ち着いた時間も欲しかったのですよ。


 薄暗く狭い一室で、座りながら体を休め、息を潜めながら外の様子を確認。お互いに水分補給などもした後、今後について小声で少し話し合いました。


 僕は、この騒動が終わって報酬が出れば、一度マウスを離れる心算です。折角の新しい人生、もっと色々な場所を見てみたいです。旅をするのに、今の冒険者と言う立場は悪くないですしね。


 偶然手に入れたドラゴンモドキの素材、新しいワイヴァーンの素材、魔樹の素材、隕鉄の残りで武器ぐらいは作れそうですが、マウスで作ると、素材の出所に不自然さを思えられる可能性もあります。


 これらの素材はギルドに黙って回収し、懐にしまい込みます。新しいワイヴァーンの素材は、まだ皮算用ですけどね。


 辺りが暗くなる夜まで大人しく休息し、体力を回復させている間、幸運な事に別のモンスターの襲撃はなかったです。

 

 夜まで待ったのは、体力回復よりも、大型の鳥型モンスター達が鳥目で夜に視力が低下するのを期待しての事。確実な事ではないのですけどね。


 虫型のモンスターの接近する気配も感じなかったので、家から出るとワイヴァーンと戦闘をしていた場所まで戻り、死骸を漁ります。


 肉類は腐りそうなので避けますが、鱗に骨、翼膜、爪に牙などを回収すると、足早に夜の闇に紛れて外周部の南門に向かって進みました。


 途中、虫型モンスターとの戦闘を数回経験しましたが、問題なく突破できましたよ。やっぱり数が減っているかもです。


 無事に門を抜けると、厳ついボニファーツ、それにリコとサラに迎えて貰えました。ワイヴァーンを倒すのに手間取って時間が掛かったので、途中休憩していた、遅くなった言い訳しましたよ。半分は本当の事なのですけどね。


 三人から、あの後の事を聞くと、やはり虫型のモンスターや、餌を求める鳥型のモンスターとの戦闘が多発しており、それが避けたり迎撃したりしながら戻ってきたそうです。負傷者は増えたようですが、死者は出なかったみたいなのです。指揮したボニファーツの実力ですね。


 ギルドも元凶の討伐は終わったと見て、一度、最初にキャンプしていた平原部に戻ることにしたようです。


 まだ復興など、問題は多く残っていますが、一先ずは終わりが見えてきたって事ですね。


 軽く溜息を零し、後は戻るだけなのでフェイス部分を上げて、小さな笑みを浮かべるエルヴィーラに頷いていると、サラが話しかけてきました。


「二人は、これからどうするの?」


 象徴的な質問ですが、真剣な瞳で見つめながら聞いてきます。隣に立つリコも同じような表情をしていますね。


 言いたい事は理解できます。だから、二人には正直に答える事にしました。


「これが終わったら、マウスを出るよ。別の町や国を見てみたいからね」


 笑みを浮かべながら告げていたと思います。その言葉に二人は納得したように頷いて後、寂しそうな笑みを浮かべました。


「なら、終わったらお別れなね」


「寂しい……です」


「別に今生の別れじゃないのよ」


「うん。またマウスに戻って来るつもりだしさ」


 短いながらも、付き合いが深かった二人です。思うところがありますが、永遠に別れるつもりはありません。もちろん、再会できる保証もないのですけどね。空約束ぐらい許される雰囲気だと思います。


 その後、暫くは離しこみましたが、近くで聞き耳を立てていたボニファーツの肩に手を置き不意打ちで提案してやりました。


「……って事でさ、二人の事はお願いね」


「なっ!お前……」


 急な事に驚き、絶句しているボニファーツに、悪戯が成功した気分に成り、笑みを浮かべた顔のまま理由も説明します。


 と言っても、理由なんて簡単なものですけどね。後付けと言っても良いです。


 サラとリコも驚いていましたが、基礎は悪くないので、本格的に年上の経験者に育てられれば、更に一皮剥けそうな気がするのですよ。生憎と、僕やエルヴィーラ、それにゾルタンなんかは育てるという面では性格的に向いてないですし、経験もないですからね。


 こうして、二人の今後を先輩冒険者に押しつけながら、皆で最初のベースに戻って行きました。

前回の更新日時、一日間違ってしましたが、今週から正常に戻ります。

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