◎不夜城 未だ夜 王族、襲来
ハロウィンだ! かぼちゃヘッドにかぼちゃランタン!
そしてかぼちゃぱんつ!!
…ふふふ甘いわよ、かぼちゃパンツ!
お…お前はドロワーズ!
お前は勘違いしているわ!かぼちゃパンツはズボンなのよ!
はあぁあー!?
AIアシスト君が教えてくれたわ!本物の下着のかぼちゃパンツはこの私、ドレスのお供 ドロワースなのよ!
く! 黙れズロース!
ズロースは甘いお菓子とスパイスとちょっとした秘密で出来ているのよ!
ぐ! おぁああ!? ズロースはかぼちゃパンツを引っ掴んで洗濯機にぶち込んだ
◎前国王陛下直々の《いままでのおさらい》
騎士団は騎士団統括長を頂点に統括長を補佐する副長の下に役割と各個人の能力に基づいて各騎士団へと区分されている。
第一白色騎士団 国王陛下 正妃、王族トップの護衛。王の剣
第二水色騎士団 王太子、側妃 宰相他大臣の護衛。
側妃と第三王子を守っている。
第三藍色騎士団 王太子以外の王族の護衛、王子、王女の護衛。
………?!!!
扉を開けるとそこにはマッチョな肉壁イケオジ軍団がいた…。
すげえ…雄ぱい…いや、違う 白い騎士団服の胸元のボタンがはちきれそうな胸筋……。
羨ましい…くない!
第一騎士団のマッチョイケオジ軍団…復帰したのか。
今の国王が即位したとき、側妃派の貴族共に城内の主要な人事権は食い荒らされた。
仕事が出来ても後ろ盾や地位が無い者は容赦なく左遷、クビになり側妃の派閥の無能な貴族共に取って変えられ、政務が混乱した。
宰相はその混乱を収める為、後ろ盾かない故クビや左遷の憂き目にあった優秀な人材を《夜のノイエクラッセ》に集め、政務を回復させた経緯があったが。
宰相の手がまわらなかった第一白色騎士団は側妃派の食い荒らし人事に否を唱え、騎士団の主要メンバーが引退した。
今の第一騎士団は昔からの堅固な守りを謳う騎士団ではなく、凡庸な貴族達のお飾りの騎士団と成り下がっている…と、今ここに揃う第一騎士団の白い騎士服を着たイケオジたちはその昔、強靭な筋肉で前国王陛下を守り己の矜持に従い引退した第一白色騎士団精鋭。
俺ら若造の第三藍色騎士団とはオーラが違うよ! 騎士団伝説のスクラム肉壁で前国王陛下を守ったという伝説のおっさんらだ。
マジか! 引退して予備役になったと聞いていたが?
おぉおお!!
眼があってしまった! き…筋肉が眩しいぃ!
「しっかり! リーダー!! あんただって当代一のステゴロ筋肉強化と《結界》のスキルがあるだろ、イケオジの筋肉肉壁に負けるな! 」
今、アイン第一王子殿下を護衛しているのは我々第三藍色騎士団。
…2人。
負けてない、負けてないよ…ガクブル)))。
扉の向こうに立つ五人の騎士、第一白色騎士団精鋭。
藍色の若造は足元にも及ばないとか云われそうな大分年上の歴戦の騎士。
そして彼らが守る要人はアイン殿下と似た髪色、風貌の2人の要人。
車椅子に座り、着物のような黒の長衣に黒の羽織のような上着を纏っている老人はアイン殿下の祖父、前国王、ニコラス フェリックス ノイエクラッセ。
車椅子を押す国王を細く腹黒くした様な黒メガネの中年男性は王弟 ヌルク バイン オペル 侯爵家当主。
お揃いコーデなのか黒眼鏡、黒い異国風の詰襟に裾が踝まである長い衣装、学院生時代の教科書に載っていた50年位前の王族の準喪服?。
ニコライ陛下は襟元に金の刺繍で自分の紋に使われている鳳凰の意匠の刺繍が、オペル侯爵は銀で草木模様、詳しくはないが多分侯爵自身の紋の意匠だろう。
学生時代にバイトで荷運びした服屋で貴族の古い喪服のリメイク前を見たことがある。
多分先々代の葬儀の時の服装…?
