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緊急会議

 会社に戻りすぐに小野くん、小森くん、萩原さんを呼び出し、緊急会議を開く。

「ごめんね、急に呼び出したりして。」

「さっきの、産業新聞社との打ち合わせで何かあったのですか。」

 萩原さんが聞いてくる。

「まぁ、萩原さんの想像通りかな。ウチへの出資申し出と女性向けキュレーションサイトについては、共同出資子会社を設立しての部門独立の申し出があった。」

 やはり、長岡に情報を提供していたのは彼女のようで、ばつが悪い顔をしている。

 彼女のスタンドプレーもどうかとは思うが、ちょっと自分でも意地悪いとは思う。

 今度は小森くんが聞いてくる。

「受けるんですか。」

「小森くんに任せているプロジェクトもあるし、今後の展開を考えると、一新聞社に取り込まれるようなことは避けたいから、出資については断っている。だから、小森くんには金策は引き続きお願いするよ。」

「その言い方だと、女性向けキュレーションサイトの件については乗るんですか。」

「うん。元々、独立させる予定だったし、『じめ速』からの独立によるイメージ転換や各界へのコネクションが増えるし、メリットは計り知れないと思ってる。」

「計画していた各種機能の提供とか、今後の開発はどうするんですか。」

「そこは、きっちりと開発や業務委託契約として処理していかないとな。サイトサーバの利用についても同じだな。」


 一旦、解散し、小野くんだけ残ってもらう。

「最後に話してたところについては、小野くんに取りまとめて欲しいと思っててさ。」

 今後、ウチの利益に相反しないよう、色々と手は打っておかないといけない。

 また、分社化に伴って産業新聞社からの人員が入ってこなくても、ウチとの軋轢が生じるような事態にもそのうちなるだろうし、手を切るタイミング等も考えておきたいと思っていること。

 最終的に、完全にウチと切れることも考慮して、子会社との関係づくりをしていきたいと思っていること。

 その辺りの事を一緒に考えて欲しいとお願いする。

 幸い、女性向けキュレーションサイトとして出向させる人員については、その目的で雇用しいるので、ウチ本体に与える影響はそこまで大きくならないとは予想している。

「その辺りの交渉は、小森くんの方が向いていると思いますが。」

「技術流出の防止と、サービス提供による収益確保を優先したいから、そこを先に固めていきたい。」

「小森くんのプロジェクトも同じように将来的には切っていくことを考えないといけませんか。」

「いや、小森くんのプロジェクトがメインになるかな。開発リソースが必要なのはそっちだ。もし、切り離すとすれば、キュレーションサイトの方だな。小野くんは影から全体をサポートしてもらう立場になるから、苦労をかける事になるけど、宜しくね。」

「そういえば、昨日から娘さんが小学校に通ってるんですよね。大丈夫ですか。」

「日本語教室があるところにわざわざ引っ越してるし、何とかなるよ。残業はしんどいけどな。伊達に年食ってないし。」

「見えませんけどな。」

「若い女の子に言われると嬉しいんだけどね。」


 今日も早目に会社を後にし、スーパーに寄ってから帰宅する。

 明日から短縮授業で給食が無いので、お弁当を作る。

 本当のところ、ギンタは食物を摂取しなくても問題無い。

 お弁当や食事を作るのは、俺の愛情というか、お節介に過ぎない。

 300年も一人にしてしまった罪滅ぼしで、俺の自己満足に過ぎないが。

 オルガの寂しかったという告白が俺にそうさせているのもある。

 連れ合いを作るのは何百年後になるか分からないが、ギンタが子供を産んだとき、その子には寂しい思いはさせたくないので、ちゃんと愛情を知ってもらいたい。


 このところ、色んな国の料理を作りすぎ、どこの国の食生活か分からない状態だったので、今日は和食に重点をおいてみよう。

 塩鯖を湯にくぐらせて臭みをとり、醤油、みりん、かなり多めの砂糖で甘く煮付ける。

 煮汁は少なめにし、照りととろみが出るようにする。

 あと、肉じゃがは牛肉だ。

 母が関西出身だったので、和食はどうしても味付けが関西風になってしまう。

 厚揚げと小松菜は煮浸しにし、ブロッコリーは一旦レンジで下ごしらえし、キャベツは軽く茹で、千切りにしたにんじんと合わせて、オリーブオイルとアンチョビで炒め合わせる。

 明日のお弁当にも使えるように切干大根をにんじんと薄揚げを入れて炊いておく。

 タケヒコのお供えにする薄揚げは甘めに炊いておく。

 味噌汁は麸とわかめだ。

 お弁当のおかずに使えるものは、小さいサイズのタッパーウェアに取り分けて冷凍しておく。


『初めての学校だけど、どうだった。』

『何を言っているのか分からないから、座っているだけだった。』

『そうだな。国語の授業だけでも、食べた後に予習しておくか。』

『うん。』


 食後に国語の授業でいま習っているところを訳しながら読み方を教えていく。

『日本語は難しいな。』

『そうだな。急がなくてもゆっくり覚えていけばいい。』

『あんまりゆっくりだと、分からないまま学校が終わってしまう。』

『そうか。なら、もう少し頑張って教えようか。』

『ああ。』

 国語を中心に予習をしていると、思ったより時間が早く経った。

 ギンタは思ったより学校に興味があり、人間社会に溶け込もうとする意欲がみえる。

 学校に通うという選択をして、良かったのではないだろうか。

今日のご飯

○夕食

・白米

・鯖の甘く炊いたの

・厚揚げと小松菜の煮浸し

・肉じゃが

・切干大根の煮物

・ブロッコリー、キャベツと人参のアンチョビ炒め

・麸とわかめの味噌汁

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