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「クソッ……!」
バリケードタウン上空。ユウレンは両眼から放つ破壊光線で降ってくるジャノメを次々と消し飛ばしていく。
しかし消し飛ばした数以上に、撃ち漏らした数が多くなってしまっている。それほどまでに大量に降ってきているのだ。しかも止まる様子がないときている。
出どころを見つけ、叩き潰したいところだが、そうしてしまえば今以上に大量のジャノメが振り注ぐことになる。
今は攻撃に集中する他ない……そう思っていたところで、腰につけていたトランシーバーからオウイチロウの声が聞こえてくる。
『ユウレン、降ってくるジャノメはもう放っておいて構わん』
「どうして!? 僕がやめたら大量のジャノメが地上に……!!」
ユウレンは破壊光線を放ちながら、オウイチロウの言葉に応える。
『大丈夫、こっちで何とかできる算段を整えられた……だからお前は、このジャノメの発生源を探してブッ潰すんだ』
「……わかった」
『任せた』
そこでプツリと通信が途切れる。
ユウレンはオウイチロウを全幅とまではいかないが信頼し、信用している。
その彼が大丈夫というのならば信じるまで。
不安がないといえば嘘になるが、もしもの時は自分が何とかしてみせるつもりでいる。
だから従う。問題ないと思ったから。
ユウレンは破壊光線を止めて、さらに上空を見てみる。
空は分厚い黒雲に覆われて、視界を阻まれてしまっている……が、ユウレン・シェーン……ピースガイには関係がない。
透視能力。
ピースガイが使うスーパーパワーの一つ。鉛以外の全てを見透かし、様々な事件を解決に導いた。この透視能力を使えば、雲などは障害物ですらない。
黒雲を見通し、ユウレンはさらに先を見る。
「あれは……!?」
約500メートル先に人影と、漏斗のような見た目の、10メートルほどの機械を一つ見つけた。
しかもその機械からジャノメがウジャウジャと発生している。
アレこそが発生源だと断定したユウレンが一直線にその場に飛ぶ。まるで弾丸のような速さだった。
「これは……機械か!」
空に浮かぶ漏斗状の機械。開いている穴からポンポンと、玩具のようにジャノメが飛び出してくる。
見渡しても機械はこの一個だけ。10メートルの大きさと、吐き出されたであろう内容量が釣り合っていない。
どういう仕組みなのか……ユウレンには皆目見当がつかない。
しかし機械ならば破壊可能。ユウレンは両眼に破壊エネルギーを溜め始める。
「やぁピースガイ、久しぶりだね……あぁ、とても活躍してるようで何よりだよ」
「……ッ!?」
声が聞こえたのは背後。ユウレンは驚き、すぐに振り向いた。
そこには緑髪の見知った顔の女が浮いていた。
彼女が背中に背負っているランドセルのような形のジェットパック。それを用いて飛行しているのだ。
「この私を……あぁピースガイ、君は覚えていてくれくれてるかな?」
「テクノストーム、久しぶりだね……!」
ベリーショートの緑髪に右眼の下にあるホクロがチャームポイントだと言っていた、目の前の端正な顔立ちをした美女は、迷彩柄の戦闘服の上に防弾チョッキを装備している。
ユウレンは昔を思い出す。
「あぁ憶えていてくれて、嬉しい限りだよピースガイ……しかし最後に会った時よりもずっと元気そうで、使命感に満ち溢れているね、何か良いことでもあったのかな?」
ピースガイとして動けなかったあの日のこと。
臆病者として動いてしまったあの日のこと。
苦い過去を思い出させられたユウレンは、話を打ち切り本題に入ることにした。
「……テクノストーム、この機械を操っているのは君だね?」
「あぁそうだ私だ……ジャノメの雨はいかがかな?」
ニヤリと笑うテクノストームを、ユウレンは睨みつける。
「今すぐ止めろ」
「断る、こっちにも事情ってもんがあるんだ」
「そうか……なら話し合いは無駄だね」
――ブゥン!!
テクノストームが瞬きをする間に、一気に漏斗型の機械との距離を詰め、右拳を構える。
このまま殴り壊す……そんなつもりのユウレンは、硬く握りしめた右拳を放つ。
――ガキィン!!
