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VII

 次の日出社すると僕が望んだ通りアールグレイが用意されていた。インスタントではなく、きちんとしたイギリス製の高級品だ。僕はオフィスで白髪頭にキスをしてお礼を言った。

「仕事場でそれはやめてくれ」無表情で白髪頭は言う。

「内心照れているくせに」僕は笑った。「でもわかった。勤務時間内はもうやらない」

「ありがとう」昨日ラブホテルのベッドの中で聞いた優しい声で言った後、白髪頭は事務的な声に切り替わった。「じゃあこれから今日の予定だ。と言うよりこれからの予定と言うべきだろうか」

 それから一時間白髪頭は色々とウニーについて話した。どんな新社員が聞きそうな文句から初め、僕へ対しての個人的なアドバイスも含めてだ。

「一番の問題は君をどう他の社員に馴染ませるかだ。君のアイディアは素晴らしかった。しかし残念ながらウニーでは出来より経験を大事とする社員がまだ大勢いる。先輩の言うことは正しいという時代遅れの思考がまだこびりついているのだ」

 時代遅れのところで僕は吹き出してしまった。何しろ僕にとっては全てが“時代遅れ”だからだ。

「何を笑っている?」

「いや、ただ政基が可愛いなぁ、って」

「仕事中は辞めてくれって言っただろう」

「ゴメン。でも社員に馴染むことなら問題ないよ。僕は製品のアイディアを考えるより人を説得する方が得意なんだ。僕がその気になれば政基になんでも思い込ますことができるよ」

「社内で私のことを政基って呼ばないでくれないか? 鵜来さんもダメだ。肩書きと名字で呼んでくれ」

「鵜来本部長と呼べばいいんだね」僕は白髪頭のデスクに乗った名札を見て言った。

「そうだ」

「わかったじゃあ、続けてください、鵜来本部長」

「普通だったら君を他の社員のように下っ端から初めさせるところだが、それでは君は君と比べて無能なやつの下で一年から二年働くことになる。さらに君は未成年だから、それも大きなハンディとなるだろう」

「じゃあどうするの? 鵜来本部長」

「君を新しいゲームの開発のプロジェクト・マネージャーとする。正式的には君はプロジェクト・マネージャーではなく、宇陀うだと言う男だが、彼には君の指示を聞けと命令してある」

 僕は少し顔をしかめて見せた。

「上手くいくかな?」

「それは君次第だ。宇陀は野心家だ。君を差し置こうとするに違いないから気をつけろ」

「それは問題ないけど……会社で僕と会えなくていいの?」

「君のオフィスをここに置くことはできる」カラカラの声で白髪頭は言った。「私が君を見込んでいるのだから変に思われないだろう」

「OK。ならいいや。早速、宇陀のところへ行ってくる。彼はどこに?」

「一階下の一番奥のオフィスだ。そろそろ出勤してくるだろう」

 まだ八時半だったことを気づき、僕は驚いた。気付かない内に僕はとても速く出社していたのだ。白髪頭に会いたかったためだろうか?

 電子人間の僕に佐藤結城の気持ちはよくわからない。

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