おっさん、一撃必殺する。
5月20日 更新1回目
『ふふん!
勇者様、懲らしめちゃってください!』
なぜこの妖精はこんなやる気なのか。
そう思いつつも、おっさんは相手を見据えた。
「おらあああっ!」
「死にやがれっ!」
左右から挟む込むように、二人の冒険者が襲い掛かって来た。
カティはこう思っていた。
勇者様は華麗に聖剣を振り、この冒険者たちを撃退してくれるだろうと。
しかし、何故かおっさんは両腕を広げて、
「ふんっ!」
「おごっ!?」「ぶぼっ!?」
彼の太い腕が男たちの喉元にダイレクトヒット。
おっさんは、ラリアットを喰らわせたのだ。
その衝撃に男たちの足は浮かび上がり、宙を回転してからバターーーーンと地面に落下した。
「……」
「……」
日々の伐採で鍛え上げた、おっさんの身体から繰り出されるラリアットは、とんでもない威力だったのか。
屈強な冒険者たちは一撃で気絶していた。
そして――たらたらたったた~!
おっさんは久しぶりにレベルアップしていた。
※
〇名前 アンクル
種族 人間
職業 樵勇者
年齢 35歳
職業レベル 20 → 21
体力 170 → 176
魔力 98 → 105
力 140 → 147
魔攻 105 → 110
魔防 98 → 103
速さ 88 → 95
運 62 → 68
・魔法
ムーブ
チャージ
キュア
ターゲット
タイムアクセル
タイムフォール
グラビティ
・技能
〇天上天下最強の親バカ
娘を想う気持ちに応じて能力向上。
このスキルが発動中、能力限界を突破できる。
※
おっさんは自分のステータスを確認した。
『おお、レベルが上がった――って、あれ?
カティ、なんで俺のレベルがこんなに上がってるんだ?』
しかも、おっさんが見覚えのない魔法や技能がステータスに表示されている。
『え……って、えええええええええええっ!?
あれ、どうしてですか?
前にステータスを見た時は、レベル4くらいだったような……?
まさか、このレベルの上昇は先程のラリアットと何か関係が……?』
そんなわけあるか。
やはりカティはちょっとアホな子のようだ。
ちなみにこの大量レベルアップは、魔王軍幹部のケネブを倒した時のものだ。
おっさんもカティも、そんなことは全く気付いていない。
知らないうちに倒されているあたり、ケネブは本当に可哀想な魔人だった。
「ですが、何にしてもレベルアップ、おめでとうございます!
レベルが上がって悪いことはないです!』
楽天的なカティ。
この妖精にとってはポジティブな案件なので、悩むことをやめたようだ。
『まぁ……そう、か……』
『それはそうと勇者様……せめてもう少し、勇者らしく戦ってください』
『勇者らしくってなんだ?』
『物理で殴るみたいなのじゃなくて、魔法を使ってカッコよくとかです!』
カティの勇者のイメージは貧相だった。
そもそもおっさんは、攻撃魔法を覚えていない。
だから、カティの言うような戦い方はそもそも無理だった。
『そんなことより、とりあえずこいつらを拘束しよう』
『あ、それならお任せください!
光輪よ――拘束せよ!』
何やらそれっぽい呪文をカティが唱えると。
気絶する冒険者たちの四肢を光の輪が拘束した。
『お~、やるなカティ』
『ふふ~ん!
勇者様、見直しましたか?
私、これでも最上級妖精なんですからね!』
自慢げなカティだが。
おっさんはそんなことすっかり忘れていた。
ぶっちゃけ彼にとっては、そんなことどうでも良かった。
『勇者様、今どうでもいいとか思いましたね?』
変に鋭いカティが、むっとして頬をぷっくり膨らませていた。
「あ、アンクルさん!」
「ししょ~う!」
少し離れた場所から、ミーアとリルムの声が聞こえた。
どうやら彼女たちは、おっさんを追いかけてきたようだ。
「お~、丁度よかった。
今、拘束したところだぞ」
駆け寄って来た二人の視線が、地面に倒れて拘束されている男たちに向く。
「こ、これは……アンクルさんが……?」
まるで幻覚でも見ているかのように、ミーアは男たちの姿を凝視していた。
「ああ……まぁ、そうだな」
拘束の魔法は自分ではないが。
カティのことが見えていないミーアに、それを言っても仕方ないだろう。
「ほらね、おかあさん。
ししょうって、すごいでしょ!」
リルムは嬉しそうに母に語り掛けた。
おっさんの活躍が嬉しいのかもしれない。
「そ、そうね……。
アンクルさん、本当に魔法が使えるんですね……」
「それほど沢山使えるわけじゃないがな」
唖然とするミーアに対して、おっさんは平然と答えた。
そしておっさんは、
「とりあえず、こいつらを叩き起こすか」
しゃがみ込み、男たちを揺さぶる。
「おい、起きろ」
「……う~ん……?」
「ゆ、ゆれてる……?」
寝惚けた声を上げる冒険者たち。
『勇者様、ここはもう一発どうですか?』
『お前、ほんと悪人には容赦ないな!』
おっさんを真似て腕を広げ、カティは空中でくるくると回った。
さっき勇者らしくとか言っていたのはなんだったのか。
実は、おっさんがラリアットを喰らわせて悪人を裁く姿を見て、カティはスカッとしていたのかもしれない。
「……う、うん……ここは……?」
「あれ、オレたちは……?」
「おお、気付いたか?」
目を覚ました男たちが、ぼ~っとした様子でおっさんの顔を見た。
そして、
「うおっ!?」
「な、なんだてめぇ!?」
身体をビクッと震わして、目を見開いた。
そんなにびっくりしなくてもいいのに。
おっさんは、自分の顔はそれほど怖いだろうか? と内心ちょっとしょんぼりした。
「く、くそっ!
拘束されて、動けねぇ……!」
「な、なんだこりゃ!?
縄じゃねえぞ、ま、魔術か何かか?」
正確には魔術ではなく、カティの魔法なのだが。
そもそも男たちにとって、魔術と魔法の区別などなかった。
「質問に答えてくれたら、拘束は解いてやる」
おっさんは真顔のまま質問を続ける。
「お前たちの依頼主は誰だ?
その名前は?」
「……さぁてな」
「知るかよ」
素直に答えるわけがない。
そんなのはおっさんもわかりきっていた。
だから、
「ミーア、何かわかったか」
「はい。
依頼主の相手がわかりました」
どうやら、ミーアはしっかりと技能を使用してくれていたようだ。
「はっ、なに言ってんだあんた?」
「オレたちに依頼主な――」
嘲笑うような男たちが口を開いた直後、
「その方の名前は――」
ミーアがある者の名を口にした。