「先代国王陛下ですら衣装代に…(泣)」
「…多分違うと思う」
バリエが今度はコチラも見ないでぼそりと呟く。
俺の相手に疲れたのか? 扱いぞんざいだよ、俺の考え読むなよ いや、俺が口に出しちゃったか。
と、バリエを伺うと こいつ緊張してるのか。
無理もない国王陛下の殯宮の扉の向こう側の前国王勢とこちら側、殿下率いる夜のノイエクラッセ勢。
どうでる?
しかし殿下が病み上がりで車いすの老人を座らせて挨拶させるわけはない。
先にアイン殿下が宰相の腕から降りて前国王陛下に斜め45度に頭を下げた。
合わせて宰相以下一同、一斉に片膝を付き、立てた膝近くまで首を垂れる。
「お初にお目にかかります、前国王陛下 ゼクト ゲルト ノイエクラッセが一子、アイン ドンナー ノイエクラッセ お目文字仕り恐悦至極に存じます。」
前国王、五年前に病に倒れて意識不明だったんじゃないか? 行方不明だった王弟と一緒に第一白色騎士団の護衛騎士が付くなら王弟が時期国王…いや、王弟は王位継承権を返上して行方不明になったと聞いている。
どういう経緯か同時の事は知らないが国王陛下崩御の報にて戻って来たという所か。
「前国王を務めた ニコラス フェリックス ノイエクラッセだ 君と会うのは本当に初めてだね」
五年寝たきりだった老人の筈だが滑舌若いな。
「皆の者、おもてを上げなさい」
初めて見た前国王はアッシュグレイというか銀髪に濃い藍色の混じった髪色に青の虹彩、やはり金が散っていた。
頬は痩け、肌色も悪く皺も多い、しかし覇気というか目力が違う。
顔立ちも国王陛下に似ている、容姿は似ているのだが…まだアイン殿下の方が前国王に似ている?
孫とじっちゃん…。
「僕はヌルク バイン オペル オペル侯爵家当主で君の大伯父にあたるんだよ、小さいのにキチンと挨拶出来て偉いねぇ!」
顔立ちは国王によく似た青灰色の銀髪、ちょっと色黒、雰囲気がナンパなおじさんは、いきなりアイン殿下の脇に手を入れ、高い高いからぐるぐる殿下を回しまくった。
殿下、いきなりで対応に遅れたせいか無表情でくてんくてんに回されております。
新しい抱き上げパターンでましたぁー! 8歳以下なら大うけだろうが…。
アイン殿下10歳、もう高い高いの年齢ではありません。
ぐるんぐるん回される殿下、虚無顔です。
殿下! 何故抵抗しない?
「あの、僭越ながらオペル侯爵、殿下吐きそうなんで止めてあげてください」
「え? アイン君身体弱いの?」
ちげーよ! おめーがぐるんぐるん回すからだよ。
殿下、三半規管が脆弱なんすから。
「うーん、何処か休める所 近くにあったかな?」
「おお! 孫よ! 粗雑にあしらわれて酔ったか? じいじの膝の上においで」
前国王陛下、両手を差し出し殿下を要求しておられます。
孫よ…って…初対面のじいじ
。
「病み上がりのじいさんに任せたらアイン君ころげおちちゃいますよぉ!」
なんだこのオッサンらは。
対応に困ってイケオジマッチョ騎士団を伺い見る。
護衛騎士団、微動だにせず、そして虚無顔。
吐き気は収まったらしい殿下も無抵抗な虚無顔。
アイン殿下ぁあ!
てか、抵抗してください。
「よろしければ応接室を用意させます、そこで休憩を」
第一白色騎士団一のシブオジ護衛騎士がニコラス陛下に話しかけるが、オペル公爵閣下は聞いてない風。
「アイン殿下の離宮へ行きましょう、お休みなら自分の部屋の方がいいよね?」
こてんと首を傾げつつぬいぐるみを抱き上げるようにアイン殿下と目線を合わせる。
殿下、ハシビロコウモード突入。
そんな殿下をにっこり抱え直すと芝居掛かった爽やかさを演出しながらオペル公爵閣下は部屋を出ようとする。 え、閣下、国王陛下に会いに来たのでは? 対面もせずに入口でお帰りになるのですか?
