死の指輪(リング・オブ・タナトス)
~前回のあらすじ~
調子にのってチート武器を使ったら、主人公は手痛い反撃を受けた!
*12/16ステータスのミスを直しました。今後の話の分も順次訂正していくので、ズレが生じていたら多分反映中だと思ってください。全部の訂正がすみ次第このコメントは消します。
上も下もなかった。
凄まじい衝撃と共に体が吹き飛ばされる。十数秒の浮遊間を経て、何か凄まじく硬いものに体が押し付けられ、そのまま背骨を軸に回転しながら何かの上を駆け上がって行った。そのあとはもうよくわからなかった。
それこそ時間にして30秒満たなかったと思う。気がついた時には少し太めの木の幹にくの字なって引っかかっていた。さっきの硬い何かは地面だったとそこで気付く。
生きている。
身体を動かそうとして、ズキリと走った痛みに一瞬体が硬直する。身体はひどく濡れていた。所々すれている手足がひりひりと痛む。身体の節々には直ぐには癒えそうにない鈍痛がある。
だが、生きていた。
調子に乗りすぎた。
さっき走った痛みを恐れているのか身体はまるで動こうとしてくれない。チート武器というオモチャを手に入れて浮かれすぎていた。
ここは地球じゃない。潮を吹いた海にいる巨大な生命体、だから鯨。なんて、安易な思考だろうか。ひょっとしたら鯨だったかもしれない。でもこっちの鯨は凄まじく好戦的かもしれない。強大な魔術を使ってくるかもしれない。あの出血量だ。イタチの最後っ屁のようなものだったかもしれない。あるいは、矢の当たったあの巨大生物はちゃんと死んでいたかもしれない。けれどもしその側に別の巨大な魔物がいて目の前で自分と同じような魔物が殺されたら、脅威を排除するために直ぐ反撃してくるかもしれない。自分の能力では感知できないようなやつが潜んでいる可能性だってもちろん低いだろうけどゼロではない。
そう、今あの沖合で暴れている巨大な海蛇のように……。
何とか海の方に顔を向けた俺の瞳には沖合で怒り狂ってのたうち回るように暴れる巨大な海蛇が映っていた。そいつは別に怪我を追っているようには見えない。察知系の技能も、あれは俺が矢を当てたのもとは違う存在だと伝えてくれている恐らくさっき俺をぶっ飛ばしたのは、こいつの技能か何かだろう。
気がつくと俺は全力で自身の存在を隠蔽していた。またあんな攻撃を撃ち込まれたら、と思うとゾッとする。
俺自身は存在を隠蔽できる。幸運なことにそういう技能を持っている。それも高レベルで。でも同じように隠れているやつを看過する技能は持っていない。その事を正に体をもって自覚させられた。
しばらくはそのまま身を潜め、暴れる海蛇をぼんやりと眺めつづけていた。
と、突然何かがじんわりと身体の中に流れ込んできた。それとほぼ同時に沖合にいた海蛇は突然、ケーンと悲しそうな音色で甲高く一鳴きすると、沖合へとそのまま消えていった。身体に流れ込んでくる何かはまだ止まらない。流れ込み続けるこの謎のうねりに少し恐ろしさを感じる。そして身体が少し淡く光ったと思った瞬間、やけにスッキリした感覚を覚えた。身体が痛くない。
まさかと思い、寝転んだまま『情報開示』してみる。
ヨースケ
Lv(位階):16
種族:猿人族
状態:普通
HP(生命総量):290/290(+290)
MP(魔力総量):290/290(+290)
SP(体力総量):290/290(+290)
ATK(最大筋量):580/290(+290)
DEF(物理耐性):580/290(+290)
MATK(最大魔術行使力):580/290(+290)
MDEF(魔術耐性):580/290(+290)
AGI(敏捷性):580/290(+290)
技能:
異世界言語(Lv1)、全魔術属性開放、魔眼(未開放)〈1/5〉(←NEW)、
生命強化(Lv10)、肉体強化(Lv10)、体力強化(Lv10)、
魔力強化(Lv10)、敏捷強化(Lv10)、
毒耐性(Lv3)、麻痺耐性(Lv3)、混乱耐性(Lv3)、恐怖耐性(Lv3)、
石化耐性(Lv3)、盲目耐性(Lv3)、呪詛耐性(Lv3)、洗脳耐性(Lv3)、
