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初登校と新聞社との交渉

 朝食は昨日のカレーだ。

『昨日とまた味が違うけど、これも美味しい気がする。』

 昨日のカレーは偉大だ。


 今日からギンタが一人で学校に行く。

 黒いワンピースに白のブラウスを合わせ、黒いリボンを結ぶ。

『道は覚えてるか。』

『ティッシュとハンカチは持ってるか。』

『困った事があったら、会社に電話してくるんだぞ。』

 心配にきりはない。

『もう行く。学校も家から見える場所にあるから、迷わない。』

『いや、でも。』

「いってきます。」

「いってらっしゃい。」

『学校まで送っていこうか。』

『いらない。』

 ぴしゃりと言われ、引き下がった。

 見た目は子供だが、大体、俺より長く生きてるんだ。

 大丈夫だろう。

 そう自分に言い聞かせ、出勤する。


 産業新聞社ネットメディア室 室長という肩書の男と会議室で向かい合っている。

「ウチへの出資については、有り難い話とは思います。ただ、他のプロジェクトもありますし、今後の我が社の戦略もありますので、お断りさせていただきます。」

 ニュースキュレーションアプリの記事提供の提携のため産業新聞社と交渉を進めているのだ。

 その中で、産業新聞社からウチに出資を検討したいとの申し出があった。

 今後の展開に開発を続けていく必要があり、金はあれば有るほど困らないが、アプリ化については、スマートフォンの普及を見越しての開発を予定しているが、それもまだまだ先になるため、出資者としてそれを許容できるかどうか。

 また、ここで完全に新聞社一社に飲み込まれると、キュレーションとしての存在意義を失う危険性がある。

 そうなると、単なる新聞配信アプリ制作会社となる、コンテンツ会社としてコケる等の絶望的なリスクが待ち構えているだろう。

 ただ、それ以前に技術屋としてのプライドもある。

 ただ、最終的にスマートフォン普及の時代に入った時には、ニュース配信は専門の別アプリに独立させ、事業ごと売却することも考えている。

 それらの思考を巡らせながら、言葉を続ける。

「ただ、キュレーションプラスアルファの女性向け情報発信サイトの話は我が社としても既にコーナー単位ですが、充実・拡充に動き始めていますから、願ってもない話です。」

 キュレーション以外の強力なコンテンツ作成力も必要と思っていて、専門家や著名人を取り込む為には大手メディアの助力は大きい。

「産業新聞社の名前を表に出せますし、文化人等への記事依頼もウチの名前を使っていただけるようになりますからね。」

 美容・コスメ・健康をテーマにした女性向けサイトを現在検討している。

 それぞれの商品広告の掲載も見込めるため、立ち上げを考えている。

 さらにプラスして、こちらは、技術屋として、ユーザ登録による、バイオリズム把握、体調管理、各種診断テスト、知識共有等のほか、医者カウンセラーによる相談室の設置などのサービス提供を検討している。

 というか、まだ発足したばかりのプロジェクトの情報がどこから漏れたのか。

 漏れるというか、機密扱いにはしてなかったな。

「よくご存知で。非常に魅力的な提案ですね。」

 ただ、編集志望の萩原さんなどは、ウチの会社より産業新聞社の名前で働ける方が喜ぶのかも知れない。

 そもそも、他人のアイデアなので、特に執着は無い。

 長岡の交渉は、ウチを評価していると示しながら、各プロジェクトの俺の入れ込みを見抜いて、的確に仕掛けてきているイメージがある。

 多分、その通りなんだろう。

 女性向けキュレーションサイトは、我が社の『じめ速』のオタク的イメージを払拭するためにも、独立させたいとは考えてはいた。

 良い機会なのかも知れない。

「こちらの件は前向きに検討させていただきます。」

今日のご飯

○朝食

・昨日のカレー

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