ヘルンヒェン男爵家 深夜 聖女というアイコン①
いきなり話は変わりますが、時系列では 夕刻、殿下の執務室に儀礼院強襲→お部屋で身体測定→魔術師と神官来襲→国王陛下のトコ、同時間、ヘルンヒェン男爵家での事件となります。
◎乙女ゲームの誤算
世界の破滅とは 世界が消滅するのか
己が消えるだけなのか
「ノイエクラッセの薔薇姫 王国の守護者」
それがゲームのタイトルだった。
ローズピンクに見える赤みの強いブロンドのヒロインを囲む5人の男性のイラストのパッケージ。
受験勉強中、集めたイベントスチル。
私には此処でいうトコロの前世の記憶があった。
自分の名前や年齢、この世界にい続けるる原因(多分ゲーム中のVRの機材の故障?)他、色々覚えていないことが多かったが、確かに前は地球に生きた20代女性だった…気がする。
前世というのもピンとこないので地球時代と呼ぼう、のゲームのイベントやスチルははっきり覚えていた。
今の名前は シャーロット ヘルンヒェン 男爵令嬢 16歳。
すごい普通の家 普通だ、男爵家の猫の額ほどの領地を地道に納め、ちょっと美味しい特産品が上手くお金を稼いでる 夫婦、姉弟、普通の男爵ならこれくらいの家と使用人。
貴族と言うよりお金持ちの平民感覚の家族、使用人達の仲も穏便な家で生活している、普通の平凡な令嬢。
現在王立学園の4年生、卒業まであと2年。社交界デビューまであと2年。
その時はきっと両親は社交界デビューのために貯めていた貯金を崩してドレスや宝飾品を買ってくれるだろう。
普通に無理しなければ同格の家にお嫁にいき、普通に幸せになれる人生、ゲーム内には何故かそういう選択肢もある。
でも、私はこの世界の主人公。
ピンクブロンドに緑の瞳、前世で見たゲームパッケージのヒロインと同じカラーリング、同じ家名 愛らしいと褒められる容姿。
私がこのゲームのヒロインで間違いないはず。
だったら最上のストーリー、ハーレムエンド目指さなきゃ! 。
私には知識がある、ゲーム知識で知ってたこの国の名前、歴史文化。
出会う王子様の名前。
やった! 狂喜乱舞して弟(今世でも弟、私と弟の2人兄弟?)に暗記していた周辺地域の国状、名前、王族の名前関係を自慢して喋りまくって頭おかしいと疑われた。ムカつく!
でも、この記憶を利用すれは王妃教育なしでも王妃夢じゃない。
信じてもらおうなんて思ってない 私がヒロインに違いないのだから!
ならヒロインの行動をなぞって学園に入学したら薔薇姫の生活が始まる、と期待に胸膨らませて学園の門をくぐった。
ゲームのイケメン達に出逢えることを信じて。
だって私はヒロインの薔薇姫。
…のハズ。
学園にゲームのキャラはいなかった。
いや、学園にはいなかったが王宮にはいた。
私の推し、最終攻略対象 ノイエクラッセ王国の王太子 アイン ドンナー ノイエクラッセ。
アッシュグレーに近い銀髪に赤目に金が散る、眼帯の下は魔眼の19歳。冷徹の天才、赤に金散る絢爛の貴公子、甘く溶かされる美声で愛を語る。
…の設定だった。
だったのに!
攻略対象が10歳児童って何?。
学園入学、イベントは何も起こらなかった。
校内には攻略対象は誰も居なかった。
学校間違えたかと諦めかけた3年後、13歳の第三王子が入学した。
なんすかコのヒト?
出会った時、壮大に心の中でツッコミ入れた。
誰だよアンタ!
金髪、碧眼、第三王子。
うん、スチルと同じ。
でも、スチルの華麗なイケメンと違う! ちょっとふっくら、ニキビの普通のそこら辺の中学生。
無理! 叫ばなかった私偉い。
でも、それがチュートリアルの出会いのシーンだった。
ココをクリアしないと次に進めない!
で恋人ゴッコを始めてしまって真実を知った。
というか 怒りに震える私に気づかず第三王子、自慢気に色々私に教えてくれた。
国王陛下と王妃と側妃達。王家の子供達のこと、母が側妃なので第三王子と呼ばれているが自分が兄弟の長男で一番の王位継承権があると。
王宮にも連れて行ってもらった。
庶民の私でも成金趣味が凄いと失笑したくなるレベルの執務室に案内してもらった帰り、廊下の向こうを歩いているアイン様を見た。
地味な●ゲゲの子供がいた。
ノイエクラッセ王国の王太子…のはず アイン ドンナー ノイエクラッセ。
アッシュグレーに近い銀髪に赤目に金が散る、眼帯の下は魔眼の19歳…?