身体操作(Lv10)、魔力操作(Lv10)、魔力精密操作(Lv10)、
気配察知(Lv10)、魔力察知(Lv10)、気配遮断(Lv10)、魔力遮断(Lv10)、
下級刀剣術(Lv10)、下級弓術(Lv10)、下級投擲術(Lv10)、
下級狩猟術(Lv10)、下級忍術(Lv10)、下級暗殺術(Lv10)、
下級無属性魔術(Lv10)、下級火魔術(Lv10)、下級水魔物(Lv10)、
下級風魔術(Lv10)、下級土魔術(Lv10)、下級治癒魔術(Lv10)、
下級魔法陣術(Lv10)、紋章術、刻印術、
下級道具作成(Lv10)、下級魔道具作成(Lv10)
下級隠蔽(Lv10)、中級隠蔽(Lv10)、上級隠蔽(Lv10)、
忍び足、無音移動、擬態、
危険察知(←NEW)、潜伏(←NEW)、GP:30P(←NEW)
おそらくだが矢を打ち込んだ魔物の命が完全に失われたのだろう。巨大海蛇の様子からも、ついさっきまではあの鯨らしき魔物も何とか生きていたのかもしれない。しかし凄まじくレベルが上がっている。まあ、5分間ぐらいずっと魂魄が体に入り続ける感覚があったしな。まあ倒す前の魔物の存在感もかなり大きかったし。
どうもLv上がった瞬間は、いくらかステータスが回復するようだ、すべての値が最大量の半分になっているし、身体の痛みも消えている。しかし単純なステータス数値でLv1の成人男性20人分の能力があるわけか。まあ実際は普通の成人男性がLv1ってことはないだろうからそんな単純比較は眉唾ものだろうけど。ただ少なくともこれで弱いって事はないだろう。後は結構な量のGPも入手している。古白はLvが上がっても手に入らない事があると言っていたが今回はちょうど上がったLv数×2だけ取得している。古白もこの世界のすべてを知ってるわけじゃないみたいだったし、なにか条件があるのかもしれない。
そしてスキルが3つ程増えている。これが古白の言ってた位階が上がる時に稀におきると言っていたやつか……。
しばらく動きたくない気分だったので色々とステータスを検索してみる。その結果わかったのは、どうも危険察知と潜伏に関しては、下級忍術と下級暗殺術にあるスキルがパッシブ化されたようだ。しかしいくら探しても魔眼の情報がわからない。無理やり考えれば、危険察知や潜伏については、Lvが上がる直前に、反射的に海の方に逃げた事や、全力で自身の存在を隠蔽しようとした事が関係しているような気がするが……。しかし魔眼についてはまるで心当たりがない。
そうだ、こういう時の鑑定石板先生だ。しかし荷物は無事なのか……。
ゆっくりと辺りを見渡す。周囲の景色は惨憺たるものだった。おそらくあの巨大海蛇は俺の存在を感知し切れていなかったのだろう。俺が狙撃を行った位置から少し外れた場所の砂浜だった場所が大きく抉れてクレーター状に陥没し、海水が流れ込んでいた。その直線上に生えていた天然の防砂林をなしていた木々たちはなぎ倒され。地面に刻まれた破壊の爪痕は平野部の方まで続いている。防砂林はぶち抜かれた部分から近い木々ほどその外側に向かって斜めに傾いていた。海水と一緒に飛ばされてきたのか何匹かの魚がピチピチと砂浜の上を跳ねていた。海藻類なんかはそこら中の木の枝や地面に張り付いている。
手放してしまっていた弓は割と近くに落ちていた。特にどこか壊れたり傷ついたりしている風には見えない。こいつも後で鑑定して耐久度なんかを確認しとかなければ……。
運良くリュックも防砂林に引っかかっていた。これも破壊の中心からずれていたおかげだろう。上着やローブを追加で詰め込んで荷物がギュウギュウに詰まってくれていたおかげで、特に何か失っているわけではないようだ。中の方も濡れておらず保存食も無事だ。そういう意味でも本当に運が良かった。
もしまた巨大海蛇が戻って来たら怖いので、浜から直接見えない岩陰になっている位置に移動する。荷物からお馴染みの石板を取り出す。
左眼にいたくない程度にそっと指を触れて鑑定石板を発動させる。先生。お願いします!
