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わがままを封印した規格外少年の、時空を巡る送り人伝 —Departures—  作者: megane-san
第1章 追放~覚醒

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第8話 誤解

 明朝、俺はじいちゃんと一緒に軍艦が並ぶ港に来ていた。


「レオさん、おはようございます!」


「総帥、ルキリア様、おはようございます。すでに補給船も入港していますから、こちらへどうぞ」


レオさんは、港に整然と整列している海兵団員たちに俺を紹介してくれた。


そしてじいちゃんは、団員たちに気合を入れるような挨拶をすると、「ルキリア、任せたぞ」と言い残して辺境伯城へ戻って行った。


俺たちは、船の構造や大きさ、そして海上での船の動作などを細かくレオさんに説明を受けながら、各船をまわっていった。そして気がつくと、すでに昼食の時間を過ぎてしまっていた。


「ルキリア様、お腹がすいたでしょう。今日は、ここで食事をしていきませんか?海兵団の食堂は、うまいですよ。それに、今日は『海兵団スペシャルカレー』の日ですからね」


「えっ、海兵団スペシャルカレー!」


俺は、興味津々で海兵団の食堂へ入って行った。


海兵団の食堂は、騎士団と同じぐらいの広さだったが、メニューが騎士団とまるで違うのにびっくりした。


「うわぁ~!おいしい!魚介がたっぷり入ってる!」


「うまいでしょう~。これが食べられただけでも、海兵団に入った価値はありますよ」


(確かに!こんな新鮮な魚介の入ったカレーは、騎士団では食べられないな!)


「ねぇ、レオさん、プライベートなこと聞いてもいいかな?レオさんは、何で海兵団に入ろうと思ったの?」


「えっ、俺ですか?いいですよ、これからのルキリア様の人生の参考になれば……」


そう言うと、レオさんはコップの水を飲み干した。


「俺はね、海兵団長なのに、土魔法しか持っていないんですよ」


(あっ……、じいちゃんが言ってた。でも海兵団って、水か風の魔力を持ってないと不便なんじゃないのかな……)


レオさんは、俺が驚いている顔を見て、フッと笑った。


「小さい頃から海兵団に憧れてたんですけどね、俺は土魔法しか持ってなかったから、諦めて実家の農家を継ぐしかないと思ってた。だけどルークが、土魔法でも海兵団員になれる方法を一生懸命考えてくれたんですよ」


「えっ、父上が?」


「ルークは、辺境伯領主の息子で、火の魔力を持っていて、いずれは騎士団長になれる道筋がすでにあった。俺はそれが羨ましかったけど、顔には出さずにいたんだ。俺のプライド的なもんもあったと思う。だけど、ルークが、俺をため池に連れて行って、こう言ったんだ」


「な、なんて言ったの?」


「ため池の底を動かせって」


「……えっ、底を動かす?……って、そういうことか!」


「ルキリア様、流石ですね。そう、海底を動かして水を動かせって、俺に言ったんですよ」


(父上、素晴らしい視点です!)


「それから俺は、ため池から練習して、そして海底の土も自在に動かせるまでになりました。今では強化した海藻を瞬時に成長させて、海底に潜む魔獣も容易に絡めとることが出来るようになりましたよ。意外に海藻は使い勝手がいいんです」


「……すごい。レオさん、すごいよ!」


(レオさんは、土魔法で潮流を制御するのか。なら、船に乗せる結界の魔道具に、海底の地質データを感知させるセンサーを組み込めば、レオさんの魔法効率をさらに上げられるかもしれない!)