確かにスチルと同じカラーリング。
だけど頭に眼玉おやじ載ってないかガン見しちゃったよ。
美形だけど目付きが悪い生意気そうな子供!
第三王子に聞いた所、癇癪持ちで勉強が嫌いでぐうたら昼過ぎまで寝ているらしい。
運動神経も枯渇していて剣術はからきしだと…。
うわぁ…頭いい設定は何処いったんだ?
第一王子にがっかりしてたら、他の攻略対象もいた。
第二王子が7歳! 第四王子が5歳だと? ふざけてんのかワレぇ!
私の知るゲームの攻略本、というか脳内スチル設定集と比べてみる。
第二王子ツヴァイ レーゲン ノイエクラッセ 銀髪に金眼の17歳。
優し気な見た目、たしか弱視補強の魔法がかかった布で覆われているので目元は見えない、刺繍や染の美しい布が外れてちらりと覗く金眼がエロ可愛担当だのに…8歳?
可愛い美少女に見えるのがヤバイ8歳児童 うーん。
第一王子より可愛いらしいけどナシ。
騎士もいた。護衛騎士二人と宰相…宰相は攻略対象の父親、なかなかイケオジだが息子はいなかった。
攻略対象の護衛騎士、ホーク ゲイガン ミネルバ 東の辺境伯家の2男坊、黒に近い紺色の髪に 赤目…? あれ顔は似てるけど色が違う、金に近いアッシュブラウンに赤目? なんか脳筋臭がする、好みじゃないなあ。
ナシで。
もう一人の護衛騎士はバリエ ルフト シュピーゲルング シュピーゲルング商会の3男、平民と言っているけどお母さんが某国の御落胤様でスピンオフの小説ではバリエがヒーローの某国立て直し冒険譚になってたっけ? 活字読むの面倒だったのでそっちは未確認。
確かに上品なアイドルみたいに美形…イケる!
と思ったら隣の第三王子がじっとこちらを見ていた。
第三王子、ドライド ハンター ノイエクラッセ 側妃の息子なので王位継承権は低いはずだが金髪青い目の正統派王子様……ちょっとふっくら、肌色悪い西洋陶器人形みたいで13歳、ちょっとなー…13歳というのもちょっとな―…。
という思いを飲み込んでニッコリ笑うと嬉しそうに背筋を伸ばして偉そうなポーズを作る。
甘やかされてるの丸わかりでなんかチョロいな。
私、16歳、シャーロット ヘルンヒェン 男爵令嬢。
13歳と16歳、大人だと3歳年の差なんてよくあるのに、なんでか私だと犯罪臭というか変態臭が凄くする。
私が変態で犯罪者かーい! ってココロのテンションが凄く下がる。
本来なら王子は17歳と16歳、学園でのイベントを踏襲して仲を深めていく。
元々チュートリアルで一番攻略しやすいのが第三王子。
婚約者はいない ざまぁの危険はないな、これは僥倖だけど…。
脳内で皮算用してみる。
ドライド殿下を篭絡してさらに上を目指す、子供のうちに攻略本にあった設定を逆手に取って育ったアイン殿下を侍らすこともできる!
他の攻略対象も幼い内に自分に依存するように育てれば自分がババアになっても攻略対象を言いなりに出来るだろう。
魔法が魅了があるならハーレムエンドも夢じゃない?
考える 考えてみる、どうせこのままなら普通の男爵令嬢。
せっかくゲームのヒロインの容姿なんだからテッペン目指すしかないじゃない!
そうよ! 今は幼児でも私の好みに育てればいいのよ!
その為には第三王子にアイテム装飾品を貢いで貰ってそれを換金してアイテムショップで媚薬や魅了アイテムを買う。
薬でも魅了でも私の精神支配に置いてしまえばいい。
子供をいいなりにするなんて簡単、自我なんか育たなくていい私の思い通りに動く綺麗な人形であればいい。
私の尊称は《聖女・薔薇姫》
尊称はゲーム内の役割名。
ヒロインはこの尊称を魅了の力で各攻略対象に割り振れる。
デフォルトでも攻略対象には各キャラごとに尊称が設定されていたけれど誰かを犠牲にしてでも助けたいキャラがいたら尊称を入れ替えることで犠牲者を入れ替えることができる。
支配系チート!
聖女/薔薇姫には攻略対象の生殺与奪権がある。
聖女は聖力が使えて治癒、結界を張る力と人々を教え導く為の力があると学園の授業で習った、教え導く力とはなんだろう?
