あるある168 「確実な作戦を選びがち」
それから3日かけてラナナコールダンジョンへ辿り着いた。
その間もエマに背を向けられなかったことは否めない。
夜、眠る時もエマがいないか確認してから眠っていた。
おかげで睡眠不足が重なり昼間でも虚ろな状態だった。
「ここがラナナコールダンジョンの入口か」
「いかにもと言ったところじゃな」
岩肌むき出しの山の麓に巨大な横穴が空いた入口が広がっている。
草木は一本も生えておらず地肌がむき出しになっていてゴツゴツ状態だ。
穴の大きさは縦横3メートルほどで馬車で入るにはきつそう。
俺はリュックに仕舞ってあったダンジョンの断面図を広げて現在地を確認する。
「この入口が正規ルートの入口のようだ。裏ルートの入口はこの裏になるな」
「それじゃあさっそく玉を最下層に置いて来よう」
「なら、私も」
「セリーヌはここでみんなと待っていてくれ。俺とミゼルで行って来る」
後を着いて来ようとするセリーヌを制しして待つように指示を出す。
玉を最下部に置いて来るだけだから大所帯でなくてもいい。
それに裏ルートにはモンスターはおらず一直線に行けるので危険が少ないのだ。
セリーヌは頬を膨らませてふて腐れながらジトーっとした目を向けて来た。
「そんな目をしても連れて行かないぞ。これは遊びじゃないんだ」
「温泉で庇ってあげたことをお忘れですか?」
「あれはあれ。これはこれだ」
駄々を捏ねるセリーヌをほっておいて俺はミゼルと一緒に裏ルートの入口へ向かった。
裏ルートの入口と言っても探すのが難しいものではなく簡単に見つかった。
正規ルートの入口の対極にあって山を越えたちょうど裏側にあった。
「ここが入口のようだな」
「随分と狭いな。人がひとりやっと通れるぐらいの大きさだ」
「これだけ狭ければモンスターも入り込めないから安全は保障されているな」
俺は持っていた松明に火を点けて洞窟を照らしながら奥へと進んで行った。
岩肌が荒くゴツゴツしているので歩くのには苦労する。
躓かないように足元を松明で照らしながらゆっくりと足を運ぶ。
それから30分ぐらい歩いただろうかトンネルをくぐるとそこはラナナコールダンジョンの最下部だった。
最下部は高さが30メートルほどある巨大なホール状になっていて、その先にモンスターの気配が確認出来る。
ギルドでもらった情報の通りならば”碧小竜”が群れをなしているはずだ。
モンスターに気づかれては厄介なので俺とミゼルは玉を目立つところに置いてその場を立ち去った。
その頃、正規ルートの入り口に残ったセリーヌは俺の身を案じていた。
「カイトさん、遅いですわ。もう1時間にもなりますのに戻って来ません。何かあったのかしら」
「心配いらんのじゃ。あやつひとりで行った訳じゃないからな」
「そうは言っても、もしもってこともあるじゃないですか」
考えれば考えるほど不安は膨れ上がるものですっかりセリーヌは滅入っていた。
青い顔をしながら祈るように両手を組んで裏ルートの方向を見つめている。
これでは子供の帰りを心配して待っている母親のようでもあった。
まあ、年の差で見れば俺とセリーヌは親子ほど離れているからあながちハズレでもないだろう。
そこへタイミングよく俺とミゼルがこんもりとした山の上から顔を出した。
「カイトさん!無事だったんですね」
「あたり前だ。こんなことで死ぬ訳ないだろう」
「それよりもだ。さっそくテストをするぞ」
俺はリュックに入れていたダンジョンの断面図とモンスター情報が記された紙をエマ達に渡す。
「とりあえずその紙に必要な情報が記されている。それを元にダンジョンを攻略してくれ」
「用意がいいな」
「まあ、実力を試すならばモンスター情報はない方がいいのだが、これはおまけだ」
あくまでエマ達の実力を計るためのテストだからモンスター情報は公開しても問題ない。
はじめからわかり切ったモンスターにどうやって対応するかが問われるからだ。
俺達は一緒について行く訳でもないからどんな戦い方をするのかは把握できない。
