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カウンター・エンジニア

「ちゃんと仕事してくれないと困るんだよ!」


 石島の叱責がフロア中に響き渡った。

 宮田は「はあ」と気の抜けた返事をする。それが更に石島の怒りに油を注ぐ。


「だいたい社内エンジニアが普段からちゃんと仕事してたら、トラブルなんか起きないんだよ!」


 石島のボルテージが上がる。今朝からパソコンがネットに繋がらないとお冠だ。

 「消防署が建っていたら火事が起こらないと思いますか?」と言い返してみようかと思ったが、やめた。話が長引くだけだ。


「なんだその目は!」


 ――生まれつき三白眼なんで。


「だらけた態度で聞くんじゃない!」


 ――あなたの部下が起こしたトラブルのせいで残業して疲れてるんすよ。


「とっとと仕事しろ!」


 ――とっとと無駄話を止めろ。


 石島が肩で息をしていた。宮田はぼうっとした眼差しで、石島を見ていた。


「そんじゃ、調べますねー」


 宮田は淡々とした足取りで、フロアの機器を点検する。

 宮田には不具合の原因がおおよそ予測できていた。すぐ終わるはずだ。

 何かが足に当たる。法人向けのAwazon超お急ぎ便の箱が、足元にあった。持ち上げる。比較的大きい箱だが、軽い。


「またAwazon超お急ぎ便か! 普段から必要部品を在庫してたら、そんな割高なサービス使う必要ないだろうが!」


 宮田は聞こえないフリをする。確かに、Awazon超お急ぎ便は普通の配送サービスよりやや割高だ。しかし、千差万別の機械トラブルに対応できるだけの在庫を抱える方がよっぽど割高だ。その点、必要時に必要なだけ供給してくれるAwazon超お急ぎ便は、機械を扱う仕事にとって、極めて相性の良いサービスだ。

 宮田は石島のデスクの下を覗く。()()()()()だ。

 宮田は、まっすぐに石島の目を見る。


「な、なんだよ」

「ルーターのコンセントが抜けてただけですね」


 石島がたじろぐ。口をもごもごさせているが、何も出てこない。

 宮田はAwazon超お急ぎ便を開封する。巨大なハリセンが入っていた。助走をつけ、大きく振りかぶった。

 ぱんっ、と甲高い音が、フロア中に響き渡った。

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