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第一王子のロイヤルサバイブ 乙女ゲーは情報過多  作者: まるいのあっと


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14/56

◎閑話休題 筋肉は裏切らない 壱

まだ国王陛下が生きていてミネルバ卿が護衛騎士に就任したばかりの頃の話です

本編瞑想、閑話休題大暴れ中。

アイン殿下の影が薄いのでキャラ立てたかったのでアイン殿下のエピソード入れてみました。

せっかくタイトルにも第一王子殿下とあるのに影薄!

(涙)

      ◎肉壁と厨二病


 鏡で左目を見るのは久しぶりだった。

 

 金に金の虹彩とか失敗したカラーリングのようでほとんど差が分からない、右の赤に金の散る瞳と比べると金のガラス玉が入っているようだが、微かに魔法陣のようなものが蠢いているのがわかる。

 およそ生き物の持つ瞳ではない。

 

 「自分の瞳なのに無機質なモノに見える」


 こっそり呟く。

 

 生き物の気配がない瞳、他人が見たらさぞかし人間離れした不気味なものだろうが これがノイエクラッセ王家の者が持つ最上級の魔眼、王家の血統にも数人にしか確認されていない異能。

 

 身支度を整えるため、顔を洗う湯を用意した侍女は間違えて冷たい水を用意してしまったと、湯を取り替えに戻った。

 寝るときも付けている魔眼封じを外すのは顔を洗うときだけ、また眼帯をつけるのも手間なので外したままで待つ。

 いつもは失敗などしない侍女だ、多分湯に異物が混入されてる事に気がついて内緒で取り替えようとしたのだろう。

 

 よくある事だ。

 

 今の侍女が来る前は茶に、食事に、身の回りのモノに異物が混入しているのは当たり前でよく気が付かず寝込んだものだ。

 それを鑑みると今の侍女は優秀な侍女だと思う。

 侍女を待つ間、鏡を見る。

 いつも眼帯で隠している左目は見えない訳ではなく普通の目玉としての機能はある、見えない筈のモノが視えるのが問題。

 

 魔眼という異能。

 

 能力としては優秀だが意味嫌われる能力。

 確かにこの瞳は見たら気持ち悪い。

 因みに護衛騎士隊長として着任してきたミネルバ卿には職務上必要だろうと魔眼について説明したら

 「厨二病ッスか?」と、真顔で問われた…。


  厨二病とは?


 宰相に尋ねようと振り返ったら、宰相が見た事ない顔をしていた。

 宰相もわからない事があるのか…。

 発言した本人曰く、「俺の邪眼が疼く…」と口走りながら左目を押さえて苦悶の表情で頭を上下に降り始めた。

 なにを始めたと見守ってる…と、当人ケロっした顔で「こんな感じの奴です」と両手を顔の横でバンザイしておどける……。

 

 ミネルバ卿、わからん。

 わからんけどそれ不敬罪じゃね?

 

 厨二病……その答えはひとまず保留にした。

 うん 世界は答えのない謎だらけだ、そういうことにしておこう。

 ふと、本来なら私は未だ色々なモノが足りない子供なんだな と。

 

 可笑しいな、私は未だ10才の子供の筈。


 ノイエクラッセ王国 第一王子 アイン

 正式には アイン ドンナー ノイエクラッセ

 ゼクス ゲルト ノイエクラッセ国王陛下の三男、正妃の第一子なので第一王子の序列にいる。

 

 正妃の子供は他に弟の第二王子。

 第一側妃の第一子が第三王子。

 第二側妃の第一子が第四王子。

 一番下は第一王女、第一側妃の第二子。

 

 …面倒くさい……。

 

 一応王太子に一番近い筈だが、正妃である母が早くに儚くなったせいで後宮は第二側妃の天下だ、国王陛下は子供達のことなどズボンの皺ほどにも気にしていなかったから当然、私たちの扱いは酷いものだった。

 

 何もない離宮の端から宰相に連れ出されて首に玉璽を下げられるまでは。

 

 直径3センチ程の立方体に国の紋章にある動物の意匠が彫られた持ち手があり、そこに穴が開いていて紐が通せるように作られている。

 

 首から下げるため丈夫な組紐で結わえた玉璽が重い。

 

  純金の塊だよなコレ…。


 ちょっとひっくり返して印面を覗いたり彫りを斜め下から光に透かしてみていたら後ろから吹きだす音がした。

 

 護衛騎士…笑ったな?

