ピースと兄姉2
翌日、作った魔液の在庫はまだまだあるため何に使おうか悩みながら王宮の庭を散歩していた。
最悪どっかに売りに出してもいいのだが、なにか使い道がないかと私は思案しながら歩いていたら後ろから元気な声が聞こえてきた。
「ピース~居た居た!探したわよぉ~」
「ラルムねぇちゃん…どしたの?」
「ウルメリア兄さんとこで付与魔法を試したんでしょ?私のでも試してよぉ~」
「いいけど武器ある?」
「もっちろーん!うちのメイドがウルメリア兄さんのメイドから色々聞きだしてるからね~部屋に輸送済みよ~」
そんな訳で昨日の今日で付与魔術用の部屋に戻ってきた私は丸一日掛けて100本近くの付与を施し終えた。
「キャー!ピースすごーい!」
「なんて書いてあるのか分からないけど重要そうなことが書いてありそー!」
「フレーフレ!ピース!がんばれがんばれピース!」
だのと横からラルムねぇちゃんの熱烈応援を受けた私は今回も剣を50本ほどおしゃかにした。
そういえば昨日は魔液が少なくなったら小瓶を自分で取り換えることもなかったし、気が付けば手の届くところに剣があったから取りに行くこともなかった。
「サラって気づかいのできる優秀なメイドさんだったんだな~」
「そうなの?」
「うん」
「へー。ま、私も気づかいでは負けてないけどね!」
「ソダネー」
「あ、そうだ。私のレイピアにも付与魔術ってできるの?」
「できるけどレイピアはあまり書き込める面積がないからそっちの剣より情報量少なくなっちゃうよ?」
「大丈夫大丈夫!元々この剣は強度増加を三重に施してある魔剣だから」
「そしたら鋭利増加を二重くらいは行けそうかな?」
「よろしく~」
「折れても怒んないでよ?」
「もちろんよぉ~」
そんなやり取りをしながらも私はレイピアへの付与を終わらせた。
謹慎生活も4日目となった。
長くない?
さすがに魔液は昨日で使い切ったので暇である。
そんな私は部屋に置いてある金貨袋を1つ持ち出し、普段は寄り付かないサロンに足を運んだ。
ここは戦場である。
勝利条件は至って簡単『自分の情報をいかに消費することなく相手に情報を使わせるか』である。
お遊び程度にチップを用いた賭けも行われているがそんなはした金よりも雑談のように交わされる情報戦のほうがメインだ。
そんな場所に久々に足を踏み入れた私だがそこで12番目の兄バッカロールお兄様に出くわした。
「お、ピースじゃねーか。お前がこんなとこ来るなんて珍しいな?」
「暇でして…」
「あーそういやそうだったな?楽しんでけよ~」
なんてやり取りをしながら私はポーカーブースの適当な6人テーブルに座る。
王女が来て席を空けない選択肢はなかったようで他のやつらからの顔には普段の社交界では到底叶わない幸運を噛みしめているのが手に取るようにわかる。
「知っている方もおられるでしょうが一応ご挨拶を。ピース=メッセン=キャロル。第十三王女ですわ。以後お見知りおきを」
「私はグラン伯爵、こっちは息子のサイロスにございます。一応男爵ですが、まだまだこれからですのでどうぞお手柔らかに」
「お初にお目にかかります。ピース様」
「初めましてね?よろしく。グラン伯爵はこの前の社交界以来かしら?」
「一介の伯爵風情のことまでご記憶なさっているとは。ありがたいですな」
「他の方は?」
「わ、私の名前はパ、パットン男爵と申します。ピ、ピース様と面識を持てましたこの幸運に感謝いたします!」
「あらあら。そんなに緊張なされなくてもよろしくてよ?ここは社交界ではないのですから楽しくやりましょう?」
「は、はい!」
(ごめんこの卓が解散したら君のこと覚えてる自信ないや。それにここは戦場だよ?自分の弱みを見せてもいいことないよ?)
