episode18 Luco
あるところに小さな村がありました。ほかの村や町からとても離れていたので村人以外でこの村を知る者はいませんでした。ここの村には名前がありません。村人はこの村しか知らなかったので名前をつける必要が無かったのです。
村人たちは村唯一の湧水から飲み水と畑に使う水を得ていました。周りの山は木々が少なく食べ物も貴重品でした。村人は貴重な水と食べ物を分けあって生活していたのです。
ある日、村に大雨が降りました。太陽が出ない日が一週間くらい続きました。その大雨の中、村を訪れる一人の大人が現れました。その人は肌が青くザラザラしていて焚き火の炎をとても嫌う人でした。言葉はまるでうめき声のようで村人の誰にも意味がわかりません、あまりに村の人とは違うので男か女かもわかりませんでした。
村人とはだいぶ違う風貌でしたが心優しい村人は「きっとどこかで道に迷った外国の旅人なのだろう」と思いました。旅人はとても疲れているようでこのまま放っておけば死んでしまいそうでした。村人はある家に旅人を泊めることにして貴重な水と食料を与えましたが旅人は水しか飲まずになんと土を食べ始めました。村人は外国の食文化に驚きました。
次の日は久しぶりに太陽が出ました。村人は太陽の恵みに酔いしれていましたがあの旅人は太陽をすごく嫌いました。太陽の出ているうちは泊めてもらっている家から一歩も出ずに眠っていたのです。村人は「異国では夜に起きて昼に眠る文化があるのだろう」と思いました。村人は外の世界のことを何も知らなかったのです。
その日の夜、旅人を泊めていた家の人の姿が旅人ソックリになりました。その様子にさすがの村人も不思議がっていましたが話を聞こうと家に入っても眠っているだけでした。それから夜が来るたびに村人は旅人のような姿になっていき、3日かかるうちに村人は一人を残して旅人と同じ姿になりました。最後に残ったのは小さな女の子でした。
女の子は旅人のようになりませんでした。旅人は自分の仲間を増やすために村人の姿を変えさせていったのですが村人すべてを仲間にしてしまうとこれ以上仲間を増やすことができなくなると思ったのです。獲物がなければ生きていけないライオンやトラに近いものが旅人にもありました。
女の子は旅人の仲間となった村人と一緒に過ごすことにしました。女の子は旅人たちに合わせて昼間寝て夜起きるようになりました。子供がひとりで食事や洗濯などをするのは大変でしたがなんと旅人たちがそれを手伝ってくれました。女の子が何かをしようとすると旅人がそれを真似て手伝ってくれるのです。女の子はいろんな合図を決めて旅人たちを動かしていきました。やがて女の子が働かなくても合図さえ送れば食事も畑仕事も旅人たちがやってくれました。女の子はお礼に旅人たちと一緒に遊びました。
女の子と旅人の不思議な生活が始まって数ヶ月、一人の旅人に異変が起こりました。旅人の一人の体が破裂したのです。女の子は「きっとこの村の環境が旅人には合わないんだ」と考えました。実際は旅人の体の中にある虫がいい加減に仲間を増やしたいと思って増えた結果なのですが女の子が分かるはずはありませんでした。
女の子は生まれ育った村を出ていく決意をしました。このままだと一人になってしまう、一人ぼっちじゃ食べ物を作るのは大変だし何より寂しいです。女の子は旅人たちに合図を送り、食べ物を持って村を出ていくことにしました。
しかし問題がありました。旅人たちは太陽が苦手だったのです。太陽の下に出てしまえば旅人はたちまち焼かれてしまうのも今の女の子はわかっていました。村の外は木々や洞窟などの日光を遮るものは何もありません。
そこで女の子は村を出るための拠点を作ることにしました。村から一晩で行ける場所に石で小さな建物を立ててその中に女の子の食べ物と旅人分の布団を入れました。旅人は土を食べるようなので旅人の分の食べ物を用意する必要はありませんでした。そうやって女の子と旅人は少しずつ村を離れていきました。その最中にも破裂する旅人は増えていきました。あやまって太陽にあたり焼かれる旅人もいました。2つ目の拠点を作り終わった頃には旅人は僅かにしか残らなかったそうです。女の子と旅人は作った拠点で太陽をやり過ごしやっとの思いで故郷とは違う村につきました。その村の入口には“ルル村”と書かれており、そこには旅人の仲間がたくさんいました。
ルル村の仲間は女の子の合図に従うようになっていました。今まで一緒だった旅人はこれからも女の子と一緒にいたほうが好都合だと思い周りの仲間に伝えたのです。リーダーという者がいるとみんなで効率よく行動できることを仲間たちは知ったのでした。
女の子はルル村の診療所を自分の家にしました。村で一番広い建物でベッドもあるので過ごしやすいと思ったのです。その診療所の奥の部屋に村で見つけたおもちゃやぬいぐるみを持って行きました。女の子はこういったおもちゃを見たことが無かったのでとても興味を惹かれました。ルル村の荒れた畑を耕して女の子の食べ物を作り始めました。この村には井戸というものがあってそこから水も得ることができました。
仲間たちは不意にルル村から出かけることがありました。そして帰ってくる頃には新しい仲間を連れてくるのです。女の子はどうやって仲間を増やしているのかが気になったのである日、彼らについていくことにしました。
女の子はこの日に初めて今までずっと一緒にいた仲間たちが“ヴァンパイア”と呼ばれ、人々から恐れられている存在だと知りました。外国人かと思っていましたがヴァンパイアは人を噛むことで仲間を増やす人類の驚異だったのです。
女の子は真実を知ってもヴァンパイアを恐れることはありませんでした。女の子にとってヴァンパイアは仲間であり友達であり家族だったのです。むしろ女の子は人間たちを恐れていました。このままでは仲間たちは人間たちに殺され続けてしまう・・・女の子はヴァンパイアの味方でした。女の子はヴァンパイアに指示して人間に負けじと仲間を増やしていきました。ヴァンパイアだって生きているのです、人間の勝手で滅亡させようなんてもってのほかだと女の子は必死で戦い始めました。人間にヴァンパイアを認めさせるために仲間を増やすだけではなく大きな街を攻め入ってヴァンパイアが生きていることをアピールしました。この世界はあまりにヴァンパイアに対して残酷だ。女の子は今もヴァンパイアをこの世に認めさせるために戦い続けています。
女の子の名前は”ルコ”・・・
おもちゃの冠をかぶり、つららのような髪を持つその女の子はヴァンパイアを従えるクイーンなのです・・・




