プロローグ
連載再開となります~♪
長らくお待たせしてしまいすみませんでした。
大祭でおきた雑鬼や祟り神の暴走が終結したから早くも一月が経った。
神薙は蓮炎国皇帝からの召喚を受けて一人例の隠し部屋へと向かっていた。
────そこで、皇帝からとんでもないことを言われるとは露にも思わずに………。
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「────申し訳ありませんが陛下。今、なんと仰られましたか?」
膝を突き、恭順の礼を示していた神薙から冷め切った眼差しと声音が漏れた。口が、僅かながらも笑みの形をしているのでその凍える瞳は対照的だった。
「聞こえなかったのか? 貴殿の下に身を寄せている客人神の娘を我が後宮に召し上げると言ったのだ。すぐに準備せよ」
………何をふざけたことを。
「お断りします」
「………なんだと? 私の命令が聞けないというのか」
まさか拒絶するとは思わなかったのであろう。帝は神薙を睨み付けた。
しかし神薙はその視線を真っ向から受け止めた。
「当然でしょう? 寝言は寝てから言うものですよ」
「───貴様!!」
明らかな侮蔑の言葉にいきり立つも神薙は口元からも笑みを消して淡々と言った。
「貴様? それは私に言っているのですか? かつて正式に唐棣を纏うことを許された私と違って許されていない貴方が? ────身の程を知れ」
神薙から吹き出す霊気にさしもの帝も押し黙った。
「大方、貴方の先祖と私が犯した……彼の喪われし一族と同じように蓮智那炎比売命をその身に降ろせる彼女の血を取り入れることで犯した罪を消そうとしたのでしょうが………馬鹿げたことを考える。彼女は喪われた───朱華一族の者ではありません。たとえ彼女の血を取り込んだとて罪は消えない」
憎々しげに神薙を睨む帝の浅薄さを嘲笑う。
「第一取り込んだとてその『力』が次代に継がれるとは限りませんよ? 相手が蓮炎国皇帝なら尚更です。……女神が認めない。貴方方の一族は呪われているのだから」
「……ッ、!! その呪詛を消すためにもあの客人神の血を求めるのだ! このっ、忌々しき女神の──!」
「私の話を聞いていないのですか? 彼女は朱華一族の者では無い。我々が一人残らず、滅ぼした。彼女の血に解呪の力はありませんよ。そもそも………都合良く燈也の存在を忘れてませんか? ああ──、それとも燈也ごと抱き入れる腹積もりでしたか?」
「…………」
再び帝が押し黙る様を見て己の考えが当たっていることを確信する。
「呆れましたね……。本当にそんなことを企んでいたのですか? 万が一、いえ………億万が一彼女が後宮入りを受け入れたとしても彼女との子を帝位にどうやってつける気ですか? 貴方は既に太政大臣の孫娘を皇后に、左大臣の大姫を中宮に。七殿五舎には他にも女御や更衣が居るのですよ? そのお歴方をどうやって説得するのです」
「………別に、その客人神の子を帝位につける必要は……」
神薙の瞳に険が宿った。
「………つける積もりが無いのなら尚更その血を入れても意味が無いでしょう。東宮以外の御子はすべて最終的には臣下に降るのですから……臣下の血筋になってしまうなら現状とさして変わりませんよ」
神薙の正論に返す言葉がないのだろう。反論はなかった。
「諦めなさい。下手なことをすれば今度こそこの国は滅びますよ。女神と────鬼の手によって」
むしろ縁を後宮入りなぞさせれば燈也が怒り狂い嬉々として蓮炎国を滅ぼしにかかるだろう。あの鬼とまともにやり合える者はこの国にはいない。
「お分かりいただけたか。話がそれだけでしたら私は職務が有りますのでこの場を辞させて頂きます。───では」
「………」
立ち上がり、そのまま部屋を出て行く神薙を呼び止める声はなかった。
パタンと扉が閉まり、通路を歩く神薙は深く嘆息した。
(あの帝がそう易々と白水殿を諦めるとは思えない、面倒な……つくづく欲深き一族だ)
しかし
「………その一族の口車にまんまと乗って貴女を裏切った私が言えることではありませんか」
深い悔恨が胸に過ぎ去るも今は感傷に浸っている時では無い。
はてさて──私の言葉を聞いて押し留まってくれればよいが………そう簡単にはいかないだろう。
どうか馬鹿なことは考えるなと、隠し部屋にいる青年に向かって神薙は祈った。
────結局、儚い願望だったと。後で神薙は思い知ることとなる。
隠し部屋の奥で
「確かに貴様の言う通りだ神薙……ならば────
『客人神の産んだ子が、皇后の産んだ子と同じ』
────であれば問題なかろう」
と帝が呟いた声を聞く者は無かった……。
次回から大体三千~四千文字の間ぐらいで書いていこうと思っています。
そして神薙の心労は続く(*^▽^*)




