ダンジョン創世記0067
「なんでも此処では里で作った品の買取を行っておるそうじゃのぅ。
儂のような者が作った品でも買い取って貰えるのかえ?」
老婆は入店して暫くは店内を見回していたが、彼女を伺っている店員に気付いたように尋ねる。
「はい、そうでんなぁ、此処はそんための店さかいに買取まっせぇ。
でぇ、どないな品を卸してくれますんやろか?」
店員の1人がニコヤカに尋ねる。
肯定的に返答を返して来た店員に、うむうむっと頷きながら老婆が告げる。
「儂はのぅ、こう見えても薬師として身を立てておってな、幾つか調薬した品を持参したのじゃよ。
これなのじゃがのぅ、どうじゃ?買い取って貰えるのかのぅ?」
そう告げた老婆が木の葉を加工した品に包んだ粉薬を数個ほど取り出し店員へと渡す。
受け取った店員は訝しげに受け取り、包みを閉じている蔓紐を解き中を確認し…バッと顔を上げると老婆を見た。
「これ…本当にお婆はんが作りはったん?」っと仰天したように告げる。
「ふぇへへっ、その薬が分るのかえ?
どうやら物は分かるようじゃのぅ」
そう、にこやかに告げているのだが…甘く見ていやがったな、コヤツら…
スパイ・ダーを経由して老婆の調薬技術を此方は把握していたんだよ。
ま、店員達には先入観を持たせないために伝えてはいなかったのだが、キチンと見分けたようだな。
なにせダンジョン内の薬局にて流通させても問題ないレベルの薬を作り出しているんだよ、この老婆は。
ダンジョン内では様々な魔導機を使用して多用な薬を高品質にて作り出している。
このレベルの薬品を手作業にて作り出すのは至難の技だと言って良いだろうな。
それを、この老婆は魔術を駆使し精霊の御力を借りて作り出しているんだ。
下手をしたらダンジョン産の薬よりも高品質な品も作り出していたりするから侮れない。
まぁ、この老婆クラスの薬師はラルデラ地帯に数人しか居ないがな。
その中でも1、2を争うレベルの調薬師が、この老婆なんだ。
老婆が店員へ渡した品は全て違う効能の品であり、それぞれの病に特化した薬だな。
ダンジョン出店の買取販売店の力量を見極める意味で少しランクの高い品を店員へと渡しているみたいだ。
このレベルの薬は里のザッツ店へは卸さずに老婆直売の品となっている。
それは症状に合わせて販売せねば危うい場合もあるため、病の状態を見極めて処方した薬を渡す必要があるためなんだ。
つまり、渡した薬について見抜く力量を有してなければ卸すことなど危な過ぎて行えないと言うことでもある。
老婆は、にこにこと店員を見て、うんうんっと頷いており、更に鞄から素焼きの小瓶を数個ほど取り出す。
そして、それを店員へと渡してから告げた。
「では、これらなどは、どうかのぅ?」っと。
店員は少々キョドリながらも老婆より小瓶を受け取り小瓶の口を塞ぐコルク栓を外し匂いを確認する。
そしてハッっとしたような顔で老婆を見て言う。
「こっちは栄養剤みたいやけど…これ、魔法薬ちゃいますのん?」
「ちょっと、その栄養剤と言うのかしてみ?」
老婆に告げていた同僚に他の店員が告げて彼女が栄養剤っと告げた小瓶を受け取る。
そして彼女へと困ったように告げた。
「アンタねぇ、勉強不足やわぁ、これも魔法薬ちゃいますのん?」っと。
同僚に告げられ、慌てて老婆と遣り取りしていた店員が栄養剤入り小瓶を返して貰い確認すると…
「!! ほんまやぁっ!これ、微量やけど魔力含んどるやんねっ!
ああ、栄養剤の栄養が体内へ吸収しやすうするためなんかいな。
せやさかいに、付与する魔力を調整してはるんやなぁ~
それに気付かへんとは、アタイもまだまだやわぁ」っと、ガックリ肩を落とす店員である。
だが、それを面白そうに見ていた老婆が告げる。
「気に入った!
それを見分ける技量、見分け損ねてから見分け反省する姿が良いわえ。
薬と言う品は人の生き死にを左右する品じゃてのぅ、生半可な者へと渡しとうは無いのじゃ。
じゃが、お主らなら任せても良さそうじゃて。
して、幾らで買い取って貰えるのかのぅ?」
にこにこと尋ねる老婆へと店員が買取査定を行い金額を告げると…
「なんとっ!それほどの額で引き取って貰えるのかぇ!?」っと老婆が仰天する。
いやいや、彼女が作る薬の品質から鑑みて当然の査定だと言えるだろう。
ダンジョン内で生活していても当然病には掛かる。
死ねば当然生き返ることなどない。
だから当然ダンジョン内でも薬の需要はあり、有用な薬はそれなりの額にて取引されているんだよ。
まぁ種族により病に掛かり難いとか、怪我が治り易いなどもあるが、基本的に病院にて治療しているぞ。
そんなダンジョンではシステマチックに薬を作り薬局にて販売したり病院にて治療に使用しているのが現状だ。
常日頃から研究所にて薬の研究開発は行われてはいるが、それでも老婆が持ち込んだ品と同等か劣っているから驚きだ。
まぁ、俺達幹部は知っていたが、その情報をダンジョン内へと広めるつもりはなかったのでな、だから知らせてはいないんだ。
老婆が作る薬の知識は老婆が受け付いた技術と老婆の研鑽にて生まれた品だと言えよう。
それを盗み見て模倣するなど泥棒と変わらないのでな、そんな愚劣なことは行えないと拒否させて貰ったんだよ。
まぁペシュエ的には不満なようだったが、結局は俺に従ってくれたよ。
つまり、それほどの品が持ち込まれた訳で…里を侮っていた店員達は度肝を抜かれて戸惑っているみたいだ。
だから彼方へ向かう際に侮るなっと告げておいたのに、はぁっ。