 

 玉璽を首に下げなおして鏡台の前で足ぷらぷらさせながら椅子に座っていると鏡台越しに護衛騎士のミネルバ卿と目が合う、ぴらぴら小さく手を振ってくれる、子供か?

 

 ミネルバ卿と皆が呼ぶ護衛騎士、顔は悪くないよな、悪くないのにイケメンとは何か違う感じがする。

 

 脳筋臭?

 

 護衛騎士は顔と腕がいいものを選ぶという。

 式典で並んだ時に見栄えがいいようにとのことだが。

 

 と、視界にノイズが入る。

 

 魔眼封じの眼帯をしていないので意識して制御していたのに…。

 視界に入っていたミネルバ卿の像がブレる。

 

 鏡台の向こうで笑顔で手を振るミネルバ卿は血塗れだった。

 

 邪眼

 

 モノの鑑定から 魔法跡 魔法式 ヒトの未来 死に様 未来 過去 いろいろなものが視える。


 邪眼封じをしていてもだ。


 私の場合、まれに私に関係した相手の死に様というやつが視える。


 ミネルバ卿の首から胸にかけてのいくつもの切り傷、傷だらけで血塗れなのにミネルバ卿は笑っていた。

 

 気持ち悪い。


 これは…近くに私が襲われる、犠牲者はミネルバ卿という未来視の警告。

 

 私を守る近しい人物の死に様。

 最初に視たのは毒見役の侍女だった。

 未だ夢に見る。


 落ち着くため目を瞑り息を吐く。

 

 澄ました顔で洗顔用の湯を持った侍女の為に扉を開けているミネルバ卿に聞こえないよう、脇で控えていた宰相に伝える。

 

 「ミネルバ卿は私の護衛から外せ、あと近々私に向けての襲撃がある」

 宰相はちらりと扉を閉めるミネルバ卿を見た。

 私から離せば生き残る者もいた、離れても駄目だった者もいた。

 

 「御意」

 宰相は軽く頭を下げる。

 宰相は知っている、私が周りの者を退けようと言う理由を…頭を下げる宰相には死相は見えない。

 弟達にも他の部下にも。

 

 身支度を終え、ミネルバ卿が扉を開ける。

 長い廊下の窓から入る夕陽が世界を朱に染めている。


 陽の残滓から目を背けて下を観ると長くなった影が廊下に落ちていた。

 

 ヒトの死を予言し逢魔時に活動を開始する私は他の人間達からは魔物の様に見えるのだろうか。


 三日後、同じ時刻 夕刻。

 自室のベッドで何時もの様に目覚める。

 窓の外は赤く染まっている。

 この時刻、逢魔が刻というそうだ。

 誰かが言っていた 逢魔が刻に魔物が目覚め、王宮内を徘徊すると…下卑た視線、聞こえよがしの舌打ち そんなモノを思い出して鬱々とした気分になっていた所で宰相が侍女のように私の衣装や身の回りのモノを用意し部屋に入ってきた、本来の侍女は洗顔や身だしなみを整えるための細々としたものを用意している。

そんな自室の扉の横、配置変えで私の護衛騎士ではなくなった筈のミネルバ卿が警護の位置にしれっと立っていた。

 

 あれ?

 

 横目で宰相をチラ見する。

 宰相もなんでこいついるんだ? という顔でミネルバ卿を視ている。

 あぁ、そんなオヤジ顔のキツネが北の辺境にいたなあ…宰相?

 

 宰相がミネルバ卿の元に行き、二言三言話をしている。

 不本意な顔の宰相。

 

 「ミネルバ卿はこのまま肉壁として任務継続します…」

 

 「は?」

 

 肉壁?

 

 ミネルバ卿を視る。

 「いい肉壁目指します」

 にっこりする厚切りステーキが視える?

 いやいやいや?

 「おいしい頂いてください」

 いやいやいやいや?

 というか。

 

 「肉壁って何?」

 

 だめだ もうミネルバ卿が自立する厚切りステーキにしか幻視できない。

 魔眼がおかしなことになってる。

 「お…私が東の辺境伯 ミネルバ伯爵家の出身なのはご存じだと思います」

 ステーキ肉がにこにこ話始める。

 「王都の各騎士団を最終的に統括しているのが君の兄上だったと記憶しているが」

 この言い方だとコネで騎士団に入ったように聞こえるぞ。

 そうなのか? 私はおかしな具合の魔眼の調整に少し圧を乗せて反応を視るが余り変わりない。

 相変わらずの陽気なステーキ肉だ。

 なんなんだ? なんでステーキ肉? 魔眼の魔力にも反応しない鈍いのか? 大丈夫か護衛騎士。

 「長男と三男は領地と王都で辺境伯の家の仕事をしています。私は四男坊で騎士団の統括をしている兄は次男坊です」

 「…子沢山だな…」貴族家では珍しい多産の家なのか?

