7.エピローグ
自分の事やら領地の事やら王の事やらで忙しくしている内に年を越した初秋、私は初めて自分の領地となるルカロンへと足を運んだ。
ここは7人もの近衛騎士と前総団長が細かく分けて統治していた所領である。他の貴族の規模で見るのであれば、これ合わせてやっと伯爵位相当の所領となるだろう。
これまで王国という国の中で近衛騎士が大きな土地を持つことは無かったのだが、如何せん王国の貴族の数は法衣貴族も居れると5分の1以下にまで減ってしまったのだ。数少ないエメリヒ王に忠誠を誓う貴族で統治しなければ手が回らない状況になっている。
「いい土地ね」
馬車の中でルーシーが外を眺めて嬉しそうに見ている。
そしてルーシーの右手は静かにお腹を撫でていた……そこには最近授かった私たちの新しい命がいる。
「そうか、初めてか」
「前行ったときはあなただけだったでしょ?」
「確かに…お義父さんお義母さんとも年始以来かな?」
「そうなるわね」
今回”ホワイト伯爵領”の領主の館があるルカロンに向かっているのは、義両親に頼りきりの自領の様子を見るというものもあるが、一番大きいのはルーシーの出産の為だった。
王都では確かに使用人も多く雇い入れているが、ルーシーに馴染みのある人は居ない。顔馴染みはカーマイン”侯爵”と共に南方へと移り住んでしまっている。
「また直ぐに王都に戻るの?」
「そうだな……だけど、出産前には一度戻るし、出産時には傍に居るように王に言われたからね」
「エメリヒ王も子供が生まれて変わったのね」
実はエメリヒ王も夏に、モーラ公爵の娘との間に子供が生まれている。
これにて、モーラ公爵は正式に北方”大公”と呼ばれるようになった。
「うーん……元々かも?」
「だって、厳しい人なんでしょ?」
「いや……多分あの厳しさは、敵と判断した人に対するモノかな?自分と並び立つ人間だったり、敵対する人間を許さないだけだと思う。意見を聞かず、頑固とかではないからね」
「じゃあ、春先に噂される戦争は?」
「多分ない」
エメリヒ王は、つい5日前の夜までムタルド教国に占領された土地の奪還を来春に行うと意気込んでいた。…が「国力も軍も回復していない状態で戦争は無理だ!」と周囲の猛反対により、その意見を引っ込めた。
更には間もなく帝国との停戦期間が終わる事もあり、今はとにかく国内の事だと言われ、それを素直に受け入れた後、精力的に政務に励んでいるのだ。その姿を見て頑固だとも言えまい。エメリヒ王の側で仕える者達は、苛烈だと噂される王の性格と現実の乖離を知っている。
だが、そんな出来事を知る由もないルーシーの心配事は、間もなく生まれてくる子に父がいない事態を避けたいだけだろう。
「大丈夫だよ。何なら第一近衛騎士団長なんて、戦場で王の次に安全な役割だから」
冗談めかして言っても、彼女は不安な表情を見せるだけだ。自分の言ったことを理解してもらえていないといった不安。
「言いたいのは、そう言う事じゃないんだけど……」
「……あぁ。”やるべきことをやる”だな」
もう2年も前になるか?ルーシーの婿候補の話になった時に彼女が言っていた事だ。
自分の場合は”近衛騎士団のアーチャー”として、いや…”近衛騎士団長”として王を守る事が”やるべきこと”だ。
王を守れば国が守られる。
国を守れば民が守られる。
民が守られればそれは遠からず、自分とルーシー、そしてこれから生まれて来る私達の子も守られる。
「うん、そう言う事」
「全部やってみせるさ」
「絶対?」
「絶対に」
「約束?」
「勿論」
短い言葉の応酬に込めた力はルーシーに十分伝わったようで、少し安心した表情を見せてルーシーは、またお腹を撫で始める。
馬車の窓から入る秋の風がルーシーの髪を揺らして、彼女の顔にかかる。それをかきあげるように戻した姿はそれはそれは美しい。
守って見せるさ、家族も仲間も王も国も。
”騎士団のアーチャー~王国内乱編~” 完
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ご覧いただきありがとうございました!!
これにて【騎士団のアーチャー~王国内乱編~】は完結となります。
まず最初に、ここまでご覧いただいた皆さんに格別の感謝を申し上げます。
いやー、それにしても文章を書くのは難しい…本当に難しい!
後から「この設定を書いていなかった!!」とか、ストーリーに入れたかった部分をド忘れしてたりとか……あとから書きたい事が生まれてきたりとか。あぁ、時間が無限に欲しいと思う限りです。
さて、続編となる【第三章】騎士団のアーチャー~大陸戦争編~は、書き溜めした後にまた連載を再会するために5月から6月を予定しています。(筆者が転職活動中の為、もしかしたらもう少し遅れるかも?)
次作:騎士団のアーチャー~大陸戦争編~
王国の内乱が収まり数年が経過したある日、家族と共に過ごしていたリデルに王からの呼び出しがかかる。王は遂にベルディグリ大陸の統一へと動き出したのだ。
だがその前には、仇敵であるメイズ大公国や見慣れぬ戦術を使うムタルド教国、最大の強敵であるスプルース帝国が立ち塞がる。
オロール王国は大陸に乱立する数々の国家を打ち破り、大陸統一国家を作ることが出来るのか?
近衛騎士団長となったリデルは、仲間たちと共に大陸を駆け巡る!
騎士団のアーチャー~大陸戦争編~でまたお会いしましょう!!!
追記
騎士団のアーチャーの加筆修正版(完成版)はそのうち”カクヨム”の方に同名義で上げたいと思いますが、恐らく第三章が完結した後に上げる事になると思われます……ハヤク…アゲタイ…ケド…時間が足りない!
他にもいくつか連載中の作品や、短編を上げています。
そちらの方も是非よろしくお願いいたします!!
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




