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エピローグ 恋の果て

 彼女がいなくなってから一ヶ月が経った。


生徒会副会長の席が空いた状態になったわけだが、それは彼女が来る前も同じこと、結局元の生徒会に戻っただけなのだ。


だというのに、僕を含めた生徒会メンバー全員が未だ、彼女がいた時のような空気を形成出来ていない。


彼女が生徒会に在籍していたのはほんの数ヶ月なのに、それだけの存在感を放っていたということなのだろう。


普段から寡黙な大神(おおがみ)君だけでなく、いつも元気一杯な絵園(えその)さんや上谷君までも物憂げな表情を見せている。


かく言う僕もタメ息交じりに曇り空を眺めるだけなんだけど。


『あら兄さん、生徒会の業務の方は大丈夫ですか?』


(れい)は特に心を乱す様子もなく平然としている、我が妹ながらたくましいよ。


『心配しなくても大丈夫だよ、それよりどうしたの? もしや恋愛相談?』


『違います、ただ生徒会の方でもその調子なのか気になりまして』


『ああうん、僕はずっとこうさ、あんまり長居しないでよ?』


僕の態度にいい加減呆れたようだ、妹の語気が気持ち強くなる。


『切り替えの悪い所が兄さんの良さだとは思いますが、いつまでもその調子では困ります、それでは符夜雨(ふよう)さんも哀しみますよ』


そんなことはわかってる、だけど悪ぶった中に見せる善性が、捻ねくれた言動の裏に垣間見える純粋さが、僕の中から離れない。


『生徒会の皆さんこんばんは、伶さんも』


『あら光威(こうい)さんどうも、ほら兄さんも彼女を見習ったらどうです?』


誘拐されて、なによりも辛い思いをしたはずの彼女は凛とした態度を見せている。


『あっ愛住(あいずみ)さん!! おっおは、いえおこんばんは!』


イヤ凛とはしてないかも......、しかしすっかり元気そうだ、未だ塞ぎこんでいたとしてもおかしくはないというのに。


あれから一ヶ月の時間が経った、だけど僕の時間はまだ哀抔(あいなど)さんがいた頃から止まっている。


出会ってから少ししか経っていないのに、彼女が存在していた時の方がイレギュラーだったはずなのに、僕の心に大きな穴が開けられているような感覚がある、彼女の存在が在るべき自然体だと、そう主張するように。


彼女は恋という物を否定していた。


それは恋や愛といった感情によって死に至った者を間近で目撃し、自分もまたそれによって消えることのない傷を刻み込まれたからなのだろう。


自分が宿らせた恋、それが実らなかったり、奪われたりした時、人生に潤いを与えるはずの果実は猛毒を孕んで襲いかかる。


彼女が受けた痛み、今ならわかるよ、それでも僕は恋愛を否定する気にはなれない。


哀抔(あいなど)さんの中の恋愛に対する視線が、冷えきった物のようには思えなかったから。


だから僕はこれからも学園の生徒達に、人々に恋をすることの尊さを、愛を育むことの素晴らしさを説き続ける。


『みんな注目! 今日の生徒会事業は僕の家で行います、他にもやらなければならないこともあるし、それじゃさっさくついてきて! 光威(こうい)さんも一緒に良かったら来てね!』


だから僕自信も人並みの恋愛に勤しむよ、だから見ていて、そしてサヨナラ......、符夜雨(ふよう)

この物語はフィクションです。

犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。

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