◎不夜城 夜明け 乙女ゲーム、設定という名の運命②
いつも読んで頂きありがとうございます
大分伏線が回収されてまた新しい伏線が…コレがよく言うイタチゴッコか?
今回、トビアス君頑張ってます
乙女ゲーム知ってるの、君だけだからのう
ヒロインちゃんは寝てます(笑)
トビアス君頑張れ! 回です
お楽しみくださいませ
◎ボクらはみんな生きている 生きているから運命に逆らうんだ。
「で、ちょっと確認したいことがあるんですが…トビアス君?」
僕的にちょっとじーんとしてきたのに…ミネルバ卿が眼をきらーんと、獲物を見定める眼で僕を見ている。
なんか、ヤバイ?
「俺の色変わりについてナニか知ってるのか?」
ブッコンで来た。
「乙女ゲー、タイトルなんだったっけ? 」
これ、誘導尋問?
一瞬で王城の職員食堂が警察の取調室になった。
被疑者、僕。
話をしなくてはいけないだろうか…あまりいい話ではないが。
「お兄さんが言っていた色が変わる前って」
「髪色は前と大して変わってないと思う、アッシュグレイに黒が増えて銀がまじった位」
「眼が普通の黒茶から赤金に」
こともなく言うミネルバ卿、自分のことなのに。
「紅い縁から中央に向け金色に近い金赤になっている? 」
ミネルバ卿、眼鏡に手をかける 魔道具なのだろうな、それ。
目を確認させてくれるのかと思ったのに、ニヤリと嗤って両手の平で眼鏡の両端を抑えて微妙な力加減で上下に高速で振ってきた。
いや、みょんみょんとか揺らさなくていいから(笑)
子供か!
腹筋を押さえてテーブルに突っ伏しかけた僕を、してやったりと言う笑顔で見下ろすミネルバ卿。
…いい大人がやることか!
空気読まない羊侍女がミネルバ卿の分の昼食を持ってきて並べる。
ふんふんとマイ箸をポーチから出すミネルバ卿。
カトラリーはお箸なんだ。
「君とは眼鏡取って対峙したことはなかったと思うけど、良くわかるな」
眼鏡外したくないのだろうか。
顔が怖い、目が怖い。
箸使いが上手い。
人を揶揄いながら秒で空気を変える。
何だろう、背筋がぞわぞわする。
ミネルバ卿のやり方なんだろうか、そうやって人を落として口を軽くして情報を引き出す。
「…乙女ゲームの…〈ノイエクラッセの薔薇姫 王国の守護者〉の攻略対象の一人、第一王子の護衛騎士がホーク ゲイガン ミネルバ、東の辺境伯家の次男と攻略本にありました」
「兄貴か…」
少し、眉をひそめて嫌そうな顔をする。
仲は悪く無さそうだけど?
でも食の手は止めない。
会議場で会った、日本刀をひっさげたミネルバ卿に似たイケメン。
猫侍女と互角な戦う剣鬼。
現在、騎士団統括局副長と紹介された。
「前世でフィギュア作ったことあります カラーは違いますが」
箸を持ったままで止まる。
ミネルバ卿が顔を両掌で覆いながらうつむいた。
僕はそれを見ているしかない。
「ゲームの中でホーク氏はアッシュグレイに黒と銀が混じった、丁度ミネルバ卿と同じ色でした」
両手を顔から離す。
握っていた箸を置く。
俯いたまま。
「兄貴、黒に一筋銀が混じった黒多めだ、瞳は赤茶」
「兄上とカラーが入れ替わってますね」
第一王子の護衛騎士という役割も入れ替わってます。
「俺って名前も出ないモブじゃなかったのか? 」
一つ、可能性があった。
「子供の頃、長男さんと一緒に誘拐されてませんでしたか? 」
ミネルバ卿が顔を上げた。
「その話、君にしたか? 」
言うしかあるまい。
「ゲームの設定集にありました。東の辺境伯の子供は8人、一人子供の頃に誘拐犯に長男の代わりに殺されて、そのせいでホーク氏は第一王子に弟の影を見つけて弟の代わりに可愛がるという設定があるんです。」
微妙な眼のゆらぎがある。
「その、殺された子供が俺か」
「多分」
凄い渋い顔しているが大丈夫か?