三文芝居の役者のように胡散臭い笑みを浮かべアイン殿下の離宮に行くことを誘導している?
王子の離宮は図書館棟の向こう側なので図書館より遠い。
本気でアイン殿下の心配していただけるのなら図書館準備室という名のアイン殿下執務室に行ってもらった方が休憩の場所もあるんだけど…。
いかんせん機密書類が多い所に元国王とはいえ部外者を入れるのは抵抗がある。
ちらりと宰相の顔をうかがう 苦虫を嚙み潰したような顔とはこれかというほど凄い顔をしている…が?
「おお! それならアイン君の執務室の方が近いのでは?」
目的はそっちか!
「アイン君の執務室は図書館棟にあると聞いたのだけど案内してもらえるかな?」
何かの小芝居が始まってる。
「アイン殿下の執務室に行かれるおつもりでしょうか」
宰相の顔がひきつってる…?
あそこの警備体制は我ら第三藍色騎士団の管轄、殿下が執務室に使うに辺り、今は王宮騎士団の総括部の副長に出世した二番目の兄貴が実家の資金提供で魔改造した執務室。
夜のノイエクラッセの心臓部。
兄と宰相が実家をスポンサーに盛りに盛った騎士団渾身の防衛設備…。
あれ? …兄貴、楽しんでいる?
宰相の上目遣いが俺に厳しい。
いや、王族相手にどうしろと。
再度言うが機密文書取扱、第一王子であるアイン殿下を守る唯一の場所。
オペル公爵はにこやかに芝居がかった台詞を放つ。
「私がどちらかの摂政になるなら執務室は確認しておいた方がいいでしょう?」
ウチではなく金ぴかの執務室行ってください?
にやりと、ニコラス陛下がオペル公爵を見る。
「いや、私が摂政となってお前が国王になるのも在りだな?」
にやり、にやりと二人の親父が笑いあっている…怖い。
アイン殿下が抱き上げられながらも俯く。
第三王子と第一王子のどちらが国王になるのか。
という競り合いにオペル公爵参戦?
陛下の護衛騎士の顔は相変わらず無、表情が読めない。
アイン殿下の居場所を取り上げないで下さい。
抱き上げられる10歳の子供。
大人の思惑に振り回される子供。
アイン殿下の顔は青い。
やべ!
さっきからゆすぶられたり振り回されたり、と、アイン殿下の頬袋が膨らんでいた。
「殿下!」
アイルがマジックバッグをアイン殿下に差し出す。
お前それ…。
……。
マジックバッグ、色々使えていいよな…。
俺は遠い異世界のお花畑に思いをはせた テロップ付きで。
そして殿下にもマジックバッグを持たせようと俺は心に誓った。
殿下、お水 お水飲んで!
俺は装備の小物入れから水筒をだした。
結局拒否できずアイン殿下の休憩のため図書館棟に行くことになった。
第一白色騎士団の護衛騎士達と魔術オタク共といっしょに…。
《王宮内執務室訪問、アイン殿下編》
俺の脳内に変なオープニング曲が流れてる。
前世でよく見たお宅訪問番組、これで家宅捜索の手順を考えたりしたなあ。
逃げる手順とか見つからない隠し場所やら反撃する際、追い詰める場所とか……あれ?
「おお! 落ち着く狭さの執務室だな」と、嬉しそうなオペル公爵。
落ち着く狭さって嫌味ですか?
それでも執務室、前世の学校の体育館2つ分位を細長く並べた広さに三階ぶち抜きの天井まである本棚、中二階には壁に本棚、梯子、閲覧用の小さな棚のような机が吹き抜け側にいくつかある。
入口には図書貸し出し用受付、今は司書の代わりに美人だが瞬時に暴漢を鎮圧する位の力技が出来るお嬢さんたちが受付業務をしている窓口。
お嬢様方何処の所属かって? もちろん騎士団の総括部の副長、二番目の兄貴がプロデュースした暗部だ。
またにーちゃん…。
王宮内のあちこちに暗躍する東の辺境伯と騎士団副長。
お茶と虫型魔獣が有名な東の辺境伯領、田舎だと侮っていると痛い目に合うヨ?
