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おばさんクエスト~あるあるだらけの冒険記~  作者: ぱんちゅう
第六章 集合するおばさん編
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あるある169 「自分を信じて戦いがち」

「それでは行って参ります」


見送ってくれているカイト達に軽く会釈をして踵を返すとカスミは自慢の長刀と松明を持ってラナナコールダンジョンへ入って行く。

地面には最初に入って行ったエマの足跡がところどころ残っていて道標の役割を果たす。

松明を掲げてみれば天上はゴツゴツとした岩肌が広がっていて奥へ奥へと繋がっている。

暗闇に潜む蝙蝠などの生物は一匹もおらず生温かい風が奥から吹いて来ていた。


「洞窟の奥から嫌な気配を感じます」


カスミの足でも第一下層までの時間はエマと同じで10分程度だった。

エマと同じように第一下層の入口で立ち止まりカイトからもらったダンジョンの断面図とモンスター情報を確認する。


まずはどんなモンスターであるかを知ることは戦いを進める上でも重要なことだ。

カイトの情報によれば第一下層に出没するモンスターは”岩砕土竜”とのこと。

太陽の光に弱く、土の中を移動しながら獲物を待ち受けるタイプのモンスターであることが記されている。


次いで確認しておくべきことは戦いの場がどう言う場所かと言うこと。

松明を掲げて辺りを照らすと鍋底のような抉れた大地が映し出される。

地面はフラットだが所々に大穴が空いているのが見て取れた。

恐らくだがエマが戦った時に出現した”岩砕土竜”の穴だと言うことは容易に予想できた。


これらの情報からどうやって”岩砕土竜”を倒す戦略を練るべきかが肝心だ。

砂の中に潜んでいるアリ地獄は砂に伝わる振動を感じとって獲物の位置を捉えている。

だどするならば”岩砕土竜”も同様に地面に伝わる振動を感じとって獲物の位置を把握しているはず。

それを裏付けるかのように大きな穴の周りにはエマの足跡が残されていた。


「大穴の数と倒れている”岩砕土竜”の数を比べて見ればエマさんが”岩砕土竜”を相手にせずに駆け抜ける作戦をとったことがわかります。だとするならば私も同じ作戦をとるべきです」