 「ちなみに私の後に双子の弟と妹と最後に男の子が一人います」

 子供8人か!どれだけ妾妻がいるんだ?


 「両親の名誉にかけて全員両親一緒です。」 

 ニコニコとミネルバ卿。


 「凄いな母上!」


 思わず突っ込み入れてしまった。

 私のツッコミが嬉しいのか凄いキラキラした笑顔が返ってきた 怖い。

 何処までボケツッコミに命かけてるんだよ 私の目にはステーキ肉だけど…。

 カリカチュアライズされた顔と手足を張り付けた肉がいい笑顔で親指立ててウインクしてるし。

 やめて! 腹筋プルプルするから!

 そういえばチーム仲間のバリエ卿にもしよっちゅうツッコミ強要しているらしい。

 

 護衛騎士とは…。

 

 「だから一人位殿下の肉壁になっても大丈夫ですよ」

 だから肉壁ってなんなんだよ。


 「兄に云わせれると私は対人戦に特化しているので殿下の肉壁に適役だと云われてこちらに参りました」

 

 確かミネルバ卿の兄は王宮騎士団副団長ホーク ゲイガン ミネルバ 兄ぃ! 何やってる!

 彼の兄は東の辺境伯家の次男、学院時代剣術大会で剣聖をいなした剣鬼と言われた学生だった。

 彼は対人も対魔も両方優秀だと聞いている。

 

 その兄にして対人戦に特化したと云われる弟とは。

 

 「七つの時一兄ちゃん…あ、ミネルバ家の長男と一緒に誘拐された時」

 物騒!

 「10人位いた誘拐犯殲滅したら―兄にお前は対人戦に特化してるんじゃないかと云われて」

 「七つで誘拐犯殲滅…」宰相は天を仰いだ。

 「田舎のゴロツキですよ、そんな大層な事件じゃなかったし」

 いやいやいや? 辺境伯の子息…嫡子誘拐は大事だろう 関係者全員斬首じゃないか!

 「館の近所の川だから遊んでても大丈夫と思ったら、あれよあれよと薬かがされてすっぽんぽんのパンイチで攫われたのは驚きでした(笑)」

 (笑)じゃないだろ! 辺境伯…公爵相当の貴族嫡子と子息が川でパンイチで誘拐…。

 ぱんいち?


 「パンイチって何?」


 素朴な疑問。

 「かぼちゃパンツ一枚のすぽぽーんのことですよ」


 すぽぽーん?


 「全裸でかぼちゃパンツ一枚」

 辺境伯…公爵相当の貴族嫡子と子息が全裸でかぼちゃパンツ一枚

 近所の川で遊ぶ子供… いやいやいや(羨ま…しくない)

 「護衛騎士は? 侍女は? 乳母や侍従はどうした!」

 宰相がか細い悲鳴のような声で護衛騎士に食って掛かっている。

 宰相はオカン属性だと前に誰かが言っていたような気がする …オカンとは?

 「ご近所の川に遊びに行くのにそんな大仰な(笑)」

 (笑)ってなんだ? 辺境ではそんな平民のご近所感覚で貴族家嫡子子息が裸で遊び歩いていいものなのか? いやいやいやいや(羨ま…)


 ? 疑問。

 

 「川遊びってどうするんだ?」

 

 ついボソッと本音が出た。

 あれ? 掴みかかっていた宰相と薄ら笑いのミネルバ卿がこちらをガン見してきた。

 あれ?

 あーっと…「川って王宮の前庭にある噴水から流れてるあれ? あそこで裸で遊ぶのは流石に…」

 あれ? 宰相とミネルバ卿が驚愕の表情になった?

 

 ◎【川 [かわ] 降水や湧水が,地表の細長い窪くぼみに沿って流れるもの。河川かせん。】

 

 本で読んだ。

 王宮の噴水湧き水だから階段状に水が流れて別の噴水に流れるやつ、川だよね?

 宰相が土下座するように突っ伏した。

 あれ?

 ミネルバ卿が私の目線に合わせて跪いた。

 「王宮の噴水にはザリガニも魚もいないのです」

 ?