しかし、最下部から玉を持って帰って来れれば実力ありと認めることが出来るのだ。
「よし。じゃあ、誰から挑戦するか決めよう」
「同じルートを進むのだから後にした方が有利じゃな」
「そう言うことだ。これはジャンケンで決める」
俺がジャンケンで決める方法を口にするとエマ達はお互いに向き合い円陣を組む。
そして俺がジャンケンの音頭をとって叫ぶとエマ達はそれぞれの手を出した。
「それじゃあ行くぞ。最初はグー、ジャンケンポン!」
カスミとライレイがパーでエマひとりがグーを出した。
「くぅぅぅ。ついておらん。ワシからなんて」
エマは悔しそうに拳を握りしめながらうめき声を上げる。
その横でカスミとライレイは嬉しそうな顔をしながら喜んでいた。
結局、ジャンケンの結果、最初がエマで次がカスミ、最後にライレイとなった。
「なら、ロリっ子からだ。ちゃんと最下部にある玉を持って帰って来るんだぞ」
「ふん。たわいのない。1時間で戻って来るのじゃ」
エマは銃弾の入った重そうなリュックを背負うと松明を片手に洞窟へ足を運んだ。
魔法使いがいないので灯かりは松明のみになるから消さないように注意しないといけない。
洞窟に足を踏み入れると生温かな風が微かに奥から吹き込んで来て松明の炎を揺らす。
遠ざかるエマの背中を見送りながら俺達はエマが戻るまで外で待つことにした。
入り口から10分ほど歩くと第一下層と思われる場所までやって来た。
天上は高く10メートルほどのあり横幅は100メートルほどある巨大な空洞だ。
空気は生温かく湿り気があり奥から吹いて来る風にモンスターの気配を感じる。
その場に足を止めてカイトからもらったダンジョンの断面図を広げて現在地を確認する。
「入口がここじゃから今はこの辺りじゃろうか」
遠くに見える入口はすっかり小さくなり暗闇の中、星のように煌めいている。
視線を洞窟の奥へ向ければ暗闇が広がっているだけで目に止まるものはない。
松明の灯かりが照らせるのも3メートルほどなのでほとんど視界がない状態だ。
「まずはここに出現するモンスターを知ることからはじめるのじゃ」
カイトが書き記したモンスター情報によれば第一下層に出現するのは”岩砕土竜”と呼ばれるモンスターだ。
体長が5メートルほどの大きさで鋭い爪と牙を持っている土竜と言うことだ。
太陽の光が弱点で暗がりに潜んでいるらしい。
「弱点があるのはいいがここでは意味がないな。じゃが、松明の光を怖がるかもしれん」
松明の灯かりを改めて見てホッと胸を撫で下ろす。
松明を持っている限り向こうから攻めて来ることがないと予想できるからだ。
後は”岩砕土竜”がどこにいるのかさえわかればいい。
「やはり土竜と言うぐらいじゃから地面の中と見るべきか」
エマは松明を掲げて洞窟を照らし洞窟内の地形を確認する。
洞窟はエマがいる場所から少し手前で抉れており巨大な鍋底のような形になっていた。
鍋底の地面は幾分かフラットになっていて難なく歩けそうな状態になっている。
その地面の下に”岩砕土竜”が隠れ潜んでいるらしい。
「姿を見せんモンスターじゃらから先制攻撃は出来んな。となるとカウンター攻撃が有効じゃな」
エマは両腰に下げている銀色のリボルバーを手にするとくるりと回して構えた。
弾倉には炸裂弾が装填されていていつでも発射できるようになっている。
少ない手数で”岩砕土竜”を仕留めるには破壊力のある銃弾が不可欠だ。
炸裂弾ならば肉を抉って体内まで入り込むので中にある魔石も破壊出来る。
後は魔石があるであろう場所さえわかれば全く問題はない。
「よし、行くのじゃ」
断面図をリュックにしまい松明を手にとると遠くへ向かって放り投げる。
両手にリボルバーを持つので松明は一緒に持てないからわざと放り投げたのだ。
松明は10メートル先まで届き四方3メートルの範囲を照らす。
それを確認してからエマは崖を駆け降りて鍋底の地面に降り立った。
「ここからじゃな」
慎重に辺りを確認しながらはじめの一歩を踏み出す。
なるべく物音を立てないように静かに足を置いて地面を蹴る。
