転生先で貴族令嬢としてラブロマンスに挑戦する・序の段
――某国・某所
逢魔が時、夜へと移ろいゆく時刻、悪魔が出る時刻……。
「あの忌々しい裏切りから40年、ついに、ついに雪辱を果たす時が来たのだ」
一堂に会する男達、その中心人物がこう発言し、全員が倣う。
「一部者の暴走、伝統の蹂躙、あの日を境に全てが壊れてしまった」
「国民は目の前のパンとサーカスに踊らされ、その裏切を指示することとなった」
「だが我らの計画が、実りつつある」
「偉大なる系譜、始まりの土地、やっとそこに「還る」ことができるのだ」
ここで中心人物は若い男に問いかける。
「進捗はどうか?」
「順調に弱っています、余命は後半年と言ったところです」
「よし、思えば、お前は才ある者であり始まりの土地に還るために必要な人材であった、そして多額の投資し、そして得た仁術で見事にまでに我々の期待に応えた、いよいよ仕上げの時が来たのだ」
「はっ」
と言った時だった。
扉が開き、もう1人の、同じ世代の若い男が現れた。
その姿を見た瞬間、全員が膝まづく。
「おお、偉大なる系譜を受け継ぐ御方、仕上げは上々、余命は後、半年とのことです」
「……そうか」
その言葉を噛みしめるように聞き目を閉じる。
「……よくやった、お前達には感謝している」
「勿体ないお言葉」
「さて、その仕上げが終われば、だ」
「後はあの虚けに鉄槌を下ろす」
「おお」
声こそ静かであるが全員が歓喜に震え、中心人物の男が盃を上げる。
「となれば、前祝いだ、となればこれは「献杯」でよろしいか?」
その中央の男の言葉に冗談とばかりに笑い声が木霊した。




