11話
E国では基本的に技術者は男性がなるもの、軍人は女性がなるものとされている。農作業や漁業・運搬はロボットが行い、細々とした仕分けは退役した者や選別から外れた者、高齢者が行なっていた。
5歳の誕生日を迎えた時点で、自宅に兵士が訪問して腕輪からバーコードへの切り替えと、集団訓練施設への案内を手渡されるのだ。子どもが5歳になると新たな搭乗用ロボットが1台支給されるため、そのロボットが送迎を行なっている。
そこで12歳までの共通訓練を受けた後、適性試験とそれまでの成績に従って、振り分けられるのだ。
アンバーも先週、適性試験を受けた。
「アンバー。今日君の家に軍の人間が訪問するはずだ。ご両親に伝えておくように」
「はい、教官」
教官から両親向けの書類が入った封筒を手渡された彼女は内心、心を躍らせていた。
(もしかして、軍人になれるのかな?やったー!)
E国の軍人として必要とされる主な能力は、射撃と足の速さ、そして他言語習得能力だった。殺戮などの戦闘はロボットが行うため、戦闘能力はそれほど重視されていなかった。
だが、軍の幹部は男性がなるものという伝統は、昔から変わってはいないのだが。
帰宅したアンバーは両親に封筒を手渡すと、書類を見て涙を流す2人に抱きしめられた。
「お母さん、どうしたのー?お父さんまで……」
「ううん、なんでもないの。貴女は私達の誇りよ、アンバー。大好きよ」
「わたしもー!」
アンバーの父は、彼女の自分と同じ琥珀色の瞳を見つめながら、涙を流して笑いかけた。
「アンバーは、生まれてきてくれてからずっとずっと、僕達の幸せなんだ。愛している」
「えへへ〜。照れちゃうよー」
母は、軍人が来る前に、アンバーの淡いピンク色の髪を丁寧に編み込んだ。
「軍に入ったら、短くしなくちゃいけないから……。今日は特別よ」
「可愛いー!ありがとう!」
(お兄ちゃんも独立して技術者としてバリバリ働いている。私もお父さんとお母さんに、恩返しが出来るんだ!)
アンバーは、母譲りの髪と父譲りの琥珀色の目を気に入っていた。3人でアンバーをサンドイッチのように挟んで抱きしめていると、呼び鈴とノックの音が聞こえた。
「こんばんは。アンバーさんと、ご両親はいますか?」
黄緑色の髪と目の女性兵士が扉の前に立っていた。
女性兵士は10年分の食料券と貨幣の入った布袋を両親へ手渡すと、サインを求めた。
2年の訓練期間に脱落すれば、五体満足であれば見知らぬ男性の嫁になれるが…。負傷の程度によっては軽作業者になるか、それとも廃棄されるのか……。
このサインをすれば、これが愛娘との今生の別れになってしまうかもしれない――
2人は、震える手でサインをしていた。