綺麗事など役に立たない。
勝った方が正義!
私は自分の能力を試してみた。
治癒はちょっとした切り傷には試したことがある、大きい傷や面積の広いやけどには時間と聖力がかかったが魅了に関しては大した聖力を使わずに学園の貴族令息たちを篭絡することが出来た。
試しに婚約者のいる令息に魅了をかけて公衆の面前で婚約者の生意気な令嬢に婚約破棄をさせたりしたが…。
ゲームと関係ないモブの令息達なんて幾ら侍らせても意味ないじゃん。
私は《聖女》で《薔薇姫》
最強チートを試してみたかった。
何回目か第三王子にくっついて王宮に上がった。
王宮凄い! 何度来てもテンション上がる!
流石チュートリアルキャラ! 本来私の身分では入れない王宮に私はいる。
ベルサイユ宮殿の様なお城でお茶会とかテンション爆上がり、…王太子執務室は相変わらずの成金だけど…第三王子を攻略すればほかのルートも解放されるはずだからと、考えていた所で廊下の向こうを歩いているアイン様をまた見つけてしまった。
私の最推しだった。
ノイエクラッセ王国の王太子 アイン ドンナー ノイエクラッセ。
アッシュグレーに近い銀髪に赤目に金が散る、眼帯の下は魔眼の19歳…尊称はblank。
彼の周りの人間関係によって幾つものルートがあり、尊称も変わる、最難関ルート。
尊称の称号を持つ攻略キャラを使ってゲームのストーリーが分岐する。
そのために攻略対象には各キャラごとに尊称が設定されている。
blank
WORLD
賢者
語り部
護国の盾
裁定者……
《護国の盾》の尊称を持つ護衛騎士はストーリー後半で魂すらを盾として、聖女を守り消えていく。
ココ、感動の名シーン。
憧れる、そこまで愛されてみたい。
このシーンはリアルに再現してみたい。
攻略対象とはいえ彼らは話を都合よく進めていく為のコマでしかない。
このゲームの主人公は《聖女・薔薇姫》なのだから。
……。
私は主人公よね?
尊称は確認できていない。
幾ら頑張ってもゲームのステイタスボードは現れなかった。
バグ?
なんで?
そして今、私は男爵家の自室に軟禁状態でいる。
なんで?
第三王子とその護衛騎士に媚薬を盛った罪。
なんで罪?
ゲーム内で課金で買えるアイテムなのに。
ちょっと怪しい路地裏の店で課金すれば簡単に買えるものなのに。
ちょっとした好感度を上げるためのアイテムじゃない?
確かに薬盛ったらホーク ゲイガン ミネルバ卿がすごい笑顔で暴れてたけど。
それは私のせいじゃない!
なんで上手くいかないのかな?
トラウマとか薬とかで攻略対象を手なずけるなんてゲームでは当たり前だったじゃない!
ぜんぜん上がらない好感度。
というか好感度が上がったか下がったかなんて分からない。
ステイタスボードは何処?
好感度メーター何処?
どうしたらいいんだろう?
攻略、行き詰ってる。
一回リセットして正規の年齢の攻略対象とやりなおしたい。
上手くいかないことだらけだし。
リセットしてやりなおせないかな?
と、目の前が揺らいだ。
ノイズの入った機械音、微かにゲームのメロディーが流れている。
あぁ、よく聞いた音楽。
それは本当に微かで…思わず手を伸ばしてみる。
誰かが機械のようなくぐもった声で耳元に話しかけてきた。
リセットしますか?
気づいた。
そうよ! リセットしてやり直せばいいのよ!
次はゲームの年齢に合わせて薔薇姫として聖女に!。
そしてスチルと同じ華麗な場面展開、美しい攻略対象、溺愛される私。
リセットするわ!
と、
ブツんと私の意識は闇に呑まれ。
闇に呑まれる私は。
私は何処に行くのだろう?
世界の破滅とは 世界が消滅するのか
己が消えるだけなのか
これはゲーム開始オープニングで一瞬流れるテロップ。
なんで今、私の目の前にテロップとして現れるんだろう?
私は私をリセットした。
シャーロット ヘルンヒェン 男爵令嬢、第三王子に課金アイテム盛りまくって自宅謹慎。
料理が壊滅的。
護衛騎士 ディーオイレ ミネルバ
東の辺境伯家の四男 第一王子の護衛騎士、暴れていたのはコチラ。
王宮騎士団 副団長 ホーク ゲイガン ミネルバ
東の辺境伯の次男 ディーオイレのにいちゃん。
男爵令嬢に会ったことはない。