しかしその右拳は弾かれた。
「なにッ!?」
初めての経験ではない……しかし滅多にない。
ピースガイとして、自分の拳で貫けない物質など、そうそうあってほしくなかった。
「あぁ私だって馬鹿じゃないんだ、ピースガイの対策をしていない訳がないだろう……そのマシーンは余すことなくアダヴィニウムで構成されている」
勝ち誇ったように、テクノストームは言い放った。特に焦りもせず、近寄りもしない。圧倒的な自信の表れだ。
「ピースガイ……いくら君でも、破壊不可能だよ」
「ならこれはどうかな」
拳が無駄だとしても、まだ攻撃手段は残っている……ユウレンは両眼に破壊エネルギーを込め、一気に解き放つ。
――ボオオオオオォォォォォォォッ!!!
1メートルも離れていない、まさに至近距離。
破壊光線は漏斗型機械の表面を焦がし……ただけにとどまった。
「なんだとっ……!?」
「あぁだからアダヴィニウム製だと言ったろうに、ピースガイの能力は私もよく知っている……限界もちゃんと把握している訳だ、アダヴィニウムを君は破壊できないだろう?」
テクノストームは余裕綽々で眺めているだけ。
喋るだけで何も動こうとしない。それだけこの機械の防御性能に自信があるのだ。
「……そうか」
一刻も早く、ジャノメの放出を止めなければならない。オウイチロウにそう指示されたというのもあるが、彼自身にもバリケードタウンを守りたいという意思が生まれていた。
「だったら、君の知っているピースガイの限界を超えるだけだ」
地上は何とかなるとオウイチロウは言っていたが、これ以上ジャノメが増えないに越したことはない。
ユウレンは深く息を吸い、両の拳を固める。
そして
――ガキィン!
打つ。
――ガキィン!
打つ。
――ガキィンガキィガキィガキィガキィガキィガキィガキィガキィガキィガキィン!!!!
段々と速度を上げながら、連続で打つ。
殴っている間に、拳の速さは音速に達した。
――ガキガキガキドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!
殴る音が変わって聞こえるほどの速さと重さで殴り続ける。一発一発に魂を込めて、壊れるまで殴るつもりでいる。
「あぁおいおいおい何てことだピースガイ……昔よりもパワーアップしているのか?」
「僕はピースガイだ、みんなのためならアダヴィニウムくらい破壊してみせるよ」
素人感丸出しのテレフォンパンチ。しかし重さと速さと硬さが最高の状態で掛け合わされれば、その威力は隕石の着弾に匹敵するだろう。
――ドゴァ!!!!!
最後の一撃の衝撃で、機械全体にヒビが走った。そして数秒と経たずに
――バリィィィィン!!
漏斗型機械は粉々に砕け散った。
外装と中の部品が飛び散り、落ちていく。
「なるほど、あぁこれは驚きだ……エムナプトン星人のパンチ力はアダヴィニウムすら砕くのか」
「次は君だテクノストーム……大人しく一緒に来い、手荒な扱いはしないと約束する」
「あぁいや……こっちにも事情があると言ったろう? 君たちに捕まる訳にはいかないんだ」
ピースガイは音速を越えて飛行するというのは、人類なら誰もが知っている。
「僕から逃げられるとでも?」
テクノストームの装備は、背中にあるジェットパックだけ。彼女がこの状況でどう逃げるのか、ユウレンには想像がつかなかった。
「できるさ、今の私には気高きジャシン様がついていてくださるのだから」
テクノストームがそう答えた瞬間、どこからともなく雷の光が轟いた。雷を発生させるような黒雲は真下にあるというのに。
「なにッ!?」
不意打ちの稲妻の光と音により、ユウレンの感覚は封じられた。
目と耳の感覚が戻った時にはすでに、テクノストームの姿は消えていた。
隠れているのだとユウレンは思い、透視能力で捜索したが……見つからなかった。
「……ちくしょう」
原理不明の逃走。彼の独り言には悔しさがにじんでいた。
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書き溜めを吐ききってしまったので、また約1ヶ月後に会いましょう