一歩、二歩と歩みを進めて行くが”岩砕土竜”が現れる気配はない。
それでも気を抜くことなくゆっくりとした動作で前へ進んだ。
「ふー。何とかここまで来たか」
エマは地面に落ちていた松明を拾い上げると辺りを照らして確認をする。
しかし、フラットな地面が広がっているだけでおかしなところは見当たらない。
「この分だと難なく向こうまで辿りつけそうだ」
再び松明を振り翳して10メートル先まで放り投げる。
そして先ほどと同じようにゆっくりとした足取りで一歩前に踏み出す。
と、その時、地面が盛り上がって来て中から”岩砕土竜”が姿を現した。
「来おったか!」
”岩砕土竜”は両手の爪を振りかざしてエマの体を抉るように攻撃をして来る。
それにすぐさま反応したエマは両手のリボルバーの銃口を”岩砕土竜”両腕の付け根に向け迷わずに引き金を引いた。
乾いた銃声が洞窟内に響きわたると血飛沫を上げながら”岩砕土竜”の両腕が転げ落ちる。
エマは後ろに飛び退いて体制を整えると銀色のリボルバーのハンマーを引いて次の攻撃に備えた。
「その程度ではワシは落とせん」
すると、今度はエマの背後から別の”岩砕土竜”が飛び出して来て攻撃を仕掛けて来た。
「ちぃ、後からか」
すぐさまエマは前に飛び込んで一回転して間合いをとる。
そして振り向きざまに銀色のリボルバーの銃口を背後から攻撃して来た”岩砕土竜”の心臓へ向けて放った。
炸裂弾は”岩砕土竜”の肉を抉りながら心臓を貫いて背中へと抜けて行く。
放った2つの炸裂弾が絶妙な間隔で心臓を貫いたので”岩砕土竜”はその場に沈んだ。
「魔石は心臓ではなかったようじゃ」
だとするならば心臓よりも重要な場所にあると言うことになる。
常識的に考えると魔石のありかは頭になるがそれも定かではない。
おばさんアンデッドの魔石のありかが目であったように場所を特定するのは難しいのだ。
エマは倒れた”岩砕土竜”を見つめながら立ち上がると辺りの様子を確かめた。
「どうやら敵はこの2体だけだったようじゃな」
銀色のリボルバーのシリンダーを外し新たな炸裂弾を装填する。
そして松明を拾い上げると10メートル先まで放り投げた。
松明は音を立てながら転がって行くと暗闇を照らし出す。
その時、僅かだが地面が盛り上がったのだがエマの目で捉えることが出来なかった。
「さて、先を急ぐとするか」
大きく一歩前に踏み出して歩みを進めようと足を地面につけた瞬間、振動が地を伝い”岩砕土竜”が飛び出して来た。
不意を突かれる形で攻撃を受けることになったエマはすぐさま身を翻して後方に飛び退く。
すると、今度は飛び退いた場所の地中から”岩砕土竜”が飛び出して来た。
「うわぁっ!」
”岩砕土竜”の頭の上に乗る形になってしまったエマは振り落とされないように片膝を折ってバランスをとる。
それを受けて”岩砕土竜”は爪を立てて両手で挟み込むように頭の上に乗っているエマに攻撃をしかける。
「甘いわ!」
その場で足を踏みしめて頭上に高く飛び上がって攻撃をかわすエマは空中で体を半回転させて銀色のリボルバーの銃口を”岩砕土竜”の頭長に向ける。
そして躊躇うことなく銀色のリボルバーのトリガーを引いた。
片方のリボルバーから発射された炸裂弾は”岩砕土竜”の頭骨を捉えると破裂して肉を抉り出す。
その炸裂弾が造った穴にさらにもう片方のリボルバーから発射された炸裂弾が食い込み”岩砕土竜”の脳みそを破裂させた。
グオゥゥゥゥ。
炸裂弾を受けて脳を破壊された岩砕土竜”は崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだ。
エマはその倒れ込んだ”岩砕土竜”の屍に着地すると前方にいた”岩砕土”に銃口を向ける。
すると、”岩砕土竜”は地面を掘りながら地中に潜り込んで逃げて行った。
「ふん。たわいのない。にしても奴ら、何でワシの場所がわかるのじゃ」
不可思議な顔を浮かべながら辺りの地面を見回して理由を確かめる。
”岩砕土竜”が攻撃を仕掛けて来た前後の動作を振り返えればエマが一歩踏み出したタイミングで襲いかかって来た。