魔眼(未開放)〈1/5〉
スロット1:魔力眼(未開放)〈5/1000〉
スロット2:空き
スロット3:空き
スロット4:空き
スロット5:空き
使用条件:特定の性質を持つ魂魄を一定量この眼に捧げる事で
状態:普通
詳細情報:
魂魄を捧げる事で、その量と性質により、対応する特殊技能を持った魔眼へと変化する。現在は普通の眼と何ら変わりがない。魂魄の捧げ方は、意識的にも無意識的にも可能である。素材やアイテムも吸わせる事で魂魄のに変換する事ができる。開放可能な特殊性質の最高数はスロット5つ以内であり、溜め込んだ魂魄を開放する事でその性質を任意に破棄する事が可能である。各能力のスロット占有量はその能力の種類や質に依存する。
魔力眼(未解放)は地脈より湧き出すことのあるある種の純粋魂魄を一定量捧げる事で開放可能。万物に存在する魔力の流れやその濃淡を視覚で捉えられるようになる。現在の開放率は〈5/1000〉である。
現在のこの魔眼の空きスロットは4つである。
そうか、地脈か。確かにそれらしい場所に30分ぐらい居たもんな。あそこも鑑定石板先生で、実際どんなものなのか確認したいな。しかしこの魔眼を手に入れるためにはステータス表示の数値から概算してだいたいに20日ぐらいあの場所に滞在しなきゃならんのか。その場合はあのスライムたちも何とかしないといけないな。
しかし純粋魂魄ねえ。日記にあった、スライムたちがポコポコ増えるのもその辺の理由が関係してるのかもしれない。
しかし、自分が状況に油断しり、よく考えずに行動したせいでひどい目にあった。Lv1だったとはいえ、この鎖帷子を着てあのダメージである。直撃して居たらおそらく無事では済まなかっただろう。耐久値を見るのがちょっと怖い。
古白の所で頭を守る装備とかをなぜちゃんと用意しなかったのか。あの時の自分の行動を呪うばかりである。
それにしてもやはり早急にこの世界の情報が必要である。魔物についての一般的な扱いとか、生死にかかわるくせに知らない情報が多すぎるのだ。
実はその解決策になり得る方法が一つだけある。
死の指輪だ。
Lvが上がったおかげでMPが増えて使用可能になったからからだ。黒ずんだ鈍く光るその指輪に再び鑑定石板をかざす。
死の指輪
使用条件:最大MP−50(常時)
品質:並
状態:呪(解呪により破壊される呪い)
耐久値:50/50
効果:死霊の召喚
素材:中級吸魔の指輪、知的生命体の魂魄
詳細情報:
死霊術師の怨念が込められた呪いの指輪。装着者のMPを一定量強制的に吸い上げ、死霊と成り果てた死霊術師を召喚し使役する事ができる。指輪の呪いを解呪すると指輪は壊れる。指輪は自由に脱着可能だが、装着時のMPが一定量以下の場合枯渇状態が持続し死に至る。死を冠するその名の由来はこの性質からだけでなく、封印された死霊の使役に失敗する事が原因である。命令と内容その数の制限の程度は指輪により事なるが、装着者が指輪に奪われている魔力と死霊の位階に相関することが多い。作成方法は中級吸魔の指輪に対して、魂魄定着の儀式を行う事で生み出せる。術式と込められる魔力さえ正しければ、後は儀式の執行人と、生贄とされる生命体の意思が伴っている事が重要。生贄に使用される生命体の魂魄が完全な状態である程儀式の成功率は上がるが、それに伴って必要となる吸魔の指輪の質も高くなる。
うーむ。とりあえずはめてみて幽霊が出てきたらすぐに「俺を害するような行動を禁ずる」とでも命令しておけばいいか。MP50も吸い取られるんだし、そのくらいの命令は守るだろ。あとは封印されている死霊のLvが低い事を祈るしかない。
しかし多分出てくるのってまず間違いなくあの日記のウッカリ女だよな。あいつ本当に役に立つのか?正直嫌な予感しかしないんだが。まあ、鑑定石板の内容を信じれば殺されそうになったらさっさと指輪を外せば大丈夫そうだし、ここでちゃんと情報を手に入れない方が、今後、本当にヤバそう状況に陥りそうだけど……。
よし、はめるぞ。
ゆっくりと、左手の指にはめた。途端に身体から魔力が指輪の方へ抜けていくのがわかる。弓を使った時の状況よりもはるかに大きな量が抜けていくのを感じて、はやまったかもしれないと冷や汗をかく。すぐに外せるように右手を指輪にかけた。
力の流出が止まると、指輪から黒いモヤモヤが湧き出し目の前で数刻前にみた懐かしい黒ローブ姿を形成していった。それはヨースケの身長より頭一つ分小さな身体だったが、目線と高さは同じ位置で、その足は地面からフワフワと浮いて居た。次第にはっきりと整えられていく輪郭。こうやって目を閉じている相手をみると随分な美人だった事が分かる。あの死に様からは想像出来ない厳かな雰囲気が漂っている。美女というのはまことにお得なものである。
輪郭の変化が止まり、目の前の存在の密度が、心持ちはっきりとしたような気がする。魔力探知の技能も目の前の存在を肯定していた。少しだけ向こう側が透けて見えている。と、
「クックック……、我が古の封印を解き放し者よ。今はどのような時代か我に教えてくれぬか?いったい我が死から幾星霜の時が流れたか……。おっと、我を恐れる必要はないぞ。我を崇めよ!さすればそなたに太古の叡智を授けようではないか!」
と、カッという感じで目を見開きこちらを見てきた。どことなく嬉しそうな雰囲気が漂っている。
イラっときた。
なので現実を教えてやる事にした。
「えーと、だいたい3時間くらいかな。」
この幽霊はハズレだ。間違いない。
なろう表示で読みやすい文章ってどんなものなんだろうと試行錯誤しています。1~10話は今後もちょくちょく改行させたり、文章を少し変えたりするつもりです。あまりにも意味不明な部分が目に付くようであれば、活動報告の方にかきこんでいただけるとたすかります。




