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第162話 罪には罰を

「厨房をお借りしてもいいですか?」

「ええ、構わないわ。案内するわね」

「アークとエアは部屋で待っててね。レインは手伝いをよろしく」

『うむ』

「ピピィ」

「承知しました」


 私はエアに鍵を預け、レインと一緒に女将さんのあとをついていく。


「うわぁ、すごい厨房ですね……」


 案内されたのは、高級レストランかと思うくらい、広くて設備が整っている厨房だった。


 百人単位のパーティでも開くことがあると言わんばかり。明らかに一人で回すような場所じゃなかった。


「ふふふっ、宝の持ち腐れだけどね。それじゃあ、自由に使ってちょうだい。汚しても掃除用具たちが勝手に綺麗にしてくれるからそのままで大丈夫よ」

「分かりました」


 女将さんが苦笑して去っていった。


 なんて便利な道具たちなんだ。私も欲しいかも。


「さて、始めますか」

「ご指示をお願いします」


 私たちは早速作業に取り掛かる。


 今日は手に入れたばかりの食材を使った料理を作りたい。お米と味噌だ。


 まずはコンロを取り出して広いテーブルの上に並べ、一番日本のお米に近そうな米を水に浸けておく。


「まずは海で取ったザハ」


 という名の数倍大きなサバだ。


「捌くのはお任せを」

「お願いね」


 レインが亜空間倉庫から二本の包丁を取り出して、サバを空中に放り投げてあっという間にいい感じに捌いてくれた。


「この野菜たちもこんな感じで切っておいて」

「承知しました」


 ──シュバババババッ!!


 凄まじい勢いで野菜が切れていく光景を尻目に、私は料理を進める。


 味噌が手に入ったからには、やっぱり鯖の味噌煮が食べたい。


「そういえば、レイン、フライパンって作れない?」


 ふと思いついて聞いてみる。


 どこにも売ってないから割と不便だったんだよね。


「フライパンですか?」

「うん、こんな感じの鍋なんだけど」


 私は紙に簡単な絵を描いて説明する。


「なるほど。過去にも似たような道具がありました。複雑なわけでもないので生成可能です」

「それじゃあ、よろしく」

「こちらをどうぞ」

「ありがとう」


 すぐに亜空間倉庫からフライパンが出てきた。


 何度見ても不思議な光景だよね。


 サイズは大きいものにしてもらった。作る回数はできるだけ少ない方がいいからね。


 フライパンに水を入れて沸騰させて、切られた生姜とネギ、白ワイン、ハチミツ、しょうゆなどをフライパンに加えて煮立たせてから皮目に切れ目を入れたサバを入れる。


 煮汁を掛けながらサバの色が変わってきたところで、再びレインに作ってもらった落とし蓋をしてしばらく煮ておく。


 その間に大きな鍋に油とボア肉を投入して、肉の色が変わるまで炒め、切ってもらった野菜を放り込んで、全体に油が回るまで炒めたら、水を入れてこっちも煮たまま放置。


「味噌を溶き入れて十分くらい煮たら完成」

「作業工程を記録しました」

「それじゃあ、みんなが食べても満足できるからい作ってくれる?」

「承知しました」


 レインにサバの味噌煮を任せ、次の料理を作る。


 中華鍋も出してもらって、油と豚肉を放り込んで火が通ったら、ざく切りにしたキャベツもどきやピーマンもどきなどの野菜を加える。


 少ししんなりしてきたところで味噌や豆板醤もどきを合わせた調味料を加えて、タレが全体に絡まるように炒めて味噌タレの回鍋肉の完成だ。


「味噌を溶き入れて刻んだネギを加えて軽く煮たら豚汁の完成」


 こんにゃくや豆腐がないけど、今のところは仕方ない。手に入れたら、完全版を改めて作ろう。


「作業工程を記録しました」

「サバの味噌煮と豚汁は任せたよ」

「承知しました」

 

 レインにサバの味噌煮と豚汁の量産を任せ、私は回鍋肉を炒めまくり、ついでにお米も炊き始めた。


 一回作った料理はお任せできるなんて便利すぎる。みんな食いしん坊だからすごく助かる。


 食材を使いきるまで炒め終わった後、簡単なおひたしみたいな漬物を用意して全ての料理が完成。


「あぁ〜、これこれ。この匂い。そして、これが懐かしいご飯の味だよ」


 炊けたご飯を味見すると、日本のお米と遜色ない食感と味のご飯が炊けていた。


 ナナピカリと名付けよう。実際は別の品種名だったけど気にしない。


 和風の料理が多いので、今日のところは普通の器に盛り付けた。


「お待たせしました」

「あらっ、いい匂いね」


 女将さんが鼻をひくつかせた後、笑顔になる。


「お口に合うか分かりませんけど」

「大丈夫よ。匂いが美味しいって言ってるわ」

「それならいいんですけど」


 私と女将さんとエア、レインの前に料理を並べ、アークとエアを呼んできた。


『おい、我の分がないぞ』

『アークのはこれね』


 アークの前に街の屋台で買った料理を出山盛りにして出した。


『なんで我はお前の料理ではないのだ!?』

『だから言ったでしょ。私の料理はしばらく禁止だって』


 そう。アークは昨日カジノでバカなことをしてくれた罰を受けている真っ只中。


 残念ながら今日の味噌料理は食べられない。これは罰だから仕方ないよね。


「なんだとぉおおおおっ!?」


 アークの叫び声が室内にこだました。

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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