第11話 わかんないよ
第11話 わかんないよ
私は、
テーブルの上に置いたスマホを取った。
お父さんとのLINEを開く。
最後のやり取りは、
LINEには、
『もう着く』
と入っている。
私は文字を打った。
『話したい』
送る。
すぐに、
既読がついた。
早い。
しばらく待つ。
『近くのデニーズで会おう』
返事が来た。
「お父さんと話してくる」
おじいちゃんが、
私を見る。
「今からか?」
「うん」
「何を話すんだ」
「分かんない」
「分かんないのに行くのか」
「分かんないから、
聞きに行くの」
おじいちゃんが黙った。
おばあちゃんが、
少し心配そうな顔をする。
「瑠璃ちゃん」
「なに?」
「あの人の言うこと、
簡単に信じちゃだめよ」
「うん」
「絆されるんじゃないぞ」
おじいちゃんも言った。
「絆されるって?」
「情に流されるってことだ」
「ああ」
私は頷いた。
でも。
たぶん。
それはもう、
遅い。
月に一度、
お父さんと会っていた。
ご飯を食べたり。
映画を見たり。
服を買ってもらったり。
たまに、
どうでもいいLINEが来たり。
『今日寒いぞ』
とか。
知ってる。
とっくに絆されてる。
お父さんは、
ずっとお父さんだった。
だから。
おじいちゃんとおばあちゃんが言う、
遺産を狙っている人。
無職で、
毎日プラプラしている人。
それと、
私の知っているお父さんが、
うまくつながらない。
でも。
私は、
お父さんが何をしているのか知らない。
仕事も。
お金のことも。
お母さんと、
なんで離婚したのかも。
ちゃんと聞いたことがない。
お母さんは死んだ。
お父さんは、
私を引き取りたいと言っている。
おじいちゃんとおばあちゃんは、
お父さんを信じるなと言う。
お母さんの遺産。
親権者。
無職。
知らないことばかりだ。
誰が正しいのか。
分かんない。
「行ってくる」
私は立ち上がった。
「瑠璃」
おじいちゃんが呼ぶ。
振り返る。
「無理に決めなくていいからな」
「うん」
おばあちゃんも言った。
「嫌だったら、
すぐ帰ってきなさい」
「ここに帰ってくるんだけど」
「そういう意味じゃないの」
「分かってる」
私は笑った。
玄関へ行く。
靴を履く。
スマホを見る。
お父さんから、
もう一件来ていた。
『先に行ってる』
私は、
『はーい』
と返した。
玄関を開ける。
外は寒かった。
お父さんに、
直接聞いてみよう。
何が本当なのか。
私には、
まだ全然分からない。