「二兄は親より俺に過干渉で面倒見て遊んでくれた」
地下会議場でのやり取り見てたけどミネルバ卿と相性良さげだった。
「…子供の頃、川でパンイチで長兄と遊んでいて誘拐されたコトがある」
「パンイチ…」
服位着せてあげてよ運営。
「殺されなくてよかったですね…かぼちゃパンツで」
「誘拐犯は一人残して俺が全員シメたがな」
歪んだ嗤いを残すミネルバ卿。
シメたって、殺したってことか。
本当に、この世界は命の価値が安い。
東の辺境は治安がよく、子爵とはいえ貴族の僕は現世に近い快適な生活がおくれているが、他の領地に行けば誘拐の可能性も盗賊に身ぐるみはがされて殺される可能性も高い。
だから正当防衛での犯罪者への殺人は罪なしとされる。
…子供でも。
「俺は前世での仕事はよく覚えていない」
食事を再開して、とつとつと語りだすミネルバ卿。
「ゲームで狩りをして肉焼いて、覇権争いに無双、ほとんどゲームのことや食べ物の事しか思い出さないんだが」
まっすぐ前を向いて僕を見る。
「血の臭い、火薬の臭い、拳銃の扱いに関しては図面を書ける程熟知している、人を殴る感触 刃物が肉にめりこむ感触を思い出すことがある」
「多分、前世で躊躇なく殺人が出来る環境にいたからか、昔から禁忌の枷は無かった」
ミネルバ卿の瞳にハイライトが無い。
「それに今の人生も子供の頃から辺境在住で討伐の為の軍事訓練もしてたから其処は気にするな」
それは…。
ごくり、と息を飲み込んだ。
「君の話を聞くと、その乙女ゲームの分岐の一つが俺なんだろうなあ」
ミネルバ卿は天井を仰いだ。
「俺、モブじゃなく異物だったのか」
ミネルバ卿は自分をこの世界の〈異物〉だと語る。
昔から違和感があったと。
ディーオイレ ミネルバ卿が誘拐されても殺されずに生き残り、ホーク ゲイガン ミネルバ卿と入れ替わった。
「誘拐されて長兄担いで帰って来た時、二兄が泣きそうな顔してたのが不思議だった」
それは兄弟が殺されかけたのなら不安だし、心配しただろう。
「俺が殺されても後継の長兄が無事なら問題ないと言ったら鬼の様な顔で説教された」
…この護衛騎士は己の命が軽いと思ったら昔からなのか。
「その時は前世の記憶とか全然思い出せなかったが」
箸を置いて眼鏡をはずす。
「元々の素養とか倫理観が違ったのか」
前世で僕が作ったフィギュアと顔は違うがカラーは同じ東の辺境伯家の子供、アイン殿下の護衛騎士。
「クソかよ」
思い切り天井に顔をそらせ、天に向かって吐き捨てた。
わかっているつもりだった。
僕が出逢ったホーク氏やミネルバ卿、アイン殿下はゲームとは違う人間だ。
そう考えながらも前世で観た攻略本をさらっていたのは自分。
「ゲーム中では国王陛下は生きていましたし、アイン殿下達、攻略対象者の年齢も違います」
乙女ゲーの世界。
設定という名の運命がずれている。
〈ノイエクラッセの薔薇姫 王国の守護者〉
薔薇姫の尊称を受けた16歳の男爵令嬢が学園で繰り広げる恋のゲーム。
ヒロイン、前半は恋を、学園でのイベントを楽しみ。
後半は国の、世界の命運をかける戦場へ。
アイン殿下が〈最難関攻略対象〉で 後半は敵になる。
身分差での結婚を周囲に反対された殿下は闇落ちした暴君となる。
「おかしいだろ? 攻略して恋仲になって敵になるって」
「僕に聞かれてもわかりませんよ」
ため息が出る。
「僕は前半、尊称がナビゲーターなのに後半はアイン殿下の手下1とかツヴァイ殿下の手下2ですぐ死にます」
そのための二つの尊称、〈ナビゲーター〉と〈ゴーレムマスター〉、ゴーレムマスターの尊称は後半戦いの中で必要になる。
正しくヒロインに殺される為。
僕の運命はゲームの設定どおり、もう嗤うしかない。
「尊称…トビアス君の尊称は 〈ナビゲーター〉と〈ゴーレムマスター〉の二つなのか」
「攻略対象には、ほぼ尊称がつきますよ」
「クソだな」
天井を仰いで呟いていたミネルバ卿がふと、顔を正面に向ける。
「トビアス君は俺以外の尊称持ちに会ったことあるか」
「いえ? 」
ミネルバ卿の尊称は〈護国の盾〉。
知らないだろう…国を、ヒロインを守るため盾となって消えるということは。
それを今告げていいのだろうか?
