第161話 お買い物
「それではまた、機会がありましたらお茶でもいたしましょう」
「はい。今日は色々とありがとうございました」
「いえいえ。そういえば、オークションに参加されるのならドレスは購入された方がよろしいかと。先ほどのメダルを街のお店で出していただければ、悪いようには扱われないと思いますので、何かありましたらお使いください」
「分かりました」
「それでは」
オーナーさんは帽子を取って頭を下げて被り直し、馬車に乗って去っていった。
見えなくなるまで見送った私たちは、再び街の散策を再開。
「わぁ、これ可愛いかも」
歩いていると、小洒落た店のショーウィンドウに綺麗なガラス細工の器やコップが飾られているのが見えた。
色とりどりのガラスが使われた皿などはサラダや前菜を盛るのに良さそう。このコップで冷たい飲み物を飲んだら、爽やかな気分になれそうだ。
『そんなもの、なんに使うのだ』
アークが訝しげに私を見る。
『旅の最中に食事をする時の器に良いじゃん』
『どんな器に盛ったところで味は変わらんであろう』
『分かってないなぁ。綺麗な器に料理を盛ったら、美味しそうに見えるんだよ?』
『ふんっ、我は美味ければなんでもいい』
『がさつなアークには分からないかぁ』
オシャレな器にオシャレに盛り付けたら、料理がワンランクが上がったように見える。料理は目で楽しむのも大事な要素だ。
ゴーレム馬車でゆったり旅ができるようになったし、レインの亜空間倉庫もあるから、あってもなくてもいい物もいくらでも持ち運べる。
だから、料理の見た目にこだわるのも悪くないよね。
『マスター、私も会話に混ざってもよろしいでしょうか』
『え、念話聞こえるの?』
突然従魔契約していないレインの声が聞こえてきて驚く。
『はい。私とマスターは魔力で繋がっております。同質の魔力の繋がりと魔力波を感知して解析した結果、念話への介入が可能となりました』
『そっか、レインは凄いね!! 今までごめんね。もちろん入っていいよ』
『ありがとうございます』
レインさんのハイスペックっぷりが凄い。
ちょうどいいので、レインにも聞いてみる。
『レインはどう思う?』
『そうですね。目で楽しむ、というのは一度体験してみないと分からないですね』
『そっか。それじゃあ、買っておいて次にその食器で出してみるね』
『分かりました』
レインも興味はあるみたいなので、私はお店に入っていくつかの器を購入した。
良い買い物ができてホクホク気分だ。
そういえば、ドレスを買っておいた方がいいとオーナーさんが言っていた。どこか良さげなお店で買っておこう。
ふらりとドレスが飾ってあるお店に寄ってみる。
「いらっしゃいませ」
「すみません、大オークションに参加するためのドレスを購入したいのですが」
「申し訳ございません。当店は一見様はお断りさせていただいておりまして……」
良さそうな店構えだったけど、値踏みするような目で私を見てくる店員。
私の恰好を見て少し蔑みを含む視線を浮かべた。
「あの……これでもダメですか?」
「そ、それは!? 申し訳ございません!! もちろんご利用ください!!」
店員はメダルを見せた途端、ハッとした表情になって態度を翻す。
ここまで露骨なお店は初めて。
カジノではドレスコードを指摘されただけだったし、劇場でも従魔とドレスコードを指摘されただけで私を蔑むような目はしていなかった。
でも、このお店は違う。完全に私を見下していた。
さすがにこういうお店では買いたくない。
『この店はやめておけ』
『排除してもよろしいでしょうか?』
アークとレインもこう言ってるし、別の店で買おう。
「いえ、やめておきます」
「そんな!! お客様、お待ちを!! お客様!!」
私は制止する従業員の言葉にも耳を貸さずにその店を後にした。
街を散策しながらまた良さそうな店を探す。
「おっ、あの店が良さそう」
そして、またいいお店を見つけたのでふらりと入った。
「いらっしゃいませ!! 当店へようこそお越しくださいました!!」
私たちを出迎えてくれる人好きのする笑みの女性店員。
先ほどのお店と違い、とても歓迎してくれているのが伝わってくる。
「あの、ドレスを買いたいんですが……」
「どのようなシーンでお使いになられるご予定ですか?」
先ほどのお店と違い、何も言われなかった。
この店なら安心して任せられそう。
「ドレスコードがあるお店や大オークションにしてもおかしくないものがいいです」
「なるほど。ドレスコードのあるお店に関しては既製品でも構いませんが、大オークションに参加されるようでしたら、仕立てた方がよろしいかと」
「お任せします」
「かしこまりました。こちらで候補をお選びし、オリジナルのドレスを仕立てさせていただきます。採寸させていただいても?」
「よろしくお願いします」
問題なさそうなので、そのままこのお店でドレスを頼むことに。
既存のドレスの中から良さそうなものを選び、自分とレインの分を購入。オリジナルのドレスは特にこだわりがないので完全にデザイナー任せだ。
「こちら商品になります。オリジナルのドレスは急ぎでお仕立ていたします。一週間後に引き取りにお越しください。こちら引換券になります」
「分かりました」
ドレスを購入した私たちは、少し時間的に早いけどホテルへの帰路についた。
「今日は私に夕食を作らせてください」
「いいのかしら?」
「任せてください」
「分かったわ」
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