 「ザリガニってカニか? 魚も海にいるのでは?」

 休憩時間にでも魚介類の図鑑を見てみよう。

 ミネルバ卿は私の肩をガッシと掴むと何かを堪えるように上を向いた。

 掴まれた肩が痛いんですけどミネルバ卿!

 「ピクニック行きましょう! 子供らしく弁当持ってピクニックですよ! 」

 顔が怖いよミネルバ卿! なんでピクニック?

 「真夜中のピクニック?」

 扉が少し開いて外を守っていたはずの護衛騎士の二人、赤毛のバルド スキャン オストーゼと黒髪で長身のバリエ ルフト シュピーゲルングがこちらを覗いて呟いた。

 いつの間に…。

 「真夜中のピクニックって魔獣の餌じゃね?」とバルト。

 「それ以前に真っ暗な所でピクニックって…」とバリエ。

 

 ◎【ピクニック [定義] 野山などに出かけて遊ぶこと。遠足。】

 本で読んだピクニックは風景の良い所でランチを食べたり花を摘んだり気持ちのいい風に吹かれて昼寝したりとあったような気がする。


 そういえば「王宮から出たことがない…」

 

 というか公務が忙しくて出られない。

 

 「そこからかーーー!」

 何故か二人も顔を手で覆って慟哭する どういう状況?

 支度の用意を整えた侍女がミネルバ卿をわざと(・・・)踏みつけて側に立つ。

 「こいつらは放っておいて御仕度を整えましょう」

 はい、建設的な意見です 私は頷くしかない(戦闘特化侍女、怖いし…)。

 侍女はライラ― モルゲン デンメルング、銀髪に青い目のカラーリングが冷たい印象に見られがちだが私を丁寧に扱ってくれる ミネルバ卿より頼りになりそうな戦闘特化タイプの侍女、怒ると静かに怖い。

 同じく銀髪に青い目の老練の侍従は慟哭する護衛騎士を蹴りだしてそっと扉を閉める。 護衛騎士を蹴りだした扉の外の廊下から、夜に近い夕暮れの薄明の中、明かりをつけて歩くメイドの持つランプの光が横切るのが見えた。

 

 そうだ、ノイエクラッセ王国の夜が始まる。

 

 支度は終えた、土下座から五体投地にまで至った護衛騎士と宰相が何事もなかったように立ち上がり扉をあける。

 外に控える(先ほど蹴りだされた)護衛騎士と合流し、私を先頭に左右に宰相とミネルバ卿、後ろに護衛騎士ふたりを従え足音が響く廊下を往く。

 

 建物の外は宵闇、夜の明かりが灯る不夜城、ノイエクラッセの王城は一見の価値のある美しさだと誰かが言っていたが私はそれを見たことがない。

 

 昼のノイエクラッセは白亜の美しい佇まいの城だというが私がそれを見る機会はないだろう。


 

 「殿下…外出たことないのか…」

 「5歳まで後宮で監禁生活、それからは図書館で仕事漬け…」

 銀に近いグレイと黒と赤の3人の護衛騎士は図書館棟のアイン殿下の執務室で、コンビニでたむろする若者のような座り方で頭を突き合わせて話し合い。

 

 その奥ではアイン殿下と宰相が執務中、チラチラスクラム組む護衛騎士を見ている。

 仕事しろよ と…。

 

 「10歳位って何やってたっけ?」

 「俺は街の学校行くか街の連中と遊ぶか女性向け商品のお得意様周りに連れまわされたな」遠い目をするバリエ。

 「俺は騎士学校の幼年科でわちゃわちゃしてた」

 あまりものを考えてなさそうなバルト。

 「俺は冒険者ギルドでブイブイ言わせてた!」

 凄い鼻高々で語るミネルバ卿 声がデカい。

 すぐ向こう側で仕事する文官達に軽く睨まれる護衛騎士共 仕事しろよと、他の護衛騎士と文官達のココロのツッコミが入いるのに気が付いたのか、黒髪と赤毛は立ち上がり配置に着くがミネルバ卿はかがんだまま。

 「…10歳で冒険者ギルドに通うのはどうなんだ?」

 「騎士家の子供は結構通ってこずかい稼ぎしてるぞ?」

 「まあ、子供なら低ランクの薬草集めからな」

 「ゴブリンキング狩った」

 ミネルバ卿しれっと爆弾発言投下。

 「はあ?」

 その声は横の護衛騎士、近くの文官、宰相と綺麗にハモった。

 


未だ閑話休題中。

本編は後から後からキャラの濃いのが出て来る予定です。

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