「ミネルバ卿は会ったことあるんですか? 」
「というか、それなら周りにいる連中全員尊称持ちじゃね?」
「ああ…」
今度は僕が天井を見上げる。
ふと、思う。
「皆、自分の尊称を知っているんでしょうか? 」
首をふるミネルバ卿。
「知ってたらお互い解ると思うな」
?
何故?
「どういういことですか? 」
「確認したわけではないが、どうも尊称持ち同士でお互いが尊称持ちだと自覚していれば話さなくとも解る」
「? 」
「トビアス君の作ったアイン殿下のフィギュアは尊称持ちだった」
はい?
知らない、そんな話! 設定にはなかった。
尊称は一部入れ替えできるが…。
まさか!
僕は勢い眼を剥いた。
僕の顔にびっくりしたミネルバ卿が大丈夫かと声を、かけてくる。
そういえば僕とミネルバ卿の時はどうだったろうか?
前世で読んだ設定集で最初から尊称があることは知っていたから…。
「声が聞こえた」
怖!
「フィギュアを見ていたらノイズ混じりのゲームの音楽と声が聞こえた 〈Blank〉と」
多分、僕の顔から表情がぬけた。
ミネルバ卿が眉をひそめ、本当に大丈夫かと身を乗り出して僕の額に手をあてる。
それ程僕の顔色は悪かったのか。
「Blankは…アイン殿下の尊称です」
額に当てていたミネルバ卿の手が固まった。
その手に視界を奪われて卿の表情が見えない。
「意味は空白、削除」
「削除…」
卿の声に抑揚がない。
何を、誰を?
僕も感情が抜けた気がする。
尊称。
なんで今まで忘れていたんだろう。
何故かミネルバ卿は僕の額に手を置いたままだ。
視界の半分が遮られ、ミネルバ卿の顔が見えない。
「俺はアイン殿下の護衛騎士だからアイン殿下を守ることが絶対だ」
解っています 騎士とは主人に絶対の忠誠を置く者。
「君とは転生仲間で友達だと思っている」
心の友と書いて心友とかいってたな。
ミネルバ卿にそういってもらえるのは光栄です。
「だから君を殺す事になったら怖くないよう、苦しまないように一撃で首を落とすから」
相変わらず僕の額にはミネルバ卿の掌があった。
顔は見えない。
見えないけれど掌が熱い。
ミネルバ卿の言葉が切れたのでこちらから聞いてみた。
「ミネルバ卿から預かったフィギュア、修理してもいいのでしょうか? 」
尊称を持つアイン殿下のフィギュア。
アイン殿下本人は何の尊称を持っているのだろうか。
尊称は一人に一つ、他は。
WORLD
賢者
語り部
護国の盾
裁定者。
「他の人間には秘密で修理してくれ」
視界が開けた。
ミネルバ卿は平常心で椅子に座りなおす。
羊侍女も猫侍女も動いていない。
普通にミネルバ卿だ。
あの地下の会議場の休憩室で見たミネルバ卿は死神のようだと感じたコトは案外当たっているのかもしれない。
フラグか!
でも、ヒロインに殺されるよりミネルバ卿に殺される方が楽に死ねそうだ。
「なんなんだろう この世界」
命が軽すぎて笑える。
戦争で死ぬのは嫌だが、ゲームのストーリーで殺されては堪らない。
何でこの世界は乙女ゲームなんだろう?
