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第二十五話

翌日、寝坊仕掛けた私は朝食も取らずに駅へと駆け出した。


ログアウトするともう既に深夜0時に差し掛かっていて、慌ててシャワーを浴びて眠りに着いたのだ。


電車の時間、ギリギリだぁ…

乗り過ごすとすごく混むんだよなぁ。


何て考えながら走っていると信号前で黒塗りの高級車が私の横に停止する。


「良い朝ですわね、美空さん。良かったらご一緒に如何ですの?」


「ほえ…世麗那さん、おはようございます!桃瀬さんも!」


「おはよう、美空ちゃん。昨日は大変だったね?さぁ、乗って!」


桃瀬さんが運転席から態々降りてきて後部座席のドアを開けてくれる。


うへぇー…こんな高級車、見ることは有っても乗ることなんて人生で何度あるだろう。

汚さない様に気を付けないと…!


「有り難うございます。お言葉に甘えさせて頂きます。」


「フフフ、何か不思議な感覚ですわね。昨晩はとても楽しい夜でしたわ。それもこれも茜達の、いえ…美空さんのお陰ですわ!」


「えへへ。私も世麗那さん達と一緒に遊ぶのが楽しくて…つい時間を忘れちゃいます。普段の学校生活じゃあんなにはしゃいだこと有りませんから誰にも言わないで下さいね?秘密ですよ!ーーあ、もう着きそうですね…また放課後会えますか?一緒に遊びたいです!」


「えぇ…えぇ!わたくしも放課後を楽しみにしますわ!フフッ…美空さんとの二人だけの秘密ですわね?」


「私が居ること忘れないで下さいね、お嬢様?まぁ…嬉しそうにしているので私は何よりですが。」


「じゃあ桃瀬さんも含めて三人の秘密ってことで!桃瀬さんも放課後会いましょう!行ってきます!」


私は停車したドアを開けると一気に駆け出す。


……あれ?

こんなに走ったの体育の授業を抜いていつぶりだろう?


浮かれてるのかな…私?


でも思考が前向きになるのは良いことだよね?


これも色々含めて茜さんがIMOに誘ってくれたお陰だ。


帰りに茜さんの好きなケーキでも買ってあげようかな。初勝利のお祝いも兼ねて。


下駄箱で履き替えて二階の教室に向かう。


いつもはこの引戸に手を掛けるのも億劫なのだが、今日は高揚しているのかすんなりと戸を引いた。


「…あ、は、春風さん、おはよう。」


「んおっ?おはよ、生天目(なまため)ちゃん今日は早いね。」


彼女は生天目 新夏(なまためにいか)


私の隣の席で生徒会書記、つまり世麗那さんとも交流がある。

そして私を生徒会に勧誘してくる人物でもある。


少しおどおどしていて小動物的な愛くるしさのある私が学校で言葉を交わす数少ない友人だ。


明るい茶色に染めた髪は緩くカーブしていて、時たまに無性に撫でたくなる。


「…うん。昨日ね、少し嬉しい事が有ってね。久々に夜更かししちゃった。」


「偶然だねー。私も少し夜更かししちゃってさー。世麗那会長に送って貰ったんだー。」


「……(やっぱり春風さんが…)あ、そうなんだ。会長といつの間に仲良くなったの?」


「ふぇ?あぁ、実は共通の知り合いが居てね。その人からの紹介なんだー(あまり言い過ぎても良くないよね?あくまでゲーム内での繋がりだし、配信やってるって知られたら私のイメージが崩れる…学校生活終わるのでは?)」


うーん、絶対にバレる訳にはいかない。

下手したら登校拒否になる自信がある。

いや、何とかバレないように頑張るけどね。


家から持ってきたパックのお茶を飲む。

あー、和む…


「ねぇねぇ!昨日のHALCAの配信見た?!」


「見た見た!お陰で寝不足だよー!でもあんなにぶっ飛んでるの凄いよね!気になって最後まで見ちゃった!多分私達と同じくらいの年頃じゃない?」


「ぶふっ…ごほっごほっ…」


「はわわ!大丈夫、春風さん!?」


「大丈夫…だよ。なんかお茶が喉に詰まっちゃって…気にしないで?」


危ない危ない…もう少しで生天目ちゃんにお茶を掛ける所だった。


「最後の所私も一緒に叫んじゃって親に怒られちゃったよ…」


「あはは、一緒一緒!何時だと思ってるんだーって怒られた!私もIMO買おうか悩むー」


むむむ…ヤバい。少し話題になってる?


クラスのギャル連中が楽しそうに私の配信の事を話している。


まぁ私はクラスではそこまで目立たない部類に入ってる筈だし、席も窓際の一番後ろだ。

気付かれる事もないだろう。


「ーーねぇ、春風さん?私の話聞いてる…?」


「あ、ごめんごめん。少し考え事してて。」


なーんか気になるんだよね…

生天目ちゃんのこと。

好きとかじゃなくてなんか似てる…?


メニーメニーマニーことメニーさんに凄く似ている気がする。


ドーランは塗ってないし身長とか胸囲は違うけど、同じくらいにコンバートしてキャラ作成すると被る…というか。うーん。


「ねぇ、生天目ちゃん。聞きたい事が有るんだー。生天目ちゃんってIMーー」


キーンコーンーー

タイミング悪く予鈴が鳴る。


担任がいつも通りにチャイムが鳴り終わる前に教室へ入場。


惰性化したホームルームが始まり、今日も日常が始まる。


んー…早く帰って続きがやりたい。


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