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チート武器

初戦闘のお話。


砂浜にたどり着いた時に、気配探知と魔力探知の有効範囲は別に常に円型ではないということが判明した。


先ほどまでは平野部にいたので、自分を中心とした半径200mぐらいの範囲全体に自分の意識が薄く広く行き届いている感覚があったが、防砂林を抜けると目の前の砂浜の向こう側に広がる海の中の気配はどう頑張っても30mから50mぐらいの範囲までしか探知出来ないようだった。それに加えふと視界に入った海鳥は目で見るまでその存在を認識できていなかった。自分とその鳥の直線距離が明らかに100mも離れていないことからも、きっと周辺の地形や自分が意識しているかどうかなどの条件により、

探知できる最大範囲が変わるのだろう。こういった事から天候が大雨の時とかは探知しづらいことが予想できる。そういった事にも気をつけねばなるまい。


海の中には結構な数の気配を感じるが、ほとんどのものがスライムより遥かに小さい。これだけ近い位置にいるのに逃げる気配は皆無だ。魔力感知というよりは気配感知の方だけが反応しているように感じる。群れたりしているその動き方からしてまず間違いなく小魚の群れだと思われる。食料はすぐに確保できそうだ。毒がないといいが……。


周辺の観察を続けながらいろいろと考察して見る。白い砂浜、ということは石灰質の砂浜なのだろうか?ひょっとするとコンクリートが再現可能かもしれない。砂浜の先のほうに見える岩場は土色の岩が主体だ。ひょっとしたらこの島の山は火山ではなく普通の岩盤が削れたものかもしれない。まあ、これに関してはまだ情報が足りないか。一度海に潜って海底地形やどんな海の生物がいるか確認してみたい。島の生態系についても色々な知識が補完できそうだ。


海辺まで歩いて行くと小さなカニやヤドカリが結構いることに気づく。これも食えそうである。海の中を覗き込むと魚や海藻が見えた。結構生命に満ち溢れている。なんとか楽に魚をつかまえる手段を考えてみようと思う。


思考に一段落ついたので、本日の第四目標である『技能の効果と使用感の確認』をさらに突き詰めて見ることにする。


探知や気配遮断、低レベルの魔術はだいたいつかめて来たが、攻撃系の技能に関してはまだ何もわかっていない。武器の能力も古白に聞いた説明以上の理解はしていない。今後魔物と戦う事は絶対に避けられない。早急に自己の戦力確認を行っておこう。


まずは遠距離攻撃から確認することにする。取得した技能の比重を考えれば気づかれないように遠距離から攻撃してその後は相手の接近を可能な限り許さずにしとめるのが俺のスタイルだろう。それが今の俺には1番安全な手段だろうし。


武器の使い方がより詳しく理解できるかもしれないと思い弓に鑑定石板をつかってみる。



魔力の弓

ATK?

MATK?

使用条件:魔力操作系技能の取得

品質:高品質

状態:良好

耐久値500/500

素材:魔法銀、魔法金、七星の宝玉、古代天鯨の髭、神木の幹

詳細情報:

魔力を消費することによって、その使用量に応じた威力の矢を放つことができる。矢の形状はイメージと魔力操作系の能力にに依存する。基本魔力を込めるだけでは無属性の矢を作り出すだけだが、使用者の魔力をさらに込めることによって使用者の持つ属性をその矢に付与して放つ事ができる。別途に用意した魔道具ではない矢を用いて通常の弓としても使用可能。作成方法は不明。特定の銘はない。



うおお、何じゃこりゃ。みるかにヤバそうな性能じゃないか。


古白には『矢をいちいち揃えるのもめんどいから魔力で代用できるような感じの弓ないの?あとは壊れづらくて長持ちすると嬉しいかな。せっかくだから俺の戦闘スタイルに合うやつがいいな。』としか言ってないのに。


ちなみにヨースケは「(サバイバルするかもしれないから)壊れにくく、長持ちする弓」というものをイメージして古白に要求していたのだが。古白の方はヨースケの要求の意味を「(これから魂を鍛えて行く上で、色々な強い魔物と戦っていく為にも)壊れにくく、長持ちする弓」と捉えていたのでこのような装備品となってしまったわけである。

これは古白のミスというよりは、他の技能習得にかかっているGPの量を考慮すれば武器にかかっているGP量がおかしいことに疑問を抱かなかったヨースケのミスだといえた。最終決定権は常に彼にあったのだから。



リュックを近くの防砂林の根元に置き、身軽になったあと魔力の弓をかまえてみる。取り敢えずMPを1注ぎながら弓を引き絞る。30mほど先の海面に丁度高さも横幅も2mぐらいの大きさの岩があったので、その中心を狙いながら何となく昔ゲームでみた矢をイメージして手を離した。