カスミは長刀を背負うと松明を右手に持って足を踏みしめる。

長い深呼吸をして気持ちを落ち着けると意識を集中させて行く。

そしてタイミングを見計らって足を蹴り前へ飛び出した。


鍋底に着地するなり水面を走る水黽のように素早く地面を飛ぶように駆けて行く。

すると、予想していた通り地面に伝わる僅かな振動を感知して”岩砕土竜”が飛び出して来た。


「やっぱり来ましたね。だけど、お相手はいたしません」


飛び出して来る”岩砕土竜”には目もくれずただひたすらに走りぬけるカスミの目にはゴール地点しか映らない。

余計な気を向けていると足をとられて転んでしまいそうだから走り抜けることだけに集中する。

すると、地面に伝わる振動から次の軌道を予測してカスミの前に立ち塞がるように”岩砕土竜”が姿を現した。


「ただでは通してくれないようですね。しかし」


踏み出した足を軸にして高く飛び上がると”岩砕土竜”を踏み台にして飛び飛びに走りぬける。

その姿はまるで池に浮かんでいる飛び石を渡っている時のよう。

カスミの素早い動きについて来れない”岩砕土竜”は成す術もなくされるがままになっていた。


「ふー。私の勝ちですね」


大きく一呼吸をすると来た道を振り返りその場に立ち尽していた”岩砕土竜”を見やる。

すっかり鍋底の地面は穴ぼこだらけになっていて見るあてもないくらい荒れていた。

獲物を逃した”岩砕土竜”は肩を落としながら穴に戻って行き地中に姿を眩ませた。


「これじゃあ次のライレイさんは大変ですね」


カスミは気を取り直すと松明を掲げて第一階層のスロープを降りて行く。

歩くには不便なゴツゴツとした岩肌を踏みしめながらゆっくりと前へと進む。

5分ぐらい歩いていると第二階層の大広場までやって来た。


暗闇の向こうからモンスターの気配がして来る。

それもひとつではなくたくさんの殺気のようなものを感じていた。

耳を澄ませると石と石をこすりつけるような鈍い音が聞えて来る。

カスミは前には進まずに松明で暗闇を照らして状況の把握に努めた。


「真っ暗で何も見えません。エマさんはどうやってこの状況の逃れたのでしょうか」


冷静さを失わないカスミは松明で足元を照らしながらエマの残した足跡を探す。

すると、高台に向かって歩いていたエマの足跡を見つけることが出来た。


高台に移動してみればエマが放ったであろう銃弾の薬莢が辺りに散らばっていた。

その薬莢をひとつ手にとりエマの痕跡を探る、カスミ。


「エマさんは恐らく閃光弾を使って戦況を把握したのでしょう。ですが私にはそれが出来ません」


松明で照らすことが出来るのはせいぜい3メートル四方だ。

その狭い範囲だけで敵の動向を把握するのは危険過ぎる。

松明を持っていると言うことはこちらの位置をバラす行為に等しい。

敵が暗視出来るのかわかりませんが危険であることには変わりない。


「エマさんと同じ方法は使えないので独自の作戦を練るしかありません」


カイトの情報によればこの階層に出現するモンスターは”シルバーゴーレム”と言うこと。

全長が10メートルほどあり、パワーはあるが動きは鈍いと言う弱点を持っているらしい。

一対一で対峙するには申し分ない相手だが先のことを考えても無駄な体力は消耗したくないのが本音。

ならば変に小細工はするよりも堂々と前に進んだ方が最良かもしれない。


「私なら出来る」


カスミは長刀を手にとると自分に言い聞かせるように気合を入れ直す。

そして一歩前に踏み出してゆっくりと暗闇に染まる洞窟を進んで行った。


神経を張り巡らせて聴覚を最大限に働かせて周りの状況の把握に努める。

一瞬の判断のミスから危険な状態に陥ることはよくあること。

だからこそ敵よりも早く動きを察知することが重要になって来るのだ。

暗闇から聞こえる鈍い音は辺り一面から聞こえて来てただならぬ殺気を放っていた。


「来なさい。私は準備出来ているから」


その場で足を止めて長刀を握り直して戦闘体制をとる、カスミ。

深く呼吸をしながら気持ちを落ち着け敵からの先手に意識を集中させる。

すでに周りには”シルバーゴーレム”に取り囲まれて逃げ場はなかった。