そこから察するに地面に伝わる振動を敏感に感じ取ってエマの居場所を特定しているのかもしれない。
”岩砕土竜”は目がないから視覚で獲物を捕らえることが出来ない。
その特徴が余計に”岩砕土竜”の触覚を発達させて僅かな振動でもわかるようになったのだろう。
「ならばここから脱出を図るには奴らが飛び出して来るよりも早く駆け抜けることじゃ」
エマはリュックに仕舞ってあった大量の銃弾をその場に放り捨てて荷物を軽くする。
そしてシリンダーを外して閃光弾を込めると洞窟の天井を目掛けて撃ち放った。
銀色のリボルバーから放たれた閃光弾は天井に撃ち当たるなり光を放ちながら洞窟内を照らし出す。
そのタイミングで目的地を確認してからエマは勢いよく駆け出した。
エマの予想通り地面に足がつくなり地中から”岩砕土竜”が飛び出して来る。
しかし、相手にはせずにただひたすら前に進むことだに集中する。
一歩、一歩と前に進むたびに飛び出して来る”岩砕土竜”は噴水のよう。
盛り上がる地面を踏み台にしながら前へ前へと飛び跳ねながら進む。
時折、後ろを振り返りながら押し寄せて来る”岩砕土竜”の姿を目に留めながら。
そして鍋底から崖を駆け上がり小高い丘の上に辿り着くとその場にへたり込んだ。
「ハアハアハア。なんとか逃げ切れたのじゃ」
後を振り返れば獲物を捕らえることが出来なかった”岩砕土竜”が仕方なさそうに地中に戻って行く姿が見えた。
「これで灯かりはなくなってしまったのじゃ。閃光弾が照らせるのは数秒だけじゃ」
銀色のリボルバーのシリンダーを外して空の薬莢を取り出し新たに銃弾を込める。
銃弾も放り捨てて来たから3分の1ほどに減っていて少し心もとない。
この先に出現するモンスターのことを考えれば無駄撃ちは出来そうにもない。
確実に魔石を破壊して仕留める作戦をとった方が銃弾を節約できそうだ。
エマはそう判断するとリュックを背負い地下二階層へと足を向けた。
地下一階層から二階層へ通じる道はスロープ状になっていて大きく回り込むように進む。
洞窟の中と言うこともあり地面はゴツゴツとした岩が転がっていて歩くのに不便だ。
灯かりもないから手探りで前を確認しながらゆっくりとした足取りだが確実に地下二階層まで辿り着いた。
目の前に広がる暗闇の中にモンスターの気配を感じて足を止めたエマは目を凝らしながら前を見る。
そして銀色のリボルバーを手にとると天上へ向けて閃光弾を放った。
「何じゃこれは!」
閃光弾の光で照らし出されたのは全長10メートルほどある”シルバーゴーレム”の群だった。
光を反射する”シルバーゴーレム”の肌は銀鉱石で覆われていてゴツゴツとしている。
腕も足も首も太くて剛健で一撃では倒せないような体躯を備えていた。
「こんなたくさんのゴーレムは相手に出来んぞ」
エマは背負っていたリュックを下ろして徹甲弾を取り出すとロングライフル銃に装填する。
そして高台に移動すると地面に腰を下ろしてロングライフル銃を構えた。
狙いは”シルバーゴーレム”の体内にある魔石だ。
ゴーレム系のモンスターは心臓部に魔石が隠されている。
体中に魔石の力を行き渡らせるためには一番ちょうどいい場所なのだ。
ただ、問題は一撃で心臓部にある魔石を破壊出来るかだ。
徹甲弾を使えば堅牢な装甲でも貫ける破壊力がある。
しかし、”シルバーゴーレム”の体は銀鉱石が寄り集まって出来ているので何重にも装甲を身に着けているようなものだ。
なので徹甲弾を用いても一撃で仕留められるのは難しいかもしれない。
「厄介な相手じゃ」
エマはロングライフル銃の銃身にサイレンサーを取り付ける。
あいにくゴーレム系のモンスターの弱点は動きが鈍いと言うことだ。
気づかれる前に確実に1体1体仕留めて行けばこちらに勝機がある。
全部倒さなくても通り道にいる”シルバーゴーレム”を倒せばいいのだ。
「落ちるのじゃ!」
エマがロングライフル銃のトリガーを引くと同時に反動が体に返って来る。
その反動で狙いが逸れないように耐え忍びながらボルトハンドルをスライドさせる。