次の瞬間、ズガンッ。と大きな音がした。岩をよく見ると、端の方にだいたい手のひらぐらいの陥没ができ、そのくぼみを中心にして放射状に大きなヒビが走っていた。中心の陥没して場所からパラパラと岩が落ちていた。海中に衝撃が伝わったのか、海の中に感じた小さな生き物の反応が探知範囲外に移動してゆく。


こいつはなかなかすごい。MP1でこれか。拳銃並みの威力と速度がでてないか?いや、岩の硬さ次第ではそれ以上かもしれない。砕けた岩の色は白くないので、もろい石灰質の岩というわけではないのだろう。さっき平野部でみたスライムなんかにに打ち込んだらバラバラに吹き飛ぶ気がする。しかしこの弓を使う上でのいくつかの問題点が浮かんできた。



問題点其の一

狙った位置に矢が当たっていない。30m程度の距離でこの精度の射撃ではいくら威力があっても長距離攻撃は夢のまた夢である。


問題点其のニ

矢が思ってたイメージと違う。イメージ力の問題なのか、それともイメージした形状を再現する為に必要なMPが足りないのか?まあこれはかなり適当なイメージでぶっ放したので恐らく前者のような気がする。


問題点其の三

威力が強すぎる。贅沢な悩みかもしれないがMP1でこの威力はやばい。これが最小威力なのだとしたら空を飛んでいる小鳥を食べようと思って弓を射てもただのバラバラ虐殺になってしまいそうである。何とか矢を作る必要があるような気がする。


問題点其の四

不可視の魔力の矢だと射程と威力の関係がわからない。狙った獲物の距離と威力の減衰は相関関係があるのかどうかさえ不明だ。



これらの解決法を考えてみる。正直のところ「練習あるのみ!」とひたすら訓練するのも一つの解決法だろう。しかし別のアプローチも思いついた。


この武器は弓と言いながら、何らかの宝玉が装飾として用いられずに素材になっている点や、イメージで効果を変更できるあたり、魔術の発動体に近い構造をしていると予測できる。いろいろな効果をイメージで補完できるとすれば、射撃の際に、魔力操作、魔力精密操作、身体操作などの技能を駆使しながら、矢の形状だけでなく飛んでいくイメージや属性を付与した上での着弾後のイメージなんかが解決には重要なのかもしれない。


そしてもう一つの方法は下級弓術か下級狩猟術の技能を使うことである。狩人の技能に弓関係のものがないということは考えにくい。さっそく検索して見ることにした。ステータスを開き下級弓術と下級狩猟術の項目をイメージする。



下級弓術

Lv1:望遠(スコープ)

Lv2:ニ連射(ダブルショット)

Lv3:射撃補助(アローショット)

Lv4:強射(ストロングショット)

Lv5:即射(ラピッドショット)

Lv6:狙撃(エイミング)

Lv7:伏せ射ち(ライイングショット)

Lv8:三連射(トリプルショット)

Lv9:駆け射ち(ムーブショット)

Lv10:長距離狙撃(ロングレンジエイミング)



下級狩猟術

Lv1:忍び(サイレントウォーク)

Lv2:索敵(サーチ)望遠(スコープ)

Lv3:投擲補助(スローイング)

Lv4:魔獣飼育(モンスターブリード)

Lv5:射撃補助(アローショット)

Lv6:罠作成(トラップメイキング)

Lv7:無音移動(サイレントムーブ)

Lv8:潜伏(ハイディング)

Lv9:隠密行動(ハイドムーブ)

Lv10:狙撃(エイミング)



あった、今回の問題点は射撃補助(アローショット)狙撃(エイミング)で解決できそうだ。さっき打った感じだと、魔力さえうまく込めれば長距離狙撃(ロングレンジエイミング)までは使う必要がない気がする。


その時、海の沖合で海面から潮が噴き出すのが見えた。鯨だろうか?


