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婚約解消を提案したら王太子様に溺愛されました ~お手をどうぞ、僕の君~【書籍化・コミカライズ】  作者: 春風悠里
番外編5

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♡ジェラルドの夢3.もしも夢なら

 これは赤面ものだわ……。


「分かってくれた? どれだけ僕がライラちゃんを好きか」


 ベンチで隣に座りながら、こんな美男子に好き好きオーラを出されつつ話の内容もまた……顔がつくれないし。


 よくセオドアの横で堂々と話せるわよね。


「あ……あなたの置かれている状況は分かったわ」


 どうしようかな。

 実はさっきセオドアと話している時――ヨハネスとメルルがくっつきそうなら、セオドアとどうにか親密になってから円満にヨハネスに婚約解消をしてもらってセオドアの助けを借りて隣国に逃げるという手段が頭にちらついていた。


 セオドアがいい人なのは分かっているし、あのゲームのライラの暗い未来の回避だけは絶対にしなくてはと。


 ジェラルド……癖の強いキャラだったはずなのに、ものすごく私のことを好きみたいだし、アリかなと思わなくもないけど……だからこそ罪悪感を持ってしまう。同じだけの気持ちを返せるまでは、時間がかかりそうだ。


 それに、まだ前の世界での年齢も含めた私について詳しく話していない。

 

 ジェラルドも国に婚約者がいるのよね。だからこその身分を剥奪されてもって言葉があったのだろうけど、明るいだけの未来にはなりそうにない。


 だって……ね。ライラの元からの記憶からすれば、私とヨハネスの婚約も宰相である父と王家の結びつきを強めるためだ。互いの親の意思が介入している。


 婚約破棄がゲームの中で成立していたのは現実ではないからといえばそれまでだけど、弟のローラントの将来への保証とか、ほとぼりが冷めた頃に条件がよくて王都にいない誰かとの婚約を実は提案されていたとか……何か裏設定があったのだろう。


 婚約は親の利害が絡むもの。そういった何かがなければ、王子の一存での破棄は難しい。だからこそゲーム上でも実際に破棄されるのは卒業後だった。


 明るいだけの未来は、存在しないかもしれない。


「信じてくれてよかったよ。それから……君は恋人だったヨハネスに対して酷く臆病になっていた。若返りの薬を飲んで実は百歳でしたのような理由で、自分は相応しくないと考えているようだった」


 ……まんまじゃない。

 え、そんなこと言ったの、私。


「そこをクリアしないと僕に対してもそう思うよね。だから当ててみよう。それを理由に相応しくないと考えていたってことは……前の世界では結構いい年齢だったわけだ」


 バレてる……。

 ジェラルドがいた世界の私、何を考えているのよ。


「そうでないと放てないような言葉もあったしね。びっくりするほど辻褄が合うよ。そういえば年寄りじみてるって自分で言ってたっけな。年寄りだったの?」

「違うわよ! 私を好きなはずなのに失礼ね。ただ――」


 これを隠して好きでいてもらうのは、やっぱり罪悪感を強く持ってしまうものね。


「夫も子供もいたわ。夫とは妊娠中から不仲になって会話もあまりなかったし、たぶん浮気されていたけど……」


 あーあ、言ってしまった。

 私を好きな気持ちも消えちゃうかな。セオドアにも聞かれているし、もう無理そうだ。きっと、おばさん扱いしかしてもらえない。

 

「そうか……。だからあんなにヨハネスに好かれていたのに自信がなさそうだったのか」


 うーん、俄には信じがたいわね。乙女ゲーの世界ではヨハネスはメルルとラブラブだったのに。


 ……もしかして私って、あの人にメルルよりも好かれるタイプだとか? 最初からヨハネスに相談していたら、何度も何度も心をときめかせて回想を見た彼と――。


「悪いけど、ライラちゃん。たぶん君と少し話しただけでヨハネスは君に夢中になるよ。会話をするのを阻止させてもらう。本当は……あの楽しかった時間をもう一度って気持ちも強い。皆で楽しくここでも過ごしたい。君もきっと――」


 そんな泣きそうな目で見ないで。


「ヨハネスと一緒にいる方が幸せなんだ。好きに……なるんだ。だってあんなにも――。僕は今、君よりも自分の幸せを優先しようとしている」

「……私、さっきも言ったけど夫と子供もいたのよ。それでもいいの?」


 普通なら嫌だと思うわよね。若い男の子からすれば、おばさんのはずだ。

 

「ああ、今なら分かるよ。君の言葉の端々には

それまでの君の人生が乗っかっていたんだ」


 うーん、ジェラルドの世界の私が本当にいたのだとしたら、とんだ悪女ね。こんな若い王子様を本命とは別に引っかけちゃうなんて。


 ここまで私を好きでいてくれる彼を差し置いて、ヨハネスとどうにかなろうとは思えないわよね……。


「私、まだあなたのことを好きになってはいないけど……」


 婚約者のいる彼と恋人になったのなら、ものすごく大変よね。でも……夢なら途中で覚めるのかな。


 それならそれで……。


「好きになりたい気持ちには……なってきたかもしれないわね」


 彼が笑う。

 本当に嬉しそうに。


 長年の苦労が報われたような顔だ。


「そんな言葉を直接聞けた。それだけで、戻っても生きていけるよ。大好きだよ、ライラちゃん」


 ずっと求めていた、愛し愛される夫婦。もしかして彼となら……。


 会ったばかりのはずなのに、つい期待してしまう。そんな関係の夫婦が夢だったから。私が悪かったのかなって。誰にも愛してもらえないのは、どうしてなんだろうって。


 ――ずっとずっと苦しんでいたから。



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