そんなカスミの予想通りに”シルバーゴーレム”は先手を打って来る。

人の大きさもある程の拳を振り払いながら地面を刈るようにパンチを食らわせて来る。

その空気の揺れを感じとってカスミは足を踏ん張って上に高く飛び上がる。

そして空中で体を回転させて攻撃体制をとると”シルバーゴーレム”の頭目がけて長刀を振り下ろした。


「甘いわ!」


カスミの放った長刀の刃先は”シルバーゴーレム”の頭を切り裂くように食い込んで行く。

同時に無数の亀裂が生じて”シルバーゴーレム”の頭が爆発するように粉々に砕け散った。


「どうかしら。私の”改新の一撃”のお味は」


カスミの持っている特殊能力である”改新の一撃”は大打撃を与えられる能力だ。

100%と確実に大ダメージを与えることができスカは全くない。

冒険者なら喉が手に出るほど欲しい能力のひとつでもある。


頭の吹き飛ばされた”シルバーゴーレム”はもがくように暴れ回りながら闇雲に拳を振り回す。

その一撃が隣にいた別の”シルバーゴーレム”に当たりお互いにパンチを繰り出して乱闘をはじめる。

辺りは雑然とした乱闘状態になり収集がつかなくなる。

それはカスミにとっては好都合となり状況を見極めながら目標を絞り込んで行った。


「敵味方もなしですね。だけどこっちには都合がいいです」


目標にする”シルバーゴーレム”は目の前に立ちはだかるものだけ。

”改新の一撃”の特殊能力を最大限活かしながら”シルバーゴーレム”を粉砕して行く。

腕を破壊して攻撃を出来なくしたり、足を破壊してバランスを崩したり攻撃方法は様々だ。

その作戦が功を奏して僅か3体の”シルバーゴーレム”を破壊しただけで向こう側へ辿り着いた。


「何とか無事に辿りつけましたわ」


カスミは大きく肩で息をすると松明を持って第二階層のスロープを下って行った。

階層が深くなる度に酸素濃度が薄くなって来ているので呼吸が荒くなっている。

それはじわりじわりとカスミの体力を奪って行くので時間はあまりかけられない。


第三階層はそれまでの階層と違って棚田状に水が張っていた。

天上はそれほど高くなく風通しもあまりよくない。

空気が淀んでいるようで若干生温かった。


「嫌な感じがします」


辺りの様子を確認するカスミの顔に緊張が走る。


カイト情報によればこの階層に出現するモンスターは”バオバオ”と呼ばれるスライムだ。

全長が1メートルほどと小さいく薄汚れた体には毒があり群れで行動すると言う。

スライムと聞けば最弱のモンスターを想像する人は多いだろうが”バオバオ”は違う。

「毒」と言う殺傷能力の高い武器を持っているのだ。

いっそうのこと警戒する必要があるだろう。


カスミは松明を掲げながら辺りの様子を確認すると棚田の水の中に浮かぶ”バオバオ”の姿を目に留めた。


「あれがバオバオね。ものすごくたくさんいます」


3メートル四方の棚田に1匹と言う具合にユラユラと浮かんでいる。

攻撃体制はとっておらずこちらの動向を確認しているかのよう。

目や鼻のようなものはなくツルっとした体表をしていて触るとぷにゅっとしそうな感じだ。

見た目からしたらただのザコキャラのように見えるがカスミは油断することなく気を引き締めた。


「こちらが近づいたら毒ガスを吐くかもしれない」


長刀の端を握りしめ距離を保ちながら長刀を伸ばして”バオバオ”の体を突いてみる。

すると、予想していた通りふにゅんとした感触が伝わって来て”バオバオ”の体が凹む。

さらに力を込めて突くと急に”バオバオ”の体が弾けて毒ガスを撒き散らした。


すぐさま後ろに飛び退いて距離をとって毒ガスを回避する、カスミ。

口を押さえて毒ガスを吸い込まないように一定の時間息を止める。

しばらくすると紫色の毒ガスは空気と混ざり合い徐々にその密度を減らして行った。


「危なかったわ。あんな簡単に弾けるなんて」


毒ガスにどんな効果があるのかまではわからないが危険であることは間違いない。

”バオバオ”が自ら攻撃をしてこないところから見ても地雷のような役割をしているのだろう。

だから安易に攻撃をしかければこちらに被害が及ぶ。


