第四ラウンド
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第一開発室スタッフ開発メモ
イサワさんに指定された性質の電極で再シミュレーションを実施。
素材の構造としては、カーボンナノチューブ状のものと金属の複合素材の薄い板でグラフェン状のシートを挟んだように見える。
論文を読んだがどうやってここ迄巨大で整然とした構造を作るのか理解に苦しむ。通常はミリ単位だろうに。
信じられない!
数千度にまで抑えられた!
勿論、外側の円筒形電極からの放熱が完璧だとしての話だが。
軸にあたる陰極ではこの素材の良いところが引き出せないようだ。熱が全部電極の根本に輸送されてしまう。ここに冷却機構を入れる余地は仕様的にきびしいかもしれない。
だがこれは次の二次元型電極配置のシミュレーションでは有効に働きそうだ。両極とも放電室の外に直接放熱できるからな。
これは楽しくなってきた。
ここ迄の結果をイサワさんに報告しなければ。
最近はずっとイライラしてた彼女もきっと喜ぶだろう。
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発: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室第一開発主任・イサワ
受: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室長・タカチホ
件名: 新素材によるシミュレーションついて
イサワです
新素材の特性を用いたシミュレーション結果を添付します。
同軸タイプでは陽極の放熱については満足できるレベルに達していますが、陰極については根本からの放熱に余分な機構ないしは空隙が必要となり、仕様を満さない可能性が高いです。
二次元タイプでは両極とも満足できるレベルです。これなら既存の製品または論文データベースをあされば効果的なヒートシンクが見付かりそうです。
ただ二次元タイプにしても推力電力比が 35ミリN毎キロWと目標値が出せませんでした。ひき続き過去の論文に当ってみます。
それにしても、驚くべきなのは数千度という高温になっても電極の電気伝導率が極端には落ちない事です。そのお陰で 3倍以上の電力効率が出せています。
また、あの層が金属複合素材の熱も吸収しているのも何げに凄いです。
ああ、ターナーPhDと直接会話してみたい!
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発: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室長・タカチホ
受: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室第一開発主任・イサワ
件名: Re: 新素材によるシミュレーションついて
イサワ君
報告ありがとう。
良い結果が出ているようで私も嬉しいよ。
そろそろ試験機の作成フェーズに移っても良い頃合いだと思う。
試験用の液体ヘリウムの手配をすすめてほしい。
ターナー氏と話すのはこの開発が終了するまで無理そうだ。
君が気にしていた排気プラズマの影響についてだが、向こうとこちらの宇宙服素材開発チームの間で協議中だ。
その結論次第ではあるが、宇宙服本体の重量増も視野に入れておいてくれ。最大で 50キログラム程度という話がでているらしい。
以上情報共有しておくよ。
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発: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室長・タカチホ
受: エウロパ条約機構軍月面基地司令・グラショウ
件名: 進捗報告
グラショウ月面基地司令
例の電極素材の特性を用いたシミュレーション結果を添付いたします。
数値上のスペックは問題ありませんでした。
あとは試験機でも同様の結果が出てくれることを望みます。
シミュレーション結果が出てきたので、そろそろ試験機の作成に移ろうと思うのですが、例の装置や電極素材はいつ頃いただけますでしょうか。
タカチホ
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発: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室長・タカチホ
受: エウロパ条約機構軍月面基地司令・グラショウ
件名: Re: 進捗報告
タカチホ室長
スペックに問題無しとの事でよかった。紹介した手前、内心では冷や冷やしてたんだ。これでもね。
報告書は後で精査させてもらおう。
機材の手配についてはちょっと待ってくれたまえ。
その前に一緒に飯を食おう。今週末はどうだ?
捕捉
・グラフェン
炭素原子が蜂の巣状に並んだ原子一個分の厚さのシート。電気伝導率、熱伝導率に優れる(らしい)。




