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生首と一緒に放り出された話

 そこから一夜明けた魔導院の廊下。

 お知らせなどを書き連ねる掲示板に以下の張り紙が。


『セラ・フィヨル――禁書庫への侵入、魔道書の無断持ち出しによる、謹慎処分』 

 

 それを見て、セラはがっくりと項垂れていた。

 その隣に同じように、頭を垂れる少女がいた。


『カレン・ローデル――禁書庫への侵入、魔道書の無断持ち出し、加えて許可のない危険精霊の召喚、契約による、放逐処分』


「あんた知ってたわね?」


「だって、最初に会話していたの、カレンちゃんだし、イラさんの反応からしてそうかなって」


 そして、その少し放れて男子院生が、恍惚と頬を染めている。


『グリン・ブレッド 院生女子の下着を窃盗、余罪多数、謹慎処分』


 肩を落とす二人の後ろ、イラは彼女たちを待っていた。


 ●


 活気で賑わう通り。

 そこに陰鬱な表情を貼り付けている少女が一人。

 カレンは少ない持ち物を袋に纒められ、それをポンと渡され、院を追い出された。

 国外からの入院なので、頼れる者はいない。

 学ぶことに全てを注いできたカレンの手持ちの金はわずかばかり。

 慎ましく暮らしたとしても、一月で干上がり、あとはそこいらの街角に立っている娼婦の仲間入りをする未来が見える。

 もう一つの財布袋取り出す。

 これはセラからの詫びと餞別。

 遠慮したのだが、必死の形相で無理やり握らされた。

 

――本当にもう恨んでいないんだけど。


 最初は原因である彼女に怒りも湧いたが、カレンはそこまで怒りが持続するタイプの人間ではない。

 それに二年間共に学び過ごしてきた親切な彼女を恨みつづけるのも、疲れてしまう。

 


――それになにより、怒りよりもグリンが気持ち悪くてしかたなかった。


「でも、いつの間にか契約してたなんて。――よし! 良い方に考えましょう。放逐されたけど、私は精霊と契約を済ませたわけよね。これって、一人前の契約士を名乗っても、問題はないんじゃないかしら?」


 召喚の法も、契約の理も修めてないなど半人前もいいとこ。

 だが、一足飛ばしで、契約をしてしまった。

 

「ここはイラに頑張って稼いでもらわないと。じゃないと共倒れになるわよ。わかった?」


『了解』

 


 独り言に見えるが、そうではなく、カレンの影から頭がニョキッと生えて言葉を返す。

 これも精霊種の能力らしい。


 昨夜、二人で話し合った。

 イラが帰るためにはカレンの協力は不可欠だし、か弱い少女が一人で生きていくのは厳しい。


 とりあえずの目標は金を稼ぐこと。

 カレンは生活のために。

 イラは彼を帰還させる魔道書をどうにか手に入れるため。

 いまさら追い出された魔導院の物を譲ってもらうことは期待できないので、帰還に関する他の魔導書を地道に足で探すしかない。


「とりあえず、酒場にいきましょう。そこで仕事を斡旋してもらえるらしいわ」


 うろ覚えの知識を頼りに、酒場を目指す。


――カレンが歩き出せば、響きだす阿鼻叫喚。


「――イラ、頭を引っ込めなさい。皆が怖がってる」


 少女の後をついてまわる生首はコクリと頷き、影の中に沈んでいった。



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