周りを見渡せば辺り一面にたくさんの”バオバオ”が揺らめいていてさながらそこは”バオバオ”の巣と化していた。


「やたらと攻撃は出来ないわ。ここはスルーするのが一番ね」


カスミは長刀を背負うと松明を握り直してゆっくりと前に進みはじめる。

”バオバオ”に触れないようにしながら網の目に張り巡らせてある棚田を渡り歩いて行く。

棚田は30センチほどの深さなのでそれほど足がとられる訳でもない。

ただ”バオバオ”がユラユラと浮かんでいるので注意する必要があった。


「戦いよりも緊張するわ。まるでドミノをやっているみたい」


いつの間にかカスミの額にも汗が滲み出ていて顔に緊張が浮かんでいた。


目に見えているとは言え地雷の中を歩いているのだから無理もない。

少しでも触れれば”バオバオ”は破裂して毒ガスを撒き散らすのだから。

そうなってしまえば今のカスミに逃げ道はなく毒ガスの餌食になってしまう。


半ば歩いて来たところでいったん足を止めて一息をつく。

前を見ても後ろを振り返って見ても周りには”バオバオ”が揺らめている。

ここで他のモンスターの奇襲攻撃を受けたら間違いなく死んでしまうだろう。

そう考えただけでも背筋がゾッとする感覚を覚えたカスミだった。


「エマさんはここをどうやって抜けたのでしょう。私と同じ方法をとったとは思えないけれど」


カスミが思うエマの性格からしてちまちまとした戦い方は好まないタイプだ。

もしかしたら攻撃を加えて”バオバオ”を破裂させたのかもしれない。

そうだったとすると今いる”バオバオ”は新たに生まれたモンスターと言うことになる。

アンデッドのように再生能力はないから細胞分裂するかのように増えたのだろう。

先ほど破裂させた”バオバオ”の場所に目を向けれれば新たな”バオバオ”がそこにいた。


「間接攻撃が出来るエマさんだからこそ出来た戦い方ですね。私には真似出来ないわ」


気を取り直して再び歩みを進めるカスミの顔にもはや憂いはない。

自分に出来る戦い方でこの階層を攻略することしか頭になかった。


カスミの特殊能力”改新の一撃”を活かせないことが歯がゆいが時にこう言うこともある。

力任せに武器を振るうことが戦いの本質ではない。

自分にあった自分ならではの戦い方で勝利を治めることが大事なのだ。


その事は冥福寺で神事についていた頃から教えられて来たことだ。

実戦経験は積めない環境にいたからこそ戦いの本質を叩き込まれた。

冥福寺に伝わる刀術の歴史は深く受け継がれることで磨きを増して行った。

今でこそ刀術の規模は縮小しているがかつてはソリド王国を掌握するほど広まっていたのだ。


”バオバオ”の巣を通り抜けるとカスミはその場にへたり込んだ。

すっかり緊張の糸が解けて体から力がすっと消えて行ったからだ。

後を振り返れば”バオバオ”が揺らめきながらユラユラ浮いている。

帰りのことを考えるとどっとため息が零れるがエマと同じように裏ルートを使えばいいと判断した。


「別に裏ルートを使っちゃいけない訳じゃないし、またここを戻るなんて危険過ぎるからいいですよね」


自分の都合のいい言い訳をしてから再び立ち上がり第三階層のスロープを降りて行く。

下って行く度にゴツゴツとした岩肌は小さくなって行きやがてフラットな地面へと変わる。

明らかに人の手が加えられたような人工的な通路と変わり第四階層の入口は大きな石扉で覆われていた。


石扉には何かの文様が描かれていて中央の窪みには弾痕が残っている。

恐らくエマは銃を使ってこの扉のカギを開けたのだろうと言うことが予想出来た。


「ここからが本番のようですね」


石の扉から中を覗き込むと人工的に造られた空間が広がり一定の間隔で燭台が並んでいる。

柱と柱の間には横に伸びる部屋が設けられていて中に大きな木製の棺が置いてあった。

棺には石の扉に刻まれていた文様が描かれていて中央に水晶玉が埋め込まれている。

長い間、放置されているのにも関わらず埃が被っていなく不自然な感じを醸し出していた。


警戒は怠らずにカスミは燭台の灯籠に灯かりを灯しゆっくりと大きな棺に近づいて行く。

そして覗き込むように大きな棺を見つめながらゆっくりと水晶玉に手を伸ばした。


「これがスイッチって訳じゃないようね」


