03.深謀の魔女 前編
深謀の魔女、それがサレナ・ヘルサイズの裏の顔である。
サレナは、表の顔は慈悲深い聖女の顔をかぶっているが、裏社会ではこう呼ばれ、恐れられている。
自らの目的のためならいかなる手段でも取る女として……
戦争時、ジークは本当はサレナも殺すつもりだった
なぜならサレナの頭脳は生かしておくとやばいと思ったからだ。
早めに殺しておくに越したことはない。彼女の次男誘拐はそのついでだった。
だが、逆に罠にはめられてしまい、次男を誘拐するだけで精いっぱいだったのだ。
その時ジークは十分注意して作戦を行ったのに、あれほど見事に罠にはめられてとても驚いたことを今でも覚えている。
その失敗以降、ジークはこの女を殺すのは諦めたのだった。
今、この魔女は楽しそうに笑ってる。うまい獲物を目の前にした悪魔の顔だ。
「で、俺をどうするつもりだ?」
だが、ジークはサレナが自分に会いに来た理由の見当がつかないでいた。
ジークは考えた。
この魔女が、復讐という個人的な感情で動くわけがない。
それに、成功してもメリットは薄いだろう。
普通なら自分を油断させて捕まえた後、公開処刑という可能性が一番高いのだが……
「あなたを油断させて捕まえた後、公開処刑など、しませんよ。そのような事をしても、メリットは少ないですし」
サレナは、ジークの心を読んだようなことを言ってきた。
「国民の意識をまとめるには最適だと思うが?死神の長の公開処刑はさぞ国民に喜ばれるだろうよ」
「確かにそうですが、その場合必要なのは死神の長という称号を持つ人間です。必ずしもあなたである必要はありません。ですから、適当な死刑囚をあなたとして処刑すればいいだけのこと。どうせ国民はあなたの顔も知らなければ、別人でも確認すらとらずに信じるでしょう」
そう言いながら、サレナは心底自国民を馬鹿にしたよう笑いながら言った。
ジークはこの笑顔こそ、彼女の本性かもしれない、と思った。
「この国は軍事に力を入れているとはいえ、善政が行われていしな。この国の貴族は民衆に慕われているから、よほどの事でない限り民衆は貴族の事を信じる、という事か」
「ええ、それに聖女である私が言えば、国民はみな信じるでしょう。貴族とて同じこと。この国の国民も貴族も目の前の事しか見ていない馬鹿ばかりですから。おかげでやりたい放題できますがね」
彼女は笑っていた。もしこの国の、彼女のことを聖女と思っている人々がこの会話を見聞きすれば、自分の目を疑うだろう。
「で、なぜ俺のような非道な殺戮者を招く?」
「ええ、では本題に入りましょう」
サレナは今度はまじめな顔をして、話を続けた。
「あなたは私が保護します。」
「……」
「あなたを私の娘の夫にします」
「…………は?」
あまりに有り得ない内容にジークは驚いた。
騙す為の嘘にしたって、もっとましな物があるはずだろう、と。
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