平野にいた時に探知した距離感からだいたい150m程沖合のかなり近い位置にいることがわかる。他の海中の生物はそんなに遠くにいたら全く探知出来ないのに、どうも生物としての気配が大きすぎるせいで結構な距離が離れた海の中にいてもその存在を感知できたようだ。探知スキルも結構曖昧だと分かる。スキルだけに頼り切るのも良くないかもしれない。



しかし鯨か……、よしっ、せっかくだし狙ってみるか。



失敗しても海中の生物ならここまで襲ってこれないだろうし、距離も挑戦するなら丁度良いくらいの距離だ。遠くの動く的に当てるのには丁度よい練習になるだろう。察知できた気配から結構な巨体がゆっくりと海岸沿いをうごいているのがわかる。だからまあどっかに当たれば成功ってことでいいだろう。せっかくなので最大射程や魔力を込めたらどの位まで矢の威力を強化できるかも知りたい。


現在MPは37、矢にまとわせる属性を考える。水は何か相手の抵抗力が高そうだ、土魔術系の付与は質量増加とかが関係しそうなのでのでやめておこう、距離もあるし質量の小さいイメージで威力の高そうな火か風が良い気がする。


ここまで考えてから気付く、鑑定石板の説明文だと別に矢に付与できる属性は1つとは書いてない。これはぜひ確認して見るべきだ。


今回はそれら三つの属性に対してMPを10ずつ合計30使うことにした。距離も考えて『下級狩猟術Lv10:狙撃(エイミング)』を使ってみることにする。水魔術の時と同じ手順で『下級狩猟術Lv10:狙撃(エイミング)』の項目を開く。



『下級狩猟術Lv10:狙撃(エイミング)

銃か弓系統の武器で対象を狙う際に使用できるスキル。距離や使用する時の状況、武器の品質に狩猟者本人の技術力によって使用に必要な最低SPの値は変わる。狙撃の精度と威力が向上する。SPを追加で使用することにより狙撃の精度と威力のさらなる向上も可能である。



ゆっくり深呼吸をして弓を構える。



「『狙撃(エイミング)』、『起動(セットアップ)』。」



その瞬間魔力とは別の何かが身体から抜けていくのを感じる。意識を巨大な気配の方に向けると、視野のど真ん中にドットサイトのようなものがあらわれ、視野がグッと対象を拡大した。


これで狙えば良いのか?


吸い取られたSPの量は魔力の時の経験からするとだいたい23ぐらいな気がする。せっかくなのであと7程注ぎ込む。視野が更に対象に近づいた。


矢の方は魔力精密操作をイメージしながらまずMPを5程注ぎこむ、とにかく強く正確に細部まで、そして均一に魔力を注ぎこみ、細く鋭い鏃としっかりとしたしかし大きすぎない矢羽をイメージしてみる。その状態で更に火のイメージを矢に注ぎ込む。

使うMPは10、できるだけ高熱を内包し、当たったら一瞬で爆発を起こし燃え上がるイメージだ。次は風、再びMPを10使って矢の周りの気流を鏃を中心に渦巻くイメージを作り出し、感知している巨体に深く打ち込めるようその気流の回転も細く、鋭く、さらに高速回転すイメージで強化する。


よし、2属性の付与も問題なくできる。


あとはMPを更に5使って直線的に弾丸のようにひたすら真っ直ぐ、風を切り裂きあの巨体を貫通するイメージを練り上げる。



ゆっくりと動く巨体は現在砂浜から沖合160mぐらいだった。狙いを定めたまま息をしっかり吸って止めた。身体操作のスキルも意識する、あとはタイミングだった。


その時、再び潮が吹き上がった、潮を噴き出しているあの部分は身体構造的に鼻の穴のはずだ。


ほとんど直感的にその2mぐらい下をドッドサイトで狙う。感知できた巨体のイメージだとそこが急所の可能性が高い気がしたからだ。更にSPを5追加して巨体との間にある海水さえも貫くイメージを追加した。それで何となくうまくいく気がした。



指を離す。



魔力感知のスキルが、弓から何かが高速で発射されたのを教えてくれた。


そんな認識をした瞬間に視界で水柱があがった。巨大な気配のあった辺り、高さは5mは超えていそうだ。そして轟音。

水柱の方はは海中から発生したにもかかわらずその内部は赤く輝いていた。火魔術の付与がうまく行ったようだ。しかし完全にイメージ以上の威力である。普通に放つMP10の火魔術の威力もヤバそうである。


気がつくと普段通りの広い視界に切り替わっていた。水柱があがった海面辺りの海水が紅く染まっている。うむ、何かグロい。思いがけず鯨?を殺してしまったようだ。まあ結構本気で殺しに行っていたような気がするが……。これでスライムなんかは余裕で返り討ちにできそうなことも判明した。ひとまず安心である。


と気を抜きかけたその時、魔力感知が強大な何かがその紅く染まった海面ごと膨れ上がるのを感知した。ヨースケは本能的に目の前の海面に飛び込んだ。ヤバイと感じるより先に体が反応していた。


そして凄まじい衝撃が訪れた。


先ほどの水柱が上がった時よりも、何倍も凄まじい轟音がそのあとに響き渡る。ヨースケは周りの海水ごと吹き飛ばされた。


さあ、次回こそヒロインが再登場できるはず。

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