ロングライフル銃から放たれた徹甲弾は”シルバーゴーレム”装甲を貫きの心臓部に突き刺さるが途中で止まってしまう。
「やはり一撃では無理か」
”シルバーゴーレム”の心臓部に空いた穴を目掛けてエマは第二射目を放った。
放たれた徹甲弾は真っすぐ心臓部に空いた穴に飛んで行き”シルバーゴーレム”の体内に突き刺さる。
そして最初に入り込んでいた徹甲弾にぶち当たるとエネルギーが前の徹甲弾に伝わり入れ替わるように徹甲弾が”シルバーゴーレム”の体内にある魔石を砕いた。
すると、”シルバーゴーレム”の体は塵のように消え去りその場から姿を消した。
「よし。まずは1体目じゃ」
サイレンサーで音を消したため他の”シルバーゴーレム”には気づかれずに倒すことが出来た。
銃声は相手を牽制することも出来るが同時に自分の居場所を相手に教えてしまうものだ。
しかし、サイレンサーを使えばその心配は払拭されるので要人の暗殺時に使われやすいアイテムでもある。
今、エマがとっている行動も暗殺を目的とした攻撃スタイルなので理に適っているのだ。
「次はお前じゃ」
ロングライフル銃のボルトハンドルをスライドさせて次の銃弾を装填する。
そして先ほどと同じように”シルバーゴーレム”の心臓部に狙いを絞りトリガーを引いた。
エマはこの一連の作戦で”シルバーゴーレム”の数を減らして行った。
そしてある程度、間引き出来たところで底に降り立ち身を隠しながら前へ進む。
時折、”シルバーゴーレム”に気づかれそうになるが暗闇が味方してうまく掻い潜ることが出来た。
「ふう。次は第三階層か」
エマは知的な戦略と確かな技術を駆使しながら第三階層、第四階層を制して行く。
銃弾が限られていたので”確実にかつ一撃で仕留める”ことを優先させて戦った。
その判断が功を奏して無事に最下層まで辿り着くと俺の置いていった玉を手にとる。
「これでミッションはクリアじゃ」
エマは掌で玉を転がせながら来た道を振り返ってホッと息をついた。
後は地上に戻るだけなのだが来た道を戻らなければならない訳でもない。
カイト達が使った裏ルートを通り抜ければ安全に地上へ戻ることが出来る。
カイトの条件は最下層にある玉を持ち帰ることだから裏ルートを選んでも問題はないはずだ。
エマはそう判断すると裏ルートを通って地上へ戻って行った。
「戻ったのじゃ」
「おい、何でそっちから出て来るんだよ」
「別に正規ルートから戻って来いとは言っておらんじゃろう。ワシは確実なルートを選んだだけじゃ」
こんもりとした山の上に立っているエマの姿を捉えるとカイトはすぐさまケチをつけて来た。
はじめからわかっていたことだが間違った判断はしていないとエマは思っている。
与えられたミッションをこなして確実に戻って来るには裏ルートが最適だっただけだ。
不服そうなカイトを下目に見ながらエマは勝ち誇ったように言い返した。
「これでエマは合格ってことだな」
「そうですわね。私達の目に狂いはなかったようです」
「ワンワン」
腕を組み感心しながらミゼルが俺に視線を向けると横にいたセリーヌも確信したように呟く。
その周りではトイプーがご機嫌な様子で尻尾を振りながらくるくると走り回っていた。
「まあ、いいだろう。ちょっとしたズルはあったみたいだが」
「鼻につくような言い方じゃな。不満があるならはっきり言ったらどうじゃ」
「別に不満なんてないさ。ただ、もうちょっと細かく指示を出しとけばよかったなって思っただけだ。」
不甲斐ない顔をしながら後悔しているカイトは小さく見える。
これでカイト軍団のリーダーと言うのだから話にならない。
リーダーならばもっとリーダーらしくしておけばいいものを。
そんなことを考えながらもエマはホッと胸を撫で下ろした。
「次はカスミの番だな」
「緊張します」
「そんなに緊張せんでもいいぞ。中にいるモンスターはそれほど強くもないからな。お主ならだいじょぶじゃ」
自分の番が着て肩を強ばらせているカスミの緊張を解くようにエマはカスミを激励した。