この棺に描かれている文様が石扉と同じものだったら扉を開けた時と同じ方法で棺も開くはずだ。

石扉に窪みに残されていた弾痕から察するに水晶玉を破壊したのかもしれない。

だとするならばこの棺の水晶玉を破壊すれば棺のカギも解けるはず。


カスミは棺の水晶玉に狙いを定めて長刀を握りしめ高く振り上げた。

そして西瓜割と同じ要領で長刀を勢いよく振り下ろして水晶玉を破壊する。

その時、カスミの特殊能力である”改新の一撃”が発動し水晶玉を粉砕した。


「んっ」


カスミが長刀を下げて間合いをとると大きな棺が揺れ動き出してゆっくりと棺の蓋が開く。

そして中から武装した骸骨騎士が競り出るように飛び出して来た。

右手には鋭い剣を持ち左手には堅牢な盾を持っている。

頭と体に身に着けている兜と鎧は金色で細かな模様が描かれていた。


見るからに城を守っているような聖騎士を思わせる風貌をしている。

骸骨騎士はカスミを目に留めると赤く目を光らせて剣を振り上げて来る。

すぐさま後ろに飛び退いて戦闘体制をとるカスミは長刀を上段に構える。


「ようやくおでましのようね」


カイトの情報によれは第四階層に出没するモンスターは”骸骨騎士”だ。

普通の人よりも大きく全長が2メートル近くあり群れで行動すると言う。


その長身から振り下ろされる剣の勢いは強く受け止めたカスミの手を震わせた。


「やるじゃない。だけど」


カスミは骸骨騎士の剣を押し返してから体を回転させて振り向きざまに長刀を水平に薙ぎ払う。

しかし、骸骨騎士もすぐさま反応してカスミの攻撃を堅牢な盾で防いだ。


「そう簡単には行かせてくれないようですね」


長刀を引き戻し後ろに飛び退いて間合を計るカスミの顔に一筋の汗が伝う。


これまでのモンスターとは明らかに違う骸骨騎士の対応に苦慮をする。

人型を象っているから戦い方も人間と同じで剣で攻撃して盾で攻撃を防ぐ。

しかし、冥福寺で鍛錬をして来たカスミにとっては戦い易い相手でもあった。


仲間と組手をとり行って経験を積み重ねて来たカスミには相手の動きが予測できる。

人間が攻撃をして来た場合どう動くのか、攻撃を防いだ場合どう動くのか。

カスミには手にとるようにわかっていたのだ。


だから、そこ次の一撃は骸骨騎士の横面を殴るように入った。

同時に”改新の一撃”が発動して骸骨騎士の兜を粉砕させた。


「どうです、私の特殊能力のお味は」


一瞬カスミの顔に笑みが戻ったがすぐに消えて去り真顔に戻る。

それは兜を粉砕された骸骨騎士の目が赤く光り反撃をして来たからだ。

その目は炎のように揺らめき怒りを前面に押し出しているような雰囲気さえした。


骸骨騎士は畳みかけるように剣を激しく振り下ろしながらカスミに斬撃を加えて行く。

カスミは長刀でその攻撃を受け止めながらじりじりと後ろの押されはじめる。

明らかにそれまでの様子を窺うような攻撃方法ではなく怒りに任せた乱撃に成す術をなくしていた。


「くぅ、やります」


一方的に骸骨騎士の乱撃を受け続けてカスミは壁際まで押し込まれてしまう。

ここまで骸骨騎士がやるとは想定していなかったのでカスミも次の一手に困っていた。


カスミは辺りを見回してこの状況を打破できる何かがないか探し回る。

その隙をついて骸骨騎士がとどめの一撃をカスミに向けて放って来た。

とっさにカスミはその場にしゃがみ込んで骸骨騎士の股ぐらを抜けて背後に回る。

そして振り返りざまに長刀を振り下ろして骸骨騎士に斬撃を加えた。


「背後ががら空きです」


カスミの斬撃は骸骨騎士の背中に直撃して上下を切り離すように一刀両断にする。

すると糸のキレたマリオネットのように”骸骨騎士”は分解されその場に崩れ落ちた。

ただ、髑髏だけは赤い目を光らせたままで顎をコツコツと不気味に鳴らしていた。


「ふー。危なかったです」


カスミは大きく肩で息をしながら気持ちを落ち着けるようにゆっくりと深呼吸をする。


実戦と組手の違いをまざまざと見せつけられた戦いとなったことに驚きを隠せなかった。

相手が一体だからこの程度で済んだけれど相手が大勢だったらこうは行っていないだろう。