レオさんは、照れながら頭をかいていたけど、海兵団長になるまでに、相当の努力と挫折があったはず……


「ルークのおかげなんですよ。俺が、ここまでこれたのはね……」


俺は、レオさんの言葉を聞いて、胸の奥が急に熱くなった。


そして気づいた時には、視界が滲んでいた。


レオさんは立ち上がって俺のそばに来ると、何も言わずに俺の肩をぎゅっと抱きしめてくれた。


その手は、大きくて、少しだけ震えていた。



♢*♢*♢*♢*♢



 その日、エビータ国の王宮には、ガーラ国からの親書が届けられた。


「……俺、やらかした?」


「兄さん!この状況、どうすんだよ!ガーラ国から、あのトンネルの件で、親書が届いたよ!俺たち、絶対ガーラ国に侵攻しようとしてるって思われてるよ!」


国王となったライアン(第5王子)は、部屋の角で大きな背中を丸めて座り込み、上目遣いでルナール(第7王子)を見上げた。


「俺に相談もなく、兄さんが勝手にトンネル掘り出して……。初めから、使者を送って仲良くしたいです!って平和協定の提示をしたら良かったのに……」


「『鉱山掘ってたら穴が貫通しちゃったんで、うちと交流しませんか?』作戦、ダメだった?」


「ダメに決まってんだろ!バカかよ!兄さんまで、頭の中、獣化始まったのかよ!」


「だって、やっとあの親父が側妃たちに毒殺されて、長年続いた戦争が終わったんだ。すぐにでも隣国と仲良くしたいと思ったんだけど、どうしたらいいかわかんなくてさ……」

 

「先王の親父が、やりすぎたからな……」


ルナールは、大きくため息をつくと肩を落としてソファに力無く腰を下ろした。


「兄妹は行方不明ってことになってるけど、兄さんも妹たちも『獣化』して人間に戻れなくなっただけだからな……。今は、ブルーマウンテンで楽しそうに駆けずり回ってるよ」


「……王族なのに?」


「仕方ないだろ……。エビータ国の王族は獣人の血が濃いから成人前に獣化するやつの方が多いんだ……」


2人は、窓の外に見える、高くそびえるブルーマウンテンの山を見つめた。




「親父の子で、獣化しなかったのは、俺と兄さんだけだったしね……」


「あぁ、一番上の兄さんが獣化して、俺たちに角を向けた時は、怖かったよなぁ」


「あれは怖かったよね……。夕食を食べてて、いきなり苦しそうに倒れたと思ったら、一番上の兄さんが俺に襲い掛かってきたんだよね……。あれは、ビビった。ライアン兄さんが、機転を利かせて、俺の『赤い』上着を脱がせて、窓の外に放り投げてくれなかったら、俺、死んでたわ」


「兄さん、闘牛っぽかったからな……」


「あれは笑えないって……。でもあの恐怖で、俺たちの前世の記憶が蘇ったんだよねぇ……」


前世の記憶が蘇った第7王子のルナールは、それからは病弱と偽り、獣化を止める魔法薬を開発し始めた。


しかし、エビータ国では魔法薬の素材を集めることが困難だったために、ガーラ国郊外に屋敷を購入して、ガーラ国の豊富な薬草を使って研究を進めていた……。


「俺たち平和主義なのに、戦争ばっかりして、野蛮な国だと思われてるのは親父のせいだよ……」


「親父は半獣化しちゃって、アドレナリンがマシマシだったからな……」


「兄さん、とりあえず宰相たちと軍部の幹部たちに、俺たちの代では戦争はしないと宣言しよう。まずは内部から誤解を解いていこう」


「……わかったよ。トンネル掘りは、すぐに止めさせてくる」


ライアンは、弟に急かされながら立ち上がった。そして肩をすくめながら執務室のドアノブに手を掛けて、ボソッと小さく独り言のように呟いた。


「……でもさぁ、あのトンネル、隣国との国境線にはまだまだ距離があったはずなのに、なんでバレたんだろうなぁ……?」



――同じ頃、


フルーラ辺境伯城の工房では。


まだ何も知らないルキリアが、必死に海兵団の船に積む魔道具を、寝る間も惜しんで制作していたのであった。






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