閑話休題 筋肉は裏切らない 弍
かぼちゃパンツ:「ほ…本編は何処行ったー!」
ふんどし:「アイン殿下のキャラ立てたかったんだよぉー」
……:ステーキ肉はキャラ立っている…。
まだ暫く続きます お付き合い下さりませば幸いです
◎ 廻り踊る大胸筋
「ゴブリンキング狩った」
誰かがゴブっと咽せた。
ドヤったミネルバ卿の声は横の護衛騎士、近くの文官、宰相の動きを止めた。
私の脳内で魔物図鑑がパラパラとめくれ、特定の情報のページで開かれる。
【ゴブリンキング:(ゴブリンの上位種)ユニーク個体 群れが巨大化し社会性が現れる時、稀に出現する ゴブリンを統べるもの。】
まるっと辞典2ページ見開きで掲載されていたメジャーな魔物。
「稀に…ってどのくらいの規模になると出現するんだろう」
私は組んだ手の甲に顎を乗せて考える。
図書館の本にあった魔物図鑑には痩せて腹が出た緑の皮膚で耳の尖った8歳児童位の子供を悪辣にしたような図があった。
無論、ゴブリンはぱんいち…である。
「ゴブリンは腰布一枚かふんどし一枚です」
元冒険者、踊るランク詐欺なミネルバ卿がこっそりつぶやく。
かぼちゃパンツではなかった。
「ふんどし…とは?」
「たまに王城の空飛んでます(笑)」
知らんがな!
「何故そこを気にするんですか」
横で書類を捌く宰相が不本意極まりないという顔でツッコむ。
にまにま、ミネルバ卿がしたり顔。
「下世話な話が大好きな年頃じゃないですか殿下」
わかってますよ、と意味ありげにこちらを見てる にまにまにま。
これが風評被害か。
「ウチの殿下は風で飛ばされるふんどしなんざ興味ありません!」
ぷんすか宰相、言ってしまったよ奴の名を。
「ふんどし位で怒らないでくださいよ、オカンですか?」
…ミネルバ卿がよく言う《おかん》とは…? ゴブリンの腰布ではなく王城の空を飛ぶふんどしにも興味あるが…。
皆わかってて使っているのか? 《おかん》。
何だろう、今度調べてみよう。
ちょっと気分が浮上した。
この図書館棟の執務室はいい、休憩時間は読み放題、調べ放題 図録の美しさ、書物の多さ、物珍しい書籍……。
図書館猫館長は柔らかく暖かい。
私はこの王城から外には出ない。
今、空を見上げても昼の青空ではなく射干玉の闇に光る星々と煌煌と照る月の世界。
私はいつか青い空というものを見られるのだろうか。
…旗めくふんどしはいらんがな。
「東の辺境伯は自分の子供達を狂戦士に育てる気なんですか?」
私が空の色を愚考しているとミネルバ卿のゴブリンキング討伐の話が進んでいた。
凶戦士を育てるとは物騒な。
おどけたミネルバ卿は宰相を揶揄うオーバーリアクション。
そんなミネルバ卿を放置したままの護衛騎士は腕を組んで壁に寄りかかったりボーッと立っていたりする。
宰相を揶揄う同僚を止めろよ! 護衛騎士!
「東の辺境では子供は大事にされてますよ、自主性は大事です」(笑)
自主性(笑)って…。
「放任主義? 」
「違います 子供の自主性を大事にしてます」
…宰相何かいいたげだが本人がそういってるなら、そういうことにしておこう?
「子供にゴブリンの巣の殲滅を指示するのは子供の自主性とはかけ離れてないか?」
「ウチの子供らは皆血気盛んなんでご近所にゴブリンの巣が出来たなんて聞いたら好奇心を押しとどめられず…兄ちゃんたちと示し合わせて親に内緒で行っちゃった」
ステーキ肉がてへぺろしてる……近所って?
「あの時は領地の国境沿いの緩衝地帯から隣国にかけてゴブリンの大規模集落が出来ちゃったのに隣国は不干渉とか無視かましやがって」
隣国は国境沿いの色々な問題をなあなあと、こちらに押し付けてこようとする。
隣国あるあるだよそれ。
「こちらから軍を出せば侵攻を疑い軍を嗾しかけて来るのが分かってたから親父たちが冒険者ギルドにこっそり偵察依頼入れて大規模レイドを計画してたのを兄貴が気付いてミネルバ家の子供達だけで集落潰して親父と冒険者ギルドに恩を売ろうって、兄弟間で話し合って決めたんですよ」
恩を…売るのか。
「要は単純に暴れたかったんですがね」テヘペロ。
東の辺境伯! やっぱり狂戦士育てている。
すごい胡乱な顔の宰相、この人は世界に落胆したような渋い顔をしているが子供好きで養子を3人とって育てている。
そして子供の問題には敏感、子供の過剰労働や親による虐待問題などに精力的に取り組んでいる。
関係ないが奥様は儚げな美少女(ロりか! )との噂。(ロりだ! )
「んで、先に俺らで大人の冒険者雇って冒険者親子を装って国境往ったり来たりして隣国で集落を抑えたんですよ」
外交問題になるぞ、こら。
「確か冒険者は友好国での魔物の討伐に関しては出入り自由だな それでも子供達を行かせるなよ、辺境伯」。
と、バリエ、ミネルバ卿は一応上司になると思うが気安い口調でため息をついた。
私付きの護衛騎士 の一人 バリエ シュピーゲルング。 侍女達の間でのイケメンランク高位者だ。
平民出身故に貴族子息より人気が下がるらしいが腐っても有名どころの商会の三男、金はあるらしい。
私には関係ないが魔眼で見ると黄色い雷鼠が何処かにひっついてる なぜ雷鼠……。
「ゴブリン集落の討伐は騎士の討伐訓練に使われることもあるが規模によっては1個旅団出すぞ? 学園の遠征授業の時も学年単位で150人位いたな…、それを子供と冒険者だけって」
「その時は長男から俺4男坊まで4人と冒険者10人位か」
「「「少な! 」」」
宰相以下声がハモる。
「俺がゴブリンキングを倒しました」
笑顔のステーキ肉が親指立ててウインクしている。
…鼻が伸びてる……。
その隣で壁に寄りかかって腕を組んでいたバリエの頭にぺったりと乗っている黄色い雷鼠がステーキ肉を狙っている。
肉食か雷鼠!
そのまま顎の下で組んでた手で顔を覆った。
逃げろステーキ肉!
この頃、魔眼の調子が悪い。
ステーキ肉幻視以来私の魔眼は時々調子が外れたモノを幻視させてくれる。
宰相の頭にはデイジーの花輪が置かれてその上を美少女風の妖精が飛び、ぼんやり立って話に入っていないバルトの周りは風刺画に描かれるような顔のついた火の玉がやる気満々で筋肉質の腕を振り回しながら飛び回っている…… 本人のやる気を本人以上に体現している火の玉小僧。
困ったな…表情筋が仕事しないのに腹筋が割れそう。
ふと、あの未来視を思い出す。
血塗れのミネルバ卿は笑っていた。
〈生きていればもうけもんだよ〉
あれは誰の言葉だったろう……。
ミネルバ卿の東の辺境伯家の自慢は未だ続いていた。
なんだか…ミネルバ卿を視ていると私にもステーキ肉や雷鼠がくっついていないか気になる。
…かぼちゃパンツとか憑いてないよな?
魔眼が発動している今なら鏡で確認できるか?
と。
周辺を見回していたら真正面、執務室のドアの前に立つ男と目があった。
違和感。
私の執務室は文官達の執務室の奥にある。
文官達の部屋と私の部屋を仕切るドアは無いが何か投げ込まれたり、一直線に襲撃されないよう入口からは見えないようになっていた…はずなのに見通しよくなっている。
誰かが少しずつ家具や衝立を移動した?
獲物を真正面に捉えるため。
正解、と言いたげににやりと男が笑って鈍く光るものをこちらに向ける。
ボウガン?
北の部族の一部が狩りに使う小さい弓、弦の部分を金具に引っ掛けて矢をつがえて引き金を引く。
気配を感じる間もなく近づいたミネルバ卿が私の机を蹴り上げ盾にする。
その机を片腕で支えながら私の上に覆いかぶさった。
衝撃。
未だ閑話休題 筋肉は裏切られることに慣れていなかった。
…まだ…閑話休題続きます。
次回、流血の大惨事。
殿下号泣
おかん共:ウチの子は私が守る!
護衛騎士:バリエ! お前だけ無傷かよ!
伝説の肉壁スクラム出るのか⁈
ドロワーズ:「次回もサービス サービスぅ」
?:「なにをだ?」




