IV
「ちょっと待って!」
白髪頭はタクシーに乗り込もうとしていたところを僕は彼に追いつき、息継ぎしながら彼とタクシーの後部座席の間に立ちはだかった。
「すみません、運転手さん。父はタクシーに乗りません」僕はそう言い、ドアを閉めた。
運転手は車内で何やらと文句を言い、走り去った。
「何かいい忘れたことがあるのかい?」白髪頭は聞いた。
「うん、一つだけ」
「何だね」
「オジサン……鵜来さんは少年好きだよね?」
一瞬彼の表情が凍りついた。
「図星だね。もう隠しても無駄だよ」
左右を素早く向いた後、白髪頭は観念したように言った。
「どうしてわかった」
「眼つきで」
ソファーに座っている間、僕は彼が結城に向ける視線を胸と腹の部分で感じていた。
「どう僕は年取りすぎ? 僕じゃダメ?」
「何を言っているんだ」
「わかってるくせに」
僕はTシャツを捲り上げた。結城が住むマンションの前の道路は人通りが乏しく、幸い誰もいなかった。年上の男に僕が服を捲り上げているところなんて見せたら、勘違いされる。
「君は未成年だ」
「やりたいんでしょ?」
白髪頭は黙った。
「もう優柔不断だなぁ」白髪頭の首に抱きついてみた。「僕から誘ってるんだから」
「君の……君の両親に申し訳ない」
「お金を受け取るわけじゃないんだから、いいじゃん」僕は手を自分のトランクスにいれ、自分の性器を撫でる仕草をした。「僕ヴァージンだよ」
白髪頭を今すぐ佐藤結城の能力で落すことは可能だ。すでにぐらついている白髪頭を説得するのは難しくない。しかし僕は神としてではなく、普通の人間として白髪頭と寝たかった。
「なおさらダメだ」ゴクリと彼は鍔を飲み込んだ。さっきから彼はそっぽを向き、拳を握り締めている。そうしていないと、欲望の制御が外れてしまうのだろう。
「わかった。セックスがダメならしょうがない。でもだったらフェラチオぐらいはさせて」
「何を言っているんだ!」クルリと白髪頭は振り向いて僕を怒鳴りつけた。「君は十七だぞ。私は五十八だ。妻子もいる。住む世界が違うんだ」
「これは僕の世界だよ」嘘じゃない。「そしてあんたの世界でもある」
僕は思い切って白髪頭にキスしてみた。彼は抵抗しなかった。
「本当はキスするのは得意じゃないんだ」片手で頭をかく。「キスされる方が気持ちいい」
今度は白髪頭が僕に覆いかぶさるようにして唇を合わせてきた。彼の舌が僕の舌と絡め合うように触れた。