何故ミネルバ卿は生き残ったんだろう。
殿下方の年齢が恋愛対象年齢じゃないのは何故だろう。
多分、僕の推測では、今のアイン殿下の尊称は。
〈裁定者〉
あの地下会議場でそう名乗っていた。
アイン殿下自身はそれが尊称で己の運命を縛るもねと、気が付いているのだろうか。
あれ?
〈裁定者〉って? 思い出せない。
攻略本で読んだはず 主要攻略キャラの尊称は覚えている。
なのに〈裁定者〉が思い出せない。
WORLD
これは薔薇姫が最終攻略対象を落とす時の尊称。
賢者。
第四王子の尊称 母親の実家が学者の家系だからか。
語り部
これはアイル氏の尊称のはず。
この三つの尊称は移動が出来ないが死ぬ要素はない。
護国の盾
ミネルバ卿の尊称。
戦いの中、国を 薔薇姫を守る為に魂すらも盾にする…。
このゲームのハイライトシーンで、この場面はスチルではなくアニメで表現されていた。
運営のキモ入りのシーン。
物語としては感動シーンだが、実際に人が死ぬのは嫌だ。
それが知り合いとか、素直に感動シーンとか言っていられない。
僕たちはこの世界で生きている。
ああ。
ミネルバ卿と知り合わなければ良かった。
ゲームのスチルの中のように只のイケメンだったら心は痛まないだろうか?
ちょっとガキ大将で脳筋で意地が悪い笑いがデフォルトで子供好きで… ポケットにアイン殿下が好きな飴が常備されているのを僕は知っている。
アイン殿下とも会わなければ傍観者でいられただろか。
大人の口調で、感情なんてないような顔して…子供なのに…もちもちの子を触るとき、無表情だったのに口角がちょっと上がる。
ウトウトすると左右上下に揺れて丸わかりなのに時々シャキッと寝てない風を装う殿下。
多分あひる隊の四男坊がおきにいりだと思う。
何も知らなければ何もかも見捨てて身一つで逃げられたのに。
何も考えなければゲームの、運営のコマの一つとして思い悩むことも無かったのか。
「人間って本当に面倒」
ぽつりと本音が出た。
「もう、ミネルバ卿が王様になって下さい」
だからつられて弱音を吐いてしまった。
ギョッとするミネルバ卿。
「やめて」
ぶるんぶるん首をふるミネルバ卿は、きゅーんと雨に濡れた大型犬のような情けない顔をしている。
サイコパスなミネルバ卿は何処に?
さっきまで人を殺す前のような硬質な感じがしていたのに?
「でも、ゲームの話と大分違ってくるから戦争もなくなるかもしれない」
それは本音。
「それは無理だよ、俺 しがない田舎貴族だもん」
もんってなんだよもんって デッカイ脳筋が!
「辺境伯家を自分で田舎貴族とか言われると寄子や関係各家も田舎貴族になりますから、本家の方がその発言はヤバイです」
あっ、という顔をするミネルバ卿。
本当に脳筋。
「大体誰がそんなこと言っているんですか? 」
誰だ、責任者出てこい。
「国王、側妃他貴族」
ちくしょう 箪笥の角に小指ぶつければいい…毎日。
僕の怒りにビビる? ミネルバ卿。
「こないだの会議場でも思ったけど、君 ナニか国王陛下に恨みある? 」
恨み?
段差で躓くがいい…毎日。
「この恨み晴らさでおくものか……」
つい、昏い顔で呟いてしまった本音。
「何ソレ怖い! 」
靴に小石が入ればいい…毎日。
「何があったんだ? 」
ミネルバ卿、いつの間にか二人分のお昼とみたらし団子を完食してる。
早い!
団子に付属していた食後の緑茶をふーふーしながら僕の愚痴を聞いてくれるらしい おじいちゃんか。
聞いてくれるなら話した方がいいだろうか?
運営という存在。
設定と言う名の運命。
と、衝立をノックする音が聞こえた。
タイミングが怖い!!
トビアス君、描きやすく纏め易いし
名前もマトモ。
そんな彼には何が憑いているのでしょうか
次回、乙女ゲーム、攻略対象交代か?……どうする運営?
※予告は未定、話半分で。