ただ、カスミには引っかかっていたことがひとつだけあった。

それはカイトの情報には”骸骨騎士”は群れで行動するタイプのモンスターであることだった。


その予感は当たるもので部屋から出ると大勢の”骸骨騎士”が棺から飛び出していた。


「何、この数は」


ざっと見ただけでも数十体はいる。

どの”骸骨騎士”も鎧と兜と剣と盾を持っていて目を赤く光らせている。

怪しげに顎をカタカタと鳴らしながら仲間と情報を交換していた。


「これだけの数を相手にするなんて私一人では無理です」


さすがのカスミでも相手に出来ないほどたくさんいる”骸骨騎士”の前に怯む。

”改新の一撃”と言う反則的な特殊能力を持っていてもこれだけの数を相手にするのは骨が折れることだ。

まともにやりあったとしても体力が続かないだろう。


ならば、この状況から逃れる策を練るべきだ。

これだけの”骸骨騎士”を相手にすることは難しいが”骸骨騎士”達にとっても良い状況とは言えない。

それは”骸骨騎士”達が密集し過ぎていてまともに剣を振るえないからだ。

強引に剣を振るおうものならば隣の”骸骨騎士”にぶつかり攻撃が止まってしまう。

それはカスミにとってこの上ない状況でもあった。


目の前に立ちはだかる”骸骨騎士”だけを攻撃して道を開く戦略が今は重要になる。

このダンジョン攻略の目的はあくまで最下層にある玉を持ち帰ることだから戦いにこだわらないでもいいのだ。


カスミは長刀を構えると切っ先を目の前にいる”骸骨騎士”に向ける。

そしてゆっくりと深い呼吸をしながら意識を集中させて行って長刀の先に集めた。


「やって出来ないことはありません。行きます!」


カスミは左足を踏みしめると一気に間合いを詰めて”骸骨騎士”の懐に飛び込む。

同時に長刀を大きく振り回して”骸骨騎士”の腹を抉るように水平に薙ぎ払う。

手前にいた”骸骨騎士”はすぐさま反応して盾をあてがうが隣の”骸骨騎士”にぶつかり止まってしまう。

その隙を突くようにカスミの斬撃が入り”骸骨騎士”を一刀両断にした。


カスミの攻撃はこれだけで終わらずに次から次へと長刀を薙ぎ払い”骸骨騎士”達を狩って行く。

その攻撃は大振りで素人が攻撃しているかのように見えるが”骸骨騎士”達にはちょうどいい攻撃となった。

時折、”改新の一撃”が発動して”骸骨騎士”達を瓦礫へと変える。

ものの数分の間にこれらの攻撃は行われて一筋の道を作った。


「これが最後の一撃です。道を開けなさい!」


カスミは長刀を後ろに引き下げると刺突の構えをとって一気に間合いを縮める。

そして勢いのまま長刀を勢いよく押し出し目の前の”骸骨騎士”に刺突を加えた。

”骸骨騎士”は盾でカスミの攻撃を受け止めようとするが”改新の一撃”の前に粉砕されてしまう。

道を塞いでいた”骸骨騎士”は盾もろとも粉々に粉砕されて瓦礫へと姿を変えた。


その隙間を一気に駆け抜けてカスミは第四階層から脱出した。


「思ってた以上に手強い相手でした。だけどこれで」


後を振り返ると”骸骨騎士”達が呆然と立ち尽くしているだけで追い駆けては来なかった。

どの階層のモンスターにも共通として言えることだがその階層から外には出ないようになっている。

おかげで安全地帯が出来るので一息つける場所が確保されているので助かった。


カスミはこの調子で最下層も突破してカイトが置いて言った玉を手にした。

そしてエマと同じように裏ルートを通って安全に地上に戻った。


「カイトさん、戻りました」

「何でお前もそっちから来るんだよ。ちゃんと正規ルートを通って来い」

「別にそんな条件はされていませんでしたしいいのかと思って」


悪びれたようすもなく答えるカスミを見てカイトは苛立ったように地団太を踏みながら不満をぶつける。


「まあ、いいじゃないかカイト。これでカスミも合格ってことだ」

「仲間が増えて私は嬉しいですわ」


カイトを嗜めるように言うミゼルとセリーヌは満足気な顔を浮かべる。

そして最後に残っているライレイを期待を込めた目で見つめた。


「あとは私だけね」


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