受付を通りすぎると各部署から出張してきている文官達の机、その奥のステンドグラスのある奥、窓際がアイン殿下の執務室になる。
扉はないが本棚が微妙に重なって奥は見えなくなっている。
そして深夜なのでステンドグラスの奥は暗い。
俺はオペル公爵から殿下を受け取るとソファに座らせて執務室付き侍従が渡してくれた白湯の入ったカップを渡した。
「此処は昔、禁書が置かれていた部屋では?」
陛下は辺りを見回して本棚の本というか資料というか閉じられ書籍として保存された本を眺めている。
「禁書はここより堅固な地下に閲覧室を作って移しました」
ここには応接と殿下の執務用机、横に宰相の机がある。
プロデュース by 俺んとこの実家。
東の辺境伯家はアイン殿下を密に支持しております。
子沢山の家系のせいか東の辺境伯家は不遇な境遇の子供への援助は惜しまない家訓なのです。
「君たちが夜のノイエクラッセを采配しているのか」
殿下はニコラス陛下のほうに顔を向けたまま飲み干したカップをテーブルの上に音をたてずに置いた。
そのカップはすぐさま下げられ、テーブルに着いた元国王陛下、オペル公爵、宰相閣下、アイン殿下の前に暖かい紅茶とすぐつまめる軽い夜食、サンドイッチや焼き菓子、パイなどが並べられる。俺とアイルは殿下の後ろ、白騎士二人は各自ニコライ閣下とオペル公爵の後ろ、他は殿下の執務スペースと文官達を分ける本棚の前に立つ。
宰相閣下の後ろには執務室付きの執事とメイドが並ぶ。
オペル公爵は手で口を抑えこほんと小さくせきをしてから応接テーブルに着いたメンバーを見据えてにやりと笑う。
「此処にいる第一白色騎士団の騎士は僕と兄上…ニコライ閣下に忠誠を誓った騎士だから大丈夫だよ、他も宰相の覚えがめでたい者たちだろう? さあ、兄上どうしてこうなったか話してください!」
オペル公爵?
「私は前回の王位継承時、いつの間にか砂漠の真ん中に放置されて王位継承権を放棄させられたのに、ここにきてこの国に連れ戻されて侯爵にされたんですよ?」
「その理由とこの国の行く末をどうするか語って貰う権利があると思いませんか陛下!」
なんですと?
芝居の舞台に上がった語り部のように胡散臭いイントネーションと身振りで注目を集めたオペル公爵はその注目をニコライ陛下に押し付けるように片手を胸に充て頭を下げた。
元国王陛下はため息ひとつ、目元を指でもみながら呟く。
「私も目が覚めたらこの状態で国が運営されていた事に驚いている。」
元国王陛下は五年前、いきなり倒れ意識不明になり、混乱を回避するため一時的に王位に着く筈だった王弟は行方不明、その政権トップが不在の政権白紙の混乱の中、王太子指名に問題があると言われていた現国王がいつのまにか即位した。
案の定、問題のある王子の即位で混乱し崩壊寸前となった国政を立て直す為、《夜のノイエクラッセ》が誕生する。
「…この国の今の体制は知略遊戯のつもりでそこの宰相と考えたそのままだ」
爆弾発言 投下。
遊戯という言葉で俺は固まった。
ニコライ陛下と宰相殿が運営でしたか?
乙女ゲームの?。
手洗いの要らないかぼちゃパンツはぐるぐる回されればいいのよ!
洗濯機に回されたかぼちゃパンツはぐったりとピンチハンガーに吊るされた。
くっ…ドロワーズ…俺の気持ちも知らないくせに…
かぼちゃパンツの呟きは青い空に溶けていった。
次回、ゲゲゲの王子様は護衛騎士に溺愛される
…でも、びーとえるのお話では無いのです。