「お隣は?」
「マリー=ガッテムと申します。以前夫のロイド=ガッテムがピース様のことを話しておられました。様々なことにご興味を持たれる素晴らしい方だと。」
「あー法務大臣補佐さんの奥さんか。そんなことを言われるとうれしくてくすぐったいですわね?」
「これからも法律のことでご質問がございましたらぜひ夫に。飛んでいきますわよ?」
「そうするわ」
この奥さんできる。
自分の夫と私がすでに知り合いかつ私が顔と役職を記憶していることを手際よく周りにアピールしたが、どんな要件で既知になったかは秘匿した。
こういう人が社交界では生き残るのだ。
見習っていきたいね~。
「私は騎士団所属のフランミル=ガットンと申します。第3騎士団にて師団長を任させております。護衛任務でご一緒させていただく際は何なりとお申し付けくださいませ」
「その時はよろしくね~」
そうこの卓を選んだ理由は貴族と平民…といっても有力商会の商会長とか騎士団である程度の地位がないとだめだが…が混ざっていたからだ。
そっちのほうが色んな情報を入手できる。
「では最後に。私はチャーリー=ビクティム。ビクティム商会の商会長をしております。ピース様は覚えておられないかもしれませんが五歳のお誕生日の際のドレスは当商会が担当させていただきました。そこから王室御用達商会として恥じぬ商売をしております」
「そうなんだ~またの機会があったらよろしくね~」
「はい。なんなりと」
そんな感じに自己紹介をしながらも数ゲームが終わっていた。
ポーカー…ルールとしてはテキサスホールデムが近いだろうか?…は展開が非常に速いゲームだ。
だいたい5分で1ゲーム、一時間に12ゲームほど回る。
適当に雑談をしながら面白そうな情報がないか周りにも耳を傾けているがめぼしい情報は聞こえてこなかった。
しかたないが今日はゲームを楽しむとしよう。
グラン伯爵は6人の中で最も己の幸運に感謝している自信があった。
バッカロール殿下との同卓争いに負け、今日一日はこんなところでクズ情報を漁る日になるかと思っていたがまさか他の場所でもめったにお話どころかお姿をお見掛けすることすら困難なピース様と同卓出来るとは
しかもルールはポーカーだ。雑談やゲームが動くと必然と会話が生まれる。なぜこの卓を選ばれたかは不明だがこれはチャンスだ
ピース王女殿下の現在ご興味のあることやお探しになっているものが知れれば勝ちは確定だ。
多少こちらの情報を周りの者にくれてやろうが私の勝ちは揺るがん。
同卓者も息子とカモの男爵、法務大臣補佐婦人は強敵だが既にピース様といい関係を築いているようだからそうがっついてはこないだろう。
騎士と商人なんぞおそるるに足らんわ!
「そういえば冒険者ギルドの者から聞いたのですが、数日前に王都近郊の森から大量の魔物の死体が発見されたようで。残念ながら森の動物たちに食い荒らされた後で損傷が激しく傷跡の特定は困難でしたが、あれほど大量の魔物を倒したとなると、【白銀】の再来かと現在冒険者たちは沸き立っているようです」
「そうなんだ~それってどのへん?あ、レイズ1500」
「上級者用の森の中間の手前側といってお分かりになられますでしょうか?コールで」
「地図はだいたい把握してるから問題ないわ」
「魔核は残されたままでしたのでとても楽に稼げたと見つけた者たちは歓喜しておりましたな」
「その人たちラッキーだったね~」
「しかしギルドのほうは魔核の値崩れがひどく対応に追われていると聞きました」
「そっか~まぁでもそのうち飽和は収まって買取価格も売値も元に戻るでしょ?」
「左様でしょうな。ベット5000」
「コール」
「おや負けてしまいました。ブラフかと思っていたのですが」
「私はそんな簡単に捕えられないわよ?」
「これはお強い」
騎士団の単位
総軍(複数の騎士集団が束ねられているもの)
騎士集団(2個以上の騎士団を束ねたもの)
騎士団(複数個の師団によって構成される。魔獣の大規模討伐などではこの舞台単位が派遣される)
師団(師団は主たる作戦単位であるとともに、地域的または期間的に独立して一正面の作戦を遂行する能力を保有する最小の戦略単位。護衛などに使われる規模)
団(2個以上の大隊から構成されている)
大隊(賊の討伐に使われる規模)
中隊(偵察部隊や斥候に用いられる規模)
小隊(警備兵がこのくらいの規模)
という感じです。一部現実の単位とは規模が異なりますのでご了承ください。




