流血の生徒会
大神君の流血自体は前に見たことあるけれど、今度は鼻からか......それは意外ね。
『なにがあったの?』
『それがっスね、廊下の角の方で倒れてたんス』
本人に聞く他はないのね。
『ほーら起きなさい』
軽く頬を触って正気の復帰を促す。
それでも起きない......
少し力を込めて身体を揺さる。
『起きなさいってば!』
『ちょっとフヨちゃん!もう少しお手柔らかにして欲しいっス!』
気を失っていた大神君の眼が開かれる。
『どうしたんだ、なにか騒がしいが......』
『あらおはよう大神君、鼻血垂らしてどうしたの?』
『そうだ、あの娘はどこに......』
一人でずっこけて気絶、なんてことではないのだとしたら、もしや事件の類い?
『あの娘って上谷君知ってる?』
『いえ検討もつきませんっス』
なんでちょっと自慢気なのよ......
『ただいま戻りました!大神さん大丈夫ですか!?』
生徒会のお仲間が流血したとあらば庶務ちゃんものほほんとはしていない。
『あら絵園さんごきげんよう、不躾だけれど大神君になにがあったか知らないかしら』
『友達にせがまれて大神さんを紹介したところ、その二人の身体が密接してしまいまして、そしたら鼻血を出して気絶したんです』
良かった、暴行事件の類いじゃなかった、イヤ良くないか。
『ねぇ上谷君、今日は依頼来てないの?』
『はい、来てないっスね』
『であるならば、特訓するわよ!』
『『『特訓!?』』』
『生徒会の一員として、大神君の女の子に対する免疫の無さは看過できないわ、だから皆で解決するわよ』
『なんか意外っスね、フヨちゃんが特訓とか言い出すなんて』
......ほっときなさい。
『いいですね!楽しそうです!』
遊びじゃないのよ。
『張り切っているところ悪いが遠慮しておく』
『今回に関しては強制するわ、副会長権限でね』
『わざわざ時間を使わせるのも難だ、それに何故そこまで......』
引き留めて欲しそうにしちゃって、甘い言葉が欲しいのならそう言えば良いのに。
『あなたの切ない顔を見て放っておけるわけないでしょ?』
鼻血をハンカチで華麗に拭き取ってのこの一言、これなら受ける気になるでしょう?
『なんだか気持ちが悪いぞ、急にどうしたんだ?』
その口縫い付けてやろうかしら。
『私が良い顔してキメてんだから素直に受け入れれば良いのよ』
『自分で言うのか、良い顔とか......』
そういう意味じゃないから......
『まぁでもそうだな、副会長の顔に免じるとしよう』
『あら嬉しいわ!』
しまった、おっきい声出ちゃった......
『前にお見舞いに来た時にも思ったっスけど、フヨちゃんってば案外可愛らしいっスね!』
屈辱、上谷君にそれを言われるなんて。
『ウルサイわよ! 副会長とお呼び!』
『やっぱり副会長の肩書き気に入ってんスね』
『そのニヤケ面やめなさいよ!』
『わたしも嬉しいですよ! 哀抔さんが副会長でいてくれて!』
『ああもう! わちゃわちゃしてんじゃないわよ! ほらやるわよ!』
威勢の良い返事が三通りほど重なっていよいよ、と思えば......
『その前に一つ良いか哀抔』
『あらなによ』
『会長とその妹は入れなくて良いのか?』
なんだそんなこと。
『伶は部活の見学中、愛住君はその付き添い、今日中には終わらないって本人も言っていたわけだから別に良いのよ、第一彼が居てもろくなことにならないわよ』
『そっそうか、すまん引き留めてしまって』
『優しいのねあなた、仲間外れみたいで気が引けた?』
『そうじゃない、ただ少しばかり寂しく感じただけだ』
やっぱり大神君たら、可愛らしいわ。
『なんだ哀抔、その眼は、それに顔に手なんか乗せて』
『あなたのこと、可愛いなって想ってただけよ』
『なっ......!? なんだ急に!! どうしたんだ今日は!?』
『どうしたってなぁに?』
『こんなの調子が狂うぞ......』
『それでこそ特訓でしょ?』
顔を赤らめながら眼を反らす大神君の傍ら、上谷君と絵園さんが呆けたような表情をして私達の特訓という名のじゃれあいを眺めていた。
『出会った頃の恋愛嫌い発言はなんだったんスか......』
『哀抔さんも乙女ですねー』
『茶化してないでそろそろ始めるわよ!』
『まだ始まってなかったのか』
『ええそうよ、こんなのウォーミングアップにもならないんだから』
顔をひきつらせる大神君なんかお構い無しよ、覚悟しなさい。
『しかし特訓って具体的になにをするんだ』
『そうね、ひとまずは私と絵園さんとあなたでシミュレーションするわよ』
『ハイハイ! 俺の役割は!?』
『上谷君、あなたは都合の合う女子と連絡を取って』
『了解っス!』
『それじゃ最初のお題はこれよ!』
ノートに書かれた文字を見るや否やまたしても大神君は慌てるばかり。
『流石に冗談キツイぞ哀抔!』
『冗談ってなにがよ』
『いやキャバクラはどうかと思うぞ!』
え、ダメなの......?
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




