↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
71/94

フェブル、発見する。

6月1日 更新1回目

「……なるほど」


 フェブルの話を聞きえた司教は、戸惑うように口を開いた。


「信じられないよな……」

「……ええ」


 司教は言葉と共に頷く。

 そりゃそうだろうな。とフェブル自身も思う。

 人が唐突に消えてしまうなんて、普通ならありえない。

 だが、


「しかし、あなたが嘘を言っているようにも見えません」

「信じてくれるのか?」


 再び司教は頷く。


「姿が消えた――というのは、決して不可能な事象ではありません」

「どういうことだ?」

「姿を消す魔術を使っているという可能性もあります」

「そんなことが出来る――」


 言いかけて、フェブルは思い出した。

 少し前にも似たような体験をしたことがあったことを。

 その体験というのは、おっさん――アンクルを、フェブルが貧民街で襲った時にこと。 目前にいたおっさんの姿は一瞬で消え、気付けばククルとルククは倒されていた。 

 もし、リリスを連れた男がおっさんと同じような力が使えるのだとしたら。


(……ならあの男は今も……!?)


 フェブルは周囲を探る。

 集中して五感を研ぎ澄ませた。

 視覚だけではなく音を聞き、匂いを感じ取る。


「安心してください、フェブル君。

 この場に邪悪な気配は感じません」

「……そうか」


 穏やかな笑みを浮かべる司教。

 だが、フェブルは警戒を続けた。

 すると、


「うん……?」


 微かだが、音が聞こえた気がした。


「何か聞こえたような……?」


 フェブルはもう一度耳をすます。

 すると、


「何か……下から……?」


 フェブルは床を見た。


「下……?

 地下という意味ですか?

 ……私には何も……?」


 人間である司教にはわからないようだ。

 だが、獣人であるフェブルには間違いなく音が聞こえた。


「司教さん、この教会に地下があるのか?」

「……地下聖堂ということですか?

 アーリアラ教団の教会には、確かにそういったものも存在しています。

 ただ、私がここの管理を任されてからは一度もそのような報告は……」


 司教は戸惑いながらも、地下の存在を否定した。

 フェブルはさらに感覚を研ぎ澄ませる。

 すると、空気が抜けるような音が聞こえた。


「……この音は……?」


 フェブルは音の方に歩み寄る。

 礼拝堂の奥――祭壇に近付くにつれて、微かにだが音がはっきりと聞こえた。


「……この下だ。

 間違いねえ」

「祭壇の下……?」

「なあ司教さん。

 これを動かすことは出来るか?」


 そんなことを尋ねるフェブル。


「まさか……とは思いますが……」


 すると、訝しそうな表情を見せながら司教は持っていた錫杖で床を突いた。

 そして、


「神よ――我は祈る。

 万能たるその力を持って、浄化の光よ、邪悪を払え――」


 礼拝堂の中が温かく優しい光に包まれていく。


「これは……?」

「対抗魔術(ディスペルマジック)を使いました。

 もし」

「でぃすぺる……?」

「対象の魔術を打ち消す効果があります」

「そんな魔術もあるのか……」


 フェブルは思わず感心してしまう。

 魔術は一般的には学問として知れ渡っているが、貧民街では魔術を使える者は少ない。

 金もなく学校にもまともに通うことが出来ないからだ。


「……さて、もしここに何かがあるのなら――」


 目を凝らすように、司教は祭壇を見つめる。

 司教の魔術による、神々しいほどの輝きは消えた。

 直後――。


「……なっ!?」

「これは……」


 フェブルの視界からは祭壇が消えていた。

 そして、変わりに目に飛び込んで来たのは、地下へと繋がる階段だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作公開しました。
『フライパン無双~とある呪いを解く為に、冒険者になりました~』
もしよろしければ、ご一読ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。