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5.婚姻


 今夜は涼しいを越して、少し肌寒いとも言える秋口の風が吹いている。

 門前で両腕を抱えて自分の言葉を待つルーシーをこれ以上待たせるわけにもいかないだろう。


「私と……結婚してください」

「はい」


 心構えが出来ていなかった自分は、予想以上の速度で返事が返ってきたことに驚き言葉を繋げない。

 ルーシーはその間も自分に真っ直ぐと視線を向けたままだ。


「……ありがとうございます?」


 やっと絞り出した言葉は、驚くほど他人行儀かつ疑問形だった。

 それを聞いたルーシーは、暗闇が迫って来たこの王都で一番眩しい太陽のような笑顔を見せてくれる。


「はははっ!何それ!」

「いやぁ……返事の早さに驚いてしまって」


 正直に答えた自分に、ルーシーはもうひと笑いした。


「実はね?もう返事はしていたの」

「…え?何にですか?」

「結婚のはなし」


 頭の中が混乱しているのか話を理解できていない。いや、これはルーシーが混乱しているのか?


「……どういうことですか?」

「えっとね、多分リデル君がエメリヒ王に、マクミラン家との婚姻の話をされた日のすぐ後とかだと思うんだけど…初夏だったし。その初夏にね、私と父とでエメリヒ王にリデル君との婚姻の話を聞いたの」

「…なるほど……?」

「王にはね、王国の慣例に則ると跡継ぎが女性しかいないマクミラン家は断絶になってしまうから、リデル君との婚姻で家を残したらどうかって言われたの。だから父は私が婿を迎えるでも、嫁に出すでもいいから貴族として、この王国で生きる事を望むって言って、私も『リデル君となら』ってその場で婚姻の話を受けたのよ」


 頭を抱えた。つまり、ひとり悩んでいたのは自分だけで、周囲の話は勝手に進んでいた訳だ。何が「甲斐性を見せよ」だ!確かに貴族の婚姻の話は、家と家もしくは王によって決められるものだが……これまで悩み続けた自分が馬鹿みたいではないか!?

 それはそれとして、ルーシーが自分なら良いと即答してくれたのは嬉しい事だ。なによりも彼女も同じ気持ちだという事に安心する。


「今日私にプロポーズしてくれなければ、私から言うところだったわよ!」

「うぅ、申し訳ないです」

「明日も空いている事は聞いてるわ、昼くらいから此処に来てくれる?父も交えて、これからの事を話し合いましょう?」


 終始話の流れは握られている上に、自分の予定までしっかりと把握されている。これは将来、頭が上がらない事が既に決まっていそうだ。

 それでも帰り道は少し早足で、そしてニヤニヤとした顔は隠す事が出来ていなかったように思う。知り合いに会わずに済む、自分の屋敷を貰っておいて良かった。



 翌日から秋の中ごろに急いで行われた結婚式までの日々は、あっという間に過ぎ去った。

 ローガン・マクナイト男爵は今回の婚姻について、マクナイト家はオロール王国に参加し、オレンジ派に宗派を変えるまではホワイト派だったという事で、娘がホワイトを名乗るのは問題ないと言った。それに新しい王とその近衛になるのだから、マクナイトという名前を気にする必要は無いと。

 自分としては好きな色というだけで、思い付きで名乗ったようなホワイトという名字に、拘る必要は無いと言ったのだが、ローガン男爵は「ルーシーは嫁に出す。マクナイト男爵家は自分まで」と言って譲らなかった。


 秋の昼間から始められた自分とルーシーの結婚式は、カーマイン辺境伯を始めとする辺境伯領の仲間たちが主な招待客で、王城の中庭で行われた結婚式がホールでの宴会へ変化した時にエメリヒ王が少し顔を出して盛り上がりを見せた。


 宴の中では、カーマイン辺境伯領から近衛騎士団まで連れて来た奴らが失礼なもので、「いや、まさかリデル団長と我らの姫が」や「尻に敷かれそう」やらと散々な物言いだった。特に結婚していないカールやフレディにも好き勝手言われたのは納得がいかない。

 まぁでもそれを打ち消して余りある幸せを感じているのだから、怒る気にもなれなかった。むしろ今掛けられる言葉は全てが祝福に思えるだろう。



 この結婚式の3日後に、エメリヒ王からロウで封された書状が届いていた。


「どうだった?」


 与えられた自分の屋敷で暮らし始めたルーシーが、エメリヒ王から届いた書状について心配そうな表情を見せる。そんな彼女も愛おしく思うが、これは大事な書状なのだ。


「1枚目は……エメリヒ王陛下からの許可だね。今回の婚姻によって、マクナイト男爵家の爵位と領地をリデル・ホワイトが継承することを認める。って」

「約束通りね」

「2枚目は、戴冠式に祝勝会と叙勲の式典……晩秋から20日間に渡って行う式典と祝宴の招待状だね。俺達ふたり宛」

「急なのね。正直春になるかと思ってた」


 晩秋から20日間となれば、北の方は初雪が間違いなく来ているだろう。

 となれば北方に領地を持つ貴族の道中が大変になるはずで、王としては避けたいはずなのだが……何かあるのだろうか。

 それはそれとして、急いで式典の準備を進めなければいけない。自分は近衛だが叙爵を受けるので、そこら辺のマナーをまた”妻”に頼まなければならない。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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