休日の終わり
5月12日 更新1回目
おっさんが疑問に思っていると。
『もしかしたら、どこかに隠されたダンジョンがあって。
魔法道具の類が隠されていたりもあるかもしれません』
カティがこんなことを言った。
『そんなもの、俺の知る限りでは聞いたことも見たこともないぞ』
『だから、もしかしたらの話です。
それが何なのかは……まだわかりませんけど……』
やはり、現状の手掛かりはなしか。
『ですが勇者様やリリスちゃんとと記憶を共有しているというのは、一つ大きな手掛かりだと思います!』
『だが、まだ何もわからないんじゃなぁ……』
『何もわからないからの、何かわかったは大きな進展です!』
『それは……確かにな』
少しでも手掛かりを見つけたことで。
おっさんの気持ちも少し軽くなっていた。
『何もわからないってのは、不安なものだからな……』
おっさんの心には、常にそんな不安が付いて回っている。
ソニアとまた出会えたことは堪らなく嬉しい。
でも――明日目が覚めたら、ソニアは消えてしまうんじゃないか?
おっさんは、そんなことを考えてしまう。
ソニアが消えてしまったら、一番悲しむのはリリスだ。
おっさんの娘は、ただ純粋に、母が帰って来たてくれたと思っているのだ。
絶対に娘を悲しませるような事態は避けたいからこそ、今は少しでも多くの手掛かりが欲しかった。
原因さえわかれば、不安に怯える必要もなくなるのだから。
「アンクル、そんな難しい顔をしないで」
気付けば黙り悩むおっさん。
そんな彼を、ソニアは心配そうに窺っていた。
「……ああ、すまん。
そんな難しい顔をしていたか?」
「してたわよ。
リリスが見たら泣きだしちゃわ」
「なんだと……!?」
それはダメだ。
もしリリスに、顔が怖いなんて言われたら。
きっとおっさんは立ち直れないだろう。
「こ~んなに風に、眉に皺寄せちゃって」
おっさんの形相を真似ようと、眉根を寄せるソニア。
「ははっ、確かにそんな顔をしていたねぇ」
「アンクルさん、あまり思いつめないでね。
正直、私たちもちょっと混乱してるけど。
出来ることがあるなら協力するから」
道具屋と酒場のダブル店主は、優しくおっさんを気遣ってくれた。
なんとも頼もしい言葉。
「助かる。
もしもの時はよろしく頼む」
おっさんの言葉に、二人は力強く頷いてくれた。
「アンクル……私のことで悩ませちゃってるのよね。
でも、私は大丈夫だから!
こ~んなに元気なんだもん!」
ソニアが、力こぶでも出すみたいに細腕を曲げた。
どうやら自分は大丈夫だとアピールしているつもりのようだ。
既にステータスで確認しているが、ソニアは間違いなく健康体だった。
彼女を死に陥れた病気の痕跡も全くない。
ステータスという形で目に見えるからこそ、現状ソニアの身体に問題がないことが、おっさんにはわかっていた。
「だから――私の為だからって決して無理はしないでね。
あなたは私たちの為なら、どんなことだって頑張れちゃうけど……。
だからこそ、不安なことだってあるんだから」
ソニアの生前は、おっさんは休日すら取らず仕事ばかりしていた時期があった。
妻と娘を支える為に。
そして、少しでもいい暮らしをさせてあげられるようと働きづめだった。
そんな彼の姿を見ているからこそ、ソニアは無茶をしないか心配のようだ。
「わかってる。
だけど、ソニアも元気だからって無茶はしないでくれよ」
「ええ!」
おっさんとソニアは笑みを交わす。
「それとね、アンクル。
リリスが一緒にいる時は、難しい顔はなしよ。
ちゃんと笑顔でいましょうね!
家族が一緒の時は、みんなで楽しく過ごすものなんだから!」
「勿論だ。
そもそも俺は、リリスを見ているだけで、可愛すぎて自然と頬が緩んでしまうくらいだ」
「あら奇遇ねアンクル。
私も同じよ?」
「まぁ、親であるなら当然のことだな」
「そうね、当然よね!」
こんな感じで親馬鹿夫婦は、娘への溺愛っぷりを惜しげもなく口にするのだった。
「変わらず仲がいいようで何よりだ。
なんも変わってないな、あんたたちは。
なんだか安心したよ」
「そうですね。
羨ましいくらい」
ミランダとララーナは呆れつつも、二人を見守っていた。
「……さて、ララーナ。
あたしたちはそろそろ帰るとしようかね」
「ええ、そうしましょうか」
そう言って、二人が席を立つ。
「泊まっていけばいいじゃない?」
「ありがとう、ソニアさん。
でも、明日の店の準備もあるから」
「だね。
うちも仕込みがあるんだ。
また今度、ゆっくり話そう」
仕事は違えど、二人とも店の代表だ。
やらなければならない仕事は多いのだろう。
「そう……。
わかったわ!
きっとまた遊びに来てね!」
「ああ。
さて、それじゃあサラリナを起こすとするか。
うちの馬鹿娘は一度寝ると中々起きなくてねぇ……」
この後、リリスと共にぐっすりと眠るサラリナを起こすと。
ミランダたち三人は家を出た。
そして、長いようで短いおっさんたちの休日が、終わりを迎えたのだった。
感想返し遅れておりすみません。
全て読ませていただいております!




