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皆の騒ぐ理由

え。ボチもあの夜、脱走してたって?


まあ元々二匹とも、夜に徘徊するヘキがあるやつらだけど……


にしてもあまりにもタイミングが合い過ぎじゃ。


それほどまでに動物たちを騒がせていた理由。


……クマとか!?


あ。てことは、いたかもしれないのか!


あの暗闇の中に!


無我夢中でハチかついで逃げたけど、危なかったな~。


いやまじで。


「おーいホームルーム始めんぞー」


担任の先生が入ってきた。


そこで俺の思考は分断される。


まあ。


とりあえずハチが大怪我しなかったからいいか!


――――――――――――――――――


昼休み。


「飯行こうぜ飯~」


「おーいくいく!」


友人の誘いに乗る。


俺の昼飯は基本的にはいつも弁当だ。


けどそれを作ってくれている婆ちゃんや母さんが忙しい日は学食で食べる、というのが我が家の暗黙のルールだ。


学食は教室棟から少し離れたところにあり、渡り廊下を通って行く。


渡り廊下の横には学内のゴミステーションが見えている。


そこに……


一羽のカラスがいた。


袋に詰められたゴミの周辺を、何やらついばんでいる。


その動きをジーっと眺めながら歩いていると……


カァ


そいつがこっちを見た。


カラスはとても頭がいいらしい。


俺の発する殺気(笑)を察知したんだろうか。


ジー……。


無機質な目でこっちを見ている。


鳥って無表情だから、なんか不気味だ。


……というか生ごみをあさるのはやめてもらわねば。


俺はそこに転がっていた松ぼっくりを拾う。


そして、投げる!


コンッ! ……コロコロ


あくまでも威嚇なので、当てる気はない。


松ぼっくりはカラスのすぐ横に転がっていった。


しかし全く動じる様子はなく、再びゴミ袋の周辺をつついている。


もう一回。


今度はこのジャンボ松ぼっくりを……。



※ジャンボ松ぼっくり

なんかたまに公園とかに落ちている、普通の松ぼっくりとは一線を画する巨大な松ぼっくりのこと。



拾い上げて振りかぶった、その時。


カラスが顔を上げてこっちを見た。


「むっ」


俺は振り上げた腕をピタッと止める。


バサバサバサ……


カラスは飛び上がってその場所を離れる。


「何やってんの?」


俺の後ろから、呆れたような声が飛んできた。


この声は……。


「おー照山(てるやま)ー。こいつカラスと真剣勝負してたわ」


一緒にいた男友達が、照山紅葉にそう声をかける。


「ユーヒって昔からそういうとこあるよね」


どういうとこだよ。


「いや、今のは勝負じゃなくて教育的指導だろ」


「その差がよくわからん」


早くいかないとアンタの好きなカレー、なくなるよー。

紅葉はそう言って手をひらひらさせながら、食堂に入っていった。


くそっ。あいつめ。いまだにお姉さんぶりやがって!

半年先に生まれただけで!


俺はカラスの飛んだいった方を見上げた。


するとそいつは中庭の木の上に止まり、まだこちらを見下ろしていた。


感じ悪い奴……。



――――――――――――――――――――


放課後。


俺は柔道部員である。


けど全然強くもないし、練習態度もまったく真面目ではない。


つまり、今日はさぼる。


そしてちゃんと部活に行こうと準備している紅葉を呼び止める。


「今日お前んち行っていい?」


「え、なんで?」


紅葉は弓道部。俺とは違って練習態度はまじめで、実力も実績もある。


「ボチと話がしたくて」


「ちょっと何言ってるかわからんけど、爺ちゃんはおるよ」


「さんきゅー」


紅葉の家は寺だ。爺ちゃんが坊さん。


確かおっちゃんとおばちゃんは普通に街に働きに出てたはず。


俺は小さい頃からよく遊びに行っているので、別に紅葉が居なくても気にしない。


少し回り道になるが、俺は照山家に向かった。


――。


その途中、例の『落雷で壊れた道祖神の祠』のところまでやってきた。


「ここか……」


近所のおじさんや、帰宅途中の中学生などが、数人うろうろしている。


ふむ。


見事に木っ端みじんである。


周辺には木の燃えカス? のような黒い汚れが点在している。


俺はしゃがみ込んで、そのススを指でこすってみた。


うーん……。


完全に燃え尽きてるから分からんけど……

これは炭なんかな?


あのときハチはここで何かとケンカしてたんだよな……。


てことはこの黒いのって、その『何か』の燃えカスの可能性もあったりして?


スリィィィ


突如、やわらかく肉厚な何かがぶつかってきた。


ん?


振り向いたところにいたのは。


「ハチ!」


……。


めちゃくちゃ無表情でこっちを見ている。

まあ、ネコだしな。


「てかお前、ケガ大丈夫なのかよ」


俺は、お座りしているハチの身体をまさぐる。


一切抵抗することもなく大人しくしているハチ。


こういうところは妙に貫禄がある。


ハチは俺の指についている黒いカスをくんくんと匂い始めた。


フンッ


そして鼻息で吹き飛ばす。


さらに祠の周辺を嗅ぎまわり始めた。


「おいおいあんま嗅ぐなって。そんな綺麗じゃないだろ」


フンフンフンフンフンフンフンフン


長っ


長いのよ。こういう時って。


その時――。


カァ


カラスが飛来して、道祖神の頭に着地した。


ハチがぴくっと耳を上げ、そちらに振りかえる。


「お?」

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