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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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それは複雑な話

 アリサからメッセージが来たのは、朝の配信が終わった後だった。


「今日、時間ありますか。天城さんと一緒に話したいことがあって」

「何の話ですか?」

「直接話した方がいいと思って。夕方、協会の近くのカフェで会えませんか?」


「分かりました」

 レンはメッセージを閉じて、少し考えた。

 アリサが「直接話した方がいい」と言うのは珍しい。


 普段はメッセージで済ませることが多い。

(何かある、のはなんとなく分かる)

 でも今日の配信があるので、まずはそれをやることにした。



 朝の配信は、サクラと二人での探索だった。

 地下三階の西エリア、まだ踏んでいない通路を進む。


「今日もよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。あ、おにぎり持ってきました」

「ありがとうございます。今日は何ですか」

「昆布と、あと試しに明太子も作ってみました」

「明太子、食べたことないな」

「え、ないんですか」

「コンビニで昆布ばかり選んでたので」

 サクラが少し笑った。


「今日は明太子も食べてみてください」

「食べます」


【精霊王シルフィード】:明太子!!!

【古代龍バハムート】:……明太子か

【新規さん】:バハムートさんが明太子に反応した

【古代龍バハムート】:していない

【新規さん】:昆布のときも同じこと言ってた笑

【mukai_b_rank】:バハムートさん、食べ物の話のとき微妙に反応しますよね

【古代龍バハムート】:…………


「バハムートさん、何か食べ物の好みがありますか」


【古代龍バハムート】:ない

【新規さん】:絶対ある

【古代龍バハムート】:…………ない

【精霊王シルフィード】:えへへ!!


「シルフィードさん、知ってそうですね」


【精霊王シルフィード】:へ?えへへ


「やっぱり知ってる」

 コメ欄が笑いに包まれた。

 バハムートはそれ以上何も言わなかった。



 西エリアに入ると、空気が少し変わった。

 他のエリアより、魔力の流れが複雑だ。


「なんか、ここ変な感じがします」

「変な感じ、というのは」

「魔力が渦を巻いてる感じ。一方向じゃなくて、色々な方向に流れてる」


【賢神ソフィア】:交差点のようなエリアだ。複数の魔力流が交わっている。魔物の動きが予測しにくくなる

【古代龍バハムート】:感知を広げすぎるな。情報が多すぎると判断が鈍る


「感知を絞る感じですか」


【古代龍バハムート】:そうだ。広く薄く感じるより、近距離に集中しろ


「やってみます」

 レンは魔力感知を意識的に絞った。

 半径十メートル以内だけに集中する。

 渦のような感覚が落ち着いて、近くの気配がはっきりした。


「あ、前方五メートルに二体います。壁の中に潜んでる気がします」


【賢神ソフィア】:ストーンゴーレムだ。石壁と同化して待ち伏せる習性がある

【ダンジョンオタク_ケイ】:感知を絞るだけであれだけ精度が上がるんですね

【mukai_b_rank】:しかも石壁の中に潜んでるのまで分かるの?


「なんとなく、岩じゃない感じがするところが二箇所あって」


【mukai_b_rank】:「なんとなく」で石壁の中の魔物を感知するの、もう慣れてきたとか笑


「サクラさん、後ろを固めてください。飛び出てきたとき、数が増える可能性があります」

「了解です。後ろ、安全確認しました」

 レンは壁に向かって、炎を集めた。

 壁に当てるのではなく、壁の表面をなぞるように流す。


 するとゴツ、という音がして、壁の一部が動いた。

 ストーンゴーレムが出てきた瞬間に、雷を叩きつける。

 一体、沈む。

 もう一体が反対の壁から出てきた。

「左後ろ、出ました」


 サクラの声。

 レンがすでに向き直っていた。

 炎と雷を組み合わせて、連続で放つ。

 二体目も沈んだ。


【新規さん】:え、壁の中から炙り出した

【新規さん】:しかも二体同時に処理した

【ダンジョンオタク_ケイ】:炎であぶり出して雷で仕留める発想、初めて見た

【kirishima_arisa】:(あの組み合わせ、誰かに教わったわけじゃないはず。その場で思いついた?)

【古代龍バハムート】:良い判断だ

【雷神トール】:加護の使い方が上手くなっている

【精霊王シルフィード】:すごいすごい!!


「ありがとうございます。サクラさんの声かけで後ろが安心できました」

「たまたま見えてただけです」

「たまたまじゃないですよ」


【mukai_b_rank】:二人の連携、本当に初期と別人みたいだな

【探索者見習い_ハル】:サクラさんの後衛力、どんどん上がってる



 探索を終えて地上に出た後、レンはサクラに言った。

「今日の夕方、アリサさんとユイさんから話があるみたいで」

「何の話ですか」

「分からないです。直接話した方がいいって」

 サクラは少し考えてから言った。


「私も行っていいですか?」

「はい、来てもらえると助かります」


 サクラはレンを見た。

(この人の「なんとなく」は、いつも何かある)

「分かりました。行きます」



 夕方、協会近くのカフェ。

 アリサとユイが先に来ていた。

 レンとサクラが入ると、アリサが少し安堵した顔をした。


「あ、サクラさんも来てくれたんですね」

「一緒に聞いた方がいいかと思って」

「そうですね。その方がよかったかもしれない」

 四人がテーブルを囲んで座った。

 ユイがパソコンを開いた。


「単刀直入に話します」

 ユイらしい始め方だった。

「先日、協会の古い文書の中に「候補者」という言葉が載ったファイルを見つけました」

 レンとサクラが少し顔を見合わせた。


「候補者、というのは?」

「代行者候補、という意味で使われていました。二十年前の内部文書です」

 ユイはパソコンの画面をレンたちに向けた。

 断片的な文章が並んでいる。


「読める部分だけ説明します。「候補者は自覚のないまま成長する、これが制度の前提である」

「代行者候補の特徴:ダンジョンの魔力への異常な親和性、ジョブクラスを超えた戦闘能力の発現、自覚のないままの成長」とあります」


 静寂が落ちた。

 レンは画面を見つめた。


(ダンジョンの魔力への異常な親和性、ジョブクラスを超えた戦闘能力の発現、そして自覚のないままの成長)

 一つ一つを確認するように読んだ。


「……それが、僕のことだということですか?」

「断言はできません」とユイが答えた。

「でも当てはまる項目が多くて」

「確かに全部ですね」

 レンは静かに言った。


「全部、当てはまります」

 アリサが少し眉を上げた。

「驚かないんですか」

「驚いている、とは少し違くて」

 レンは少し考えながら言った。


「なんか、そうかもしれないなと、うすうす感じてたような気がして。うまく言えないですけど」


「うすうす感じてた」とサクラが繰り返した。

「それをちゃんと言ってほしいです」

「言葉にするのが難しくて。バハムートさんが「知っている」と言ったこととか、颯真さんが「同じ種類かどうか確かめたかった」と言ったこととか。

全部が繋がってる気はしてたんですよね」


 四人の間に、しばらく静寂が落ちた。

 先に口を開いたのはアリサだった。

「それに颯真さんも同じ候補者だと思っています。私とユイさんは」

「そうだと思います」とレンが頷いた。

「驚かないですか」


 ユイが続けた。

「候補者制度が何を目的にしているのか、文書からは読み取れていません。

ただ「代行者を立てて競わせる」という記述が断片的にあって」

「競わせる」

「そうです。複数の候補者が、何かを競う形になっているようで」

 レンはしばらく黙った。

(競わせる。颯真と僕が候補者なら)


「颯真さんと、戦うことになるということですか」

「可能性としては」とアリサが慎重に言った。

 また静寂が落ちた。

 レンは少し考えてから、言った。


「分かりました」

「分かりました、って」とサクラが少し語気を強めた。

「それだけですか?」


「それだけ、というか」

「怖くないんですか」

「怖い、かな」

 レンは少し考えた。


「怖いという感覚は、まだないですね。実感がないというか」

「実感がないのは分かります」とアリサが言った。


「私もこれを知ったとき、すぐには実感が湧かなかったので」

「でも」

 レンが続けた。


「颯真さんと話したとき、この人はいずれ向き合う相手だなとは思ったんですよね。なんとなく」


「なんとなく感じてたんですか、それも」

「はい。だから今日の話を聞いても、そんなにびっくりしなくて」

 ユイが小さくため息をついた。



 しばらく話してから、アリサが言った。

「一つだけ聞かせてください」

「はい」

「颯真さんと戦うことになるとして、レンさんはどうしたいですか」

 レンは少し間を置いた。

「戦う前に、ちゃんと話したいです」


「それでも、話でも戦うことになっても?」

「そのときはそのときで考えます」

「楽天的ですね」とユイが言った。

「よく言われます」

「でも」


 ユイは少し笑った。

「それがいいと思います」

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― 新着の感想 ―
前からそんな感じだったけどもう完全に斥候要らずになってるなぁ。 神様達の補助もあって2人パーティーなのにこの